19日、近鉄花園ラグビー場に行ってきた。
例によって、楽苦美愛のメンバー15名以上と一緒に観戦である。
第一試合は近鉄ライナーズ×神戸製鋼コベルコスティーラーズ、第二試合がヤマハ発動機ジュビロ×サントリーサンゴリアスだ。
特に第一試合は関西ダービーとあって、花園は1万人越えの満員。
メインスタンドの3千円の指定席すらほぼ埋まっていた。
我々はバックスタンドの近鉄応援団の近くに陣取った。
近鉄応援団長のオッサンが叫ぶ。
「今日は運命の10.19です!あの川崎球場でのダブルヘッダーの日です!今日はライナーズがあの日のリベンジをします!」
今から20年前の10月19日、昭和最後の10月19日に、川崎球場でプロ野球伝説の試合が行われた。
ロッテオリオンズ(現・千葉ロッテマリーンズ)×近鉄バファローズ(現・オリックスバファローズに合併)のダブルヘッダーである。
ロッテにとっては最下位が決まっていてただの消化試合だったが、近鉄にとってのこの日は、ダブルヘッダーに連勝した場合のみ逆転優勝、2試合のうち1試合でも引き分ければ西武ライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)のパ・リーグ優勝が決まるという、天下分け目の大一番であった。
結果は、第1試合が9回表、引退が決まっていた代打の梨田昌孝(現・北海道日本ハムファイターズ監督)が引き分け寸前の二死から起死回生の決勝タイムリーで首の皮一枚つないだ。
しかし第二試合は延長10回の末、時間切れ引き分け。近鉄の優勝は夢と消えた。
だが、「ニュースステーション」をブッ潰して視聴率46%を記録したこの試合は熱パの象徴と言われ、20年たった今でも「伝説の10.19」としてプロ野球ファンに記憶されている。
現在はセ・パ共にクライマックス・シリーズがあるために、毎年緊迫した日本シリーズ進出争いを楽しめるが、反面この「伝説の10.19」のように、長いペナントレースの末の優勝争いが見られなくなった。
現在でもクライマックス・シリーズとは別にペナントレースの優勝争いは行われるが、その緊迫感と興奮は「10.19」の比ではない。
それはともかく、ラグビーファンである近鉄応援団長にとっても、最もインパクトのある野球の試合だったのだろう。
さらに、応援団長は叫ぶ。
「今日は大安ですので、ライナーズが必ず勝ちます!」
神鋼にとっても大安だっての。
「(神鋼のゴールキックの時)今から私が呪いをかけてゴールキックを外させます!」
アンタは「黒い呪術師」か!
しかし、久しぶりにトップリーグに昇格した名門近鉄、おまけに今季は好調とあって、団長にとって期待もひとしおだろう。
一方の覇権奪還を目指す神鋼は先週サニックスに敗れて、今一つ調子に乗り切れない。
下馬評では近鉄有利と、ここ20年では考えられないような予想だった。
何しろ近鉄が神鋼に勝ったのは今から20年前、10.19が行われた直後の1988年11月6日のことで、このときは9−4というロースコアだった。
当時はまだトップリーグなど影も形もなく、関西社会人リーグでの試合で、このシーズンは近鉄が優勝をしている。
近鉄にとっては、このとき以来の対神鋼勝利ということでも、10月19日にこの試合が行われるというのは何かの因縁か。
ちなみに20年前、関西リーグでは低迷した神鋼は全国社会人大会で見事に立て直し、社会人初優勝を果たして日本選手権をも制し、新日鉄釜石以来の7連覇の始まりのシーズンとなった。
20年ぶりの勝利を目指す近鉄は、試合開始早々に立て続けにトライを奪われ苦しい展開になった。
しかしその後はCTBイエロメの突破を軸にトライを返し、一進一退の攻防に。
だが、テンポに勝る神鋼が終了間際にとどめのドロップ・ゴールで近鉄を振り切り37−27。
近鉄はあらゆる意味で20年ぶりのリベンジはならなかった。
第二試合はディフェンディング・チャンピオンのサントリーにヤマハが挑む。
前半をリードしたサントリーは途中からSHグレーガンを投入し逃げ切りを図るが、ヤマハもSH矢富が登場して対抗。
スピードある攻撃でサントリーディフェンスを引き裂き、一気に逆転。
サントリーの追撃をかわし、31−27とヤマハが大殊勲を挙げた。
楽苦美愛のメンバーの中には静岡や長野から来られた方もおり、今回の関西遠征は実にいい旅だっただろう。
2試合ともGG佐藤を思わせるような落球(ノックオン)が多く、リズムに乗れないシーンが目立ったが、全体としてはいい試合だった。
ファンにとって今日の入場料は安かったのではないか。
トップリーグも波乱含みだが、大学ラグビー、とりわけ関西は大波乱の様相だ。
この日、関西で優勝候補筆頭の立命館が近大に敗れるというまさかの大番狂わせ。
さらに摂南大が昨年3位の大体大を40−3で完勝。
また、先週同志社を破った関西学院が18日、昨年2位の京産大を66−0と圧倒。
前頭筆頭に上がってきた力士が初日と二日目にいきなり横綱と大関を破ったような大殊勲だ。
ひょっとして関学のお家芸である、掟破りのショットガンを使ったのではないかと疑えるような圧勝ぶりである。
そうだとすれば、これぞまさしくラグビー発祥の起源とされる「見事なルール無視」であり、関学はエリス少年以来、約2世紀ぶりにこの大偉業を敢行したのかも知れない(んなわきゃないか)。
何はともあれ、実力差の出やすいラグビーで波乱が起こるのは実に面白い。