
高校野球を観るために、阪神甲子園球場へ行った。
夏の甲子園は久しぶりである。
前に訪れたのは、筆者の記憶が正しければ2014年、今から12年も前だ。
この頃はまだ、内野席やアルプス席は自由席で、外野席は無料だった。
筆者は無料の外野席に座ったのである。
しかし、現在では外野席も有料となり、しかも全席指定だ。
実は去年(2025年)、春のセンバツを観に行ったときも全席指定で、しかもこの日は超満員だったため、当日券は外野席の最上段の席しか売っていなかったのである。
甲子園の外野席最上段まで階段を登っていくのは、登山のような過酷さだった。
aigawa2007.hatenablog.com
その時の経験を活かして、今回はインターネットで前売り券を購入する。
狙い目は大銀傘で覆われた内野席だ。
ネット裏の中央席は下段と中段が既に売り切れ、上段だけが売れ残っていた。
しかし上段は、前回のセンバツのように階段を登るのがしんどいため、こちらはパス。
しかも中央席はかなり値段が高いのだ。
ところで、現在の夏の甲子園では、猛暑対策のため2部制が採られている。
ある日を例にとると、午前の部が8時からの1試合のみ、午後の部は13時30分から残りの3試合をナイト・ゲームも含めて行われるわけだ。
以前はチケットを購入すれば4試合をブッ通しで観ることができたが、現在では午前の部が終わると客の入れ替えが行われ、午後の部は改めてチケットが発売される。
当然、午前の部は1試合しか観ることができないのだから、チケット代も安い。
筆者が購入しようとしたのは午後の部で、中央席は4800円だったが、内野の一塁側および三塁側は3900円。
なぜなら甲子園は、一塁側が西になるため、午後になると日陰になりやすい。
それに対し三塁側は、西日をモロに受けるため、大銀傘があっても日陰にはならないのだ。
したがって、筆者は一塁側の中段席を購入した。
上段席は前述の通り階段を登るのが大変だし、下段席はグラウンドから近いもののプレーを見づらい。
中段席は、グラウンド全体を見渡せるので最適なのである。
阪神電鉄の大阪梅田駅から特急料金不要の直通特急に乗って、満員電車に揺られながら一路甲子園へ。
子供の頃から見慣れた光景だ。
淀川や武庫川を渡り、阪神電車は甲子園駅に辿り着く。
駅から甲子園へ歩いて行くと、外壁の蔦が見えてきた。
2007年、球場のリニューアルの際には蔦は伐採されたが、20年近く経った今、ようやく蔦が生え揃ってきたのである。
やはり甲子園は、蔦が無ければ始まらない。
筆者が初めて野球を観たのはプロ野球の日本生命球場だったが、コンクリート剥き出しの無機質な球場だった。
その少し後、夏の甲子園へ行ったのだが、日生球場とのあまりの違いに驚き、甲子園の外壁を覆う蔦に圧倒されたのである。
▼蔦が復活した甲子園の外壁

ネットで獲得したQRコードを発券場でチケットに換え、いざ甲子園のスタンドへ。
席を確認すると、通路と通路に挟まれた真ん中である。
筆者は真ん中の席が大嫌いで、なぜなら席を立つ時にいちいち隣りの人に気を遣わなければならないからだ。
端っこの席なら、そんな気遣いは無用だし、真ん中の席の人が筆者の前を通ろうとしても、チョイと通路側に脚を向ければ余裕で通ることができる。
だが、図体が無駄にデカい筆者が真ん中の席に座ると、他の人にとって迷惑以外の何物でもないのだ。
プロ野球などでは前売り券を購入する際、座席を指定することができるのだが、高校野球ではエリアを指定することはできても、ピンポイントの座席を選ぶことはできない。
全席指定はやむを得ないにしても、高校野球でも座席指定を出来るようにしてもらえないだろうか。
ちなみに言うと、幸いなことに筆者の両隣りには誰も座らなかったので、不自由することはなかった。
スタンドに入ると、甲子園のグラウンドが目に飛び込んでくる、あのワクワクする光景。
しかも、この日は曇っており、さらに大銀傘の下となる一塁側なので、暑さに悩まされることは無さそうだ。
だが、この判断が後に地獄を生む。
▼来場当初、曇っていた阪神甲子園球場

取り敢えず、腹ごしらえのために弁当を買いに行く。
名物の甲子園カレーにしようとしたが、ちょっとガッツリした物が食いたいと思い、甲子園幕の内弁当にした。
これがなかなか、多彩なオカズがあったので、グルメを楽しめる内容だったのである。
ただ、オカズの中には卵焼きがあり、多くの弁当の卵焼きは関東風のクソ不味くて甘ったるい厚焼き玉子なので警戒していたが(大阪でも小学校の給食は甘い厚焼き玉子だったため、吐いてしまったことがある。あれを食わされるのは拷問に等しかった)、甲子園幕の内弁当の卵焼きは関西風の甘くない出汁巻き卵だったので美味しくいただいた。
▼甲子園幕の内弁当(スマホ撮影)

さらには、幕の内弁当と共に「かちわり」も購入。
「かちわり」とは、ビニール袋の中に氷が入ってあり、その氷が溶けたらストローで氷水を吸って飲むという、ただそれだけの商品である。
このメニューは、春のセンバツはもちろんプロ野球でも売られることはなく、夏の高校野球のみに販売される商品だ。
もちろん、筆者の子供の頃から「かちわり」はあり、当時は金魚すくいのようなビニール袋に氷が入っていたが、現在ではパックされたビニール袋に入ってる。
▼夏の甲子園のみで売られている、現在の「かちわり」(スマホ撮影)

「かちわり」の、最大の欠点は「氷が溶けるまで飲めない」ということだ。
したがって、幕の内弁当は購入したものの、「かちわり」はまだ飲めない。
やむなく(本当にやむなく)、売り子の女の子からビールを購入した。
上記の幕の内弁当の写真で、ビールが写っているのはそのためである。
売り子の女の子は、筆者にビールを手渡しながら、
「今日は暑いですねえ。曇っていたのに、急に晴れちゃって。さっきまでアルプス席にいたんですけど、あまりにも暑いので屋根のあるこっちに来ちゃいました」
と言っていた。
そう、急に晴れてきたのである。
しかも、一塁側の内野席なら大銀傘に覆われているので、影になると思っていたが、筆者が座った席は屋根のないアルプス・スタンドに近かった。
つまり、斜めから日光が差し込んできたので、大銀傘に関係なく筆者に容赦なく灼熱の太陽光を浴びせてきたのである。
また、筆者は日焼け止めを塗るのを忘れていたので、右腕が犠牲になってしまった。
▼曇天が一転して、晴天となった阪神甲子園球場

幕の内弁当をビールで流し込む筆者。
しかし、幕の内弁当を食べ終わる頃には、ビールは温くなってしまい、不味くなった。
いかにビール党の筆者でも、温くなってはビールも美味しくない。
だが、喉が渇くし、どうしようと思っていたが、その時に思い出した。
そうだ、さっき買った「かちわり」があるではないか。
席の下に置いていた「かちわり」を確認すると、程よく氷が溶けており、充分に飲める氷水となっている。
この「かちわり」をストローで飲んでみた。
これが、メチャクチャ美味い!
喉の渇きに「かちわり」がジャスト・フィットしたのである。
「かちわり」なんて、言ってみればただの氷水。
しかし、この味もそっけもない「かちわり」こそが、夏の甲子園にピッタリのグルメなのだ。
子供の頃、夏の高校野球大阪大会の日生球場でも「かちわり」を売っていたのを思い出す。
しかし、日生球場での「かちわり」は、甲子園とは異なり、紙コップに氷を入れているという代物だった。
しかも、日生球場の「かちわり」は、かき氷のようにメロン味やストロベリー味の蜜を入れていたのである。
こんな「かちわり」は邪道だ、と小学生の頃の筆者は思っていた。
すると、後ろに座っていたオッサンが売り子の兄さんに「かちわり」を注文する。
「ありがとうございます。ストロベリーかメロン、どっちにしますか?」
「いやいや、蜜はいらん。氷だけでいい」
「はあ?」
売り子の兄ちゃんは訝しがっていたが、子供の頃の筆者はこのオッサンに心の中で拍手を贈っていた。
そう、蜜なんて入れないのが「かちわり」の本道なのである。
蜜を入れてしまったら、味もそっけもないという「かちわり」の本質が損なわれてしまうのだ。
その後も「かちわり」を2回もおかわりしてしまう筆者。
それも「かちわり」を飲み干してしまったら、次の「かちわり」は氷が溶けるまで飲むことができないので、前の「かちわり」が無くなってしまう前に「かちわり」を注文するという用意周到さ。
しかも、「かちわり」は氷が溶けるまで飲むことができないという欠点はあるものの、それ故に長く楽しむことができるのである。
そして、氷が溶けるまでは氷嚢代わりにするなどの活かし方ができるのだ。
さて、今回も150-450㎜の超望遠ズームレンズを持っていったのだが、高校野球では選手の写真をネット上に挙げてはいけないらしいので、ここでは公開できない。
その代わり、グラウンド整備をする阪神園芸の皆さんを近影したので、そちらをご覧いただこう。

いかに「かちわり」で暑さをしのいでいても、この猛暑は避けられない。
しかし、陽が傾いてくる15時を過ぎると、ようやく太陽は大銀傘の向こうに隠れてくれた。
こうなると、涼しくなって夏の甲子園は快適そのもの。
夏の甲子園は、太陽の動きが判るから面白い。
もっとも、正確には地球が自転しているのだが。
ところが、日が暮れ始めた途端、雲も多くなって曇ってきたのだから腹が立つ。
それだったら、日が高いうちに曇ってくれ!
それでは、甲子園での空模様の移り変わりを10-17㎜魚眼レンズで見ていただきたい。








▼まだ日は高かったが、内野に照明が入った

▼外野にも照明が入り、雲が無くなって青空は残るもののナイト・ゲームとなる




暮れなずむ甲子園を後にして、超満員の阪神電車に乗り込んだ。
甲子園よ、また逢おう。
