地球人類が生み出した最強の戦艦はなにか?
それはおそらく、ヤマトかホワイトベースだろう。
ヤマトは波動エンジンを積み、波動砲という強力な武器でガミラス星の侵略から地球を守った。
一方のホワイトベースはヤマトと同じく宇宙戦艦で、ガンダムなどのモビルスーツを搭載している。
それではヤマトとホワイトベース、どちらが強いのか?
これがなかなか難しい質問である。
まず、両者の時代背景が違う。
ヤマトが登場したのは西暦2199年ということがハッキリしており、今から191年後というのは明白だ。
しかし、ホワイトベースの登場時期がよくわからない。
ホワイトベースが出撃したのは宇宙世紀0079年であり、西暦で換算すると何年かわからないのだ。
しかし、地球人類の宇宙戦争史に関わる超難問に対し、明快に答えた人物がいる。
「機動戦士ガンダム」の総監督であり、「宇宙戦艦ヤマト」でも絵コンテを務めていた富野喜幸(現・富野由悠季)だ。
「ヤマトとホワイトベースはどちらが強いんですか」と問われたとき、富野は即答した。
「訊くも愚問で、波動砲さえかわせば、ホワイトベースが強いに決まってます!」
訊くも愚問、と言われたためか、インタビュアーはその根拠を聞きだすことはできなかった。
富野はなぜ、ホワイトベースの方が強いと断言できたのだろう。
普通に考えると、ヤマトの性能はホワイトベースを圧倒している。
ヤマトがホワイトベースより優れている点を列挙してみよう。
○富野が認めているように、ヤマトには波動砲という強力な武器があり、これを食らえばホワイトベースもガンダムも間違いなく宇宙の塵と消えるだろう。
○ヤマトの波動エンジンはワープ航法を可能としており、光速を越えるスピードで航行できる。事実、地球からイスカンダル星までの14万8千光年、往復で29万6千光年の気の遠くなるような旅を僅か1年で(しかもガミラスとの戦闘を繰り返しながら)成し遂げた。つまりヤマトのスピードは、光速の29万6千倍以上である。
しかしホワイトベースはワープ航法は不可能で、一番遠くまで行ったのは月の裏側までである。アポロロケットとさして変わらない。ヤマトに比べればスケールが小さすぎる。
○ヤマトには人工重力を発生させることができ、隊員たちは地球上と変わらぬ生活を送ることができる。だからこそイスカンダルへの1年の旅にも乗組員たちは耐えることができたのだろう。
しかしホワイトベースには人工重力発生装置などなく、宇宙空間では当然ながら無重力だ。こんな状態でヤマトのような長旅は不可能と思われる。
○ヤマト内には農場があり、それで食料を生産することができる。ただしこの狭い農場(というよりも、家庭菜園のような畑)で全乗組員の食料を調達できるとはとても思えないが。ヤマトは航海の途中に惑星に立ち寄って食料を調達していたみたいだが、それでも地球人に合う食材かどうかはわからないし、ほとんどバクチみたいなものだったのだろう。ちなみに白色彗星と闘っていた頃には「レストラン・ヤマト」という、ステーキなどを食べることができる豪華なレストランが艦内にあった。
一方のホワイトベースは、厨房を破壊されて塩不足に困ったことがあった。その時、ホワイトベースは地球上にいたのだから、宇宙空間のヤマトよりはよほど恵まれていたと思えるのだが……。
○ヤマトは、全く未知の宇宙人であり、科学力も地球とはケタ外れのガミラスや白色彗星に打ち勝ってきた。
が、ホワイトベースが闘ったのは所詮レベルが大して変わらない地球人。それでもジオン公国は地球連邦よりも10年は進んでいると言われていたが……。
こう列挙してみると、性能面ではヤマトがホワイトベースを圧倒しているのは間違いない。
それではなぜ、富野は「ヤマトよりホワイトベースの方が強い」と断言するのか?
その根拠として考えられるのがミノフスキー粒子の存在である。
ミノフスキー粒子とは、一種の電波障害を起こして、レーダーを不能にしてしまうのだ。
このミノフスキー粒子の登場によって接近戦による兵器、モビルスーツが誕生したのである。
ヤマトは当然、レーダーに頼った戦闘を強いられている。
そのレーダーが通用しなければ、戦況は不利になる。
富野はその点を指摘したのではないか?
そう考えれば、「ヤマトはホワイトベースより弱い(まるで「巨人はロッテより弱い」みたいだね)」という根拠もうなずける。