今日(14日)の夕方から夜にかけて、北半球では金星と木星が見掛け上最も近づき、西の空に並んで見えるという現象が起きた。
右の明るい方が金星、左側が木星である。
太陽と月を除いて、全天で1番明るい星が金星、2番目に明るい星が木星だ(恒星で1番明るいのはおおいぬ座のシリウス)。
2番目に明るい木星も、金星と並ぶと暗く感じてしまう。
金星は地球の隣りにあり、太陽に近い方から数えると第2番惑星で、地球より太陽に近いので内惑星と呼ばれる。
一方の木星は火星を挟んでもう一つ外側の外惑星であり、第5番惑星だ。
両方とも明るい星なので、地球でも古くから馴染みの深い惑星である。
内惑星である金星は夕方の西の空か、明け方の東の空にしか見えない。
夕方に見える金星を「宵の明星」と言い、明け方に見える金星は「明けの明星」と呼ばれる。
惑星なのだから当然のことながら月のように満ち欠けがあるわけで、家庭用の天体望遠鏡でも金星の満ち欠けが充分に見える。
ただし月とは逆に、金星の場合は三日月型の時が最も明るく輝く。
これは三日月型の時に金星は最も地球に近付いているからだ。
木星が地球人類に大きな影響を与えたのは、ガリレオ・ガリレイが天体望遠鏡を使って木星の衛星を発見したことだろう。
木星を回る星があるとわかったため、天体は全て地球を中心に回っているという、キリスト教の天動説が覆されたのだ。
しかし地動説という聖書に反する説を唱えたため、ガリレイは宗教裁判に掛けられて有罪判決を受けたものの、「それでも地球は動く」と呟いたのは有名な話。
実は地動説以外にも、木星は地球に多大な影響を与えている。
木星の存在がなければ、地球人類はとっくに滅びているか、そもそも地球に生物が生息していなかったのかも知れないのだ。
木星は太陽系の中で最も大きい惑星である。
その質量は太陽系の惑星全体の3分の2にも及ぶという、とてつもない超巨星だ。
宇宙的規模で見れば、太陽系には木星しか惑星がないと言えるかも知れない。
もし木星にもう少し質量があれば、核爆発を起こして恒星になっていたとも言われる。
そうだとすれば、木星は宇宙最大級の惑星ということになる。
太陽系には無数の彗星が飛び回っている。
その彗星たちは木星の巨大な引力に引き寄せられて吸い込まれ、あるいはコースを変え、はたまた太陽系外に弾き飛ばされているのだ。
もし木星の存在がなければ、地球に彗星が衝突する確率は約1000倍にも跳ね上がるという。
もし彗星が地球に衝突すれば、ひとたまりもないだろう。
そうなったら地球人類は滅亡に近い大打撃を受けるか、場合によっては地球上の生物が死に絶えるかも知れない。
つまり、木星は彗星から地球を守ってくれている巨大な盾なのだ。
そんな巨大な木星も、その大きさの割りには質量は大したことがない。
比重で言えば地球の方が遥かに上だ。
地球の比重は5.52で太陽系の惑星の中ではナンバー1、木星の比重は1.33で水とさほど変わらない(水の比重は1.00)。
これは地球が岩石で出来ているのに対し、木星の大部分は濃密なガスで形成されているためだ。
したがって木星に降り立つことは不可能で、底なし沼のようにどんどん沈んでいく。
そのため地球が岩石惑星と呼ばれるのに対し、木星はガス惑星と分類される。
金星は地球と同じ岩石惑星で、大きさも地球の方がちょっと大きいだけで非常に似ていることから双子星とも言われる。
しかし金星は、地球とは似ても似つかぬ惑星だ。
金星は太陽系の惑星の中で、かなり特異な存在である。
まず金星は、1年よりも1日の方が長い。
どういうことかと言うと、太陽の周りを1回転する公転周期より、自分で1回転する自転周期の方が長い、ということである。
つまり、太陽の周りを1回転した時、まだ自分自身では1回転していないわけだ。
こんな惑星は太陽系の中で金星以外にはない。
地球の場合はご存知の通り、太陽の周りを1回転する間に、自分自身では365回も回転している。
金星では太陽の周りを1回転する間に、自分自身では0.92回しか回転していない。
金星の自転にはまだ特殊なことがある。
それを述べる前に、太陽系の惑星がどのように公転しているか。
惑星たちは太陽の周りを、同じ方向で、しかもほぼ水平面で回っている。
逆回転したり、垂直方向で回転している惑星はないわけだ。
その点では金星も他の惑星と同じだが、自転に関しては違う。
なんと金星は、公転の方向とは逆回転で自転しているのだ。
つまり金星では、天才バカボンの歌のように、西から昇ったお日様が東へ沈む、のである。
こんな異常な自転をしている惑星は、金星以外にはない(天王星もほぼ垂直に傾いて自転しているという異常な惑星であるが)。
金星の自転だけがなぜ逆回転しているのかは謎だが、その謎が解けた時に太陽系形成のルーツが明らかになるかも知れない。
地球からごく近い金星でもまだまだわからないことは多い。
それだけ宇宙にはロマンと神秘が詰まっているのである。