大阪府南東部に位置する富田林市。
ここには大阪府で唯一の重要伝統的建造物群保存地区である寺内町がある。
寺内町に一歩踏み入れると、まるで江戸時代にタイムスリップしたような感覚に陥ってしまう。
この寺内町に昨年(2023年)11月、「万里春(バンリノハル)」というビアホールがオープンした。
ビアホールなんて寺内町には似つかわしくないが、元々は「万里春酒造」という造り酒屋だったらしい。
明治時代初期からずっと続いていた酒蔵だったが、1983年に残念ながら廃業。
しかし、六代目となる現在の店主が酒蔵をリノベーションし、ビール醸造所兼ビアホールとして蘇らせたという。
したがって、ここで提供されるのはキリンやアサヒなど大手企業のビールではなく、出来立てホヤホヤのクラフトビールである。
関西ローカルのテレビ番組でも何度か紹介されていたので、一度は行ってみたいと思っていたが、ちょうど姉が盆休みで帰省していたため、8月14日に一緒に出掛けた。
アルコールを呑むということで当然、車で行くことはできない。
そこで、金剛バス亡き後の4市町村コミバスで行くことにした(ただし、車両はかつての金剛バス)。
万里春の最寄り駅は近鉄長野線の富田林駅もしくは富田林西口駅だが、バスの場合は駅まで行く必要はない。
最寄りのバス停は堺筋で、そこから徒歩5分程度だ。
堺筋バス停で降り、暑い中を歩いて万里春に向かう。
バスが走る大通りから狭い路地に入ると、そこは既に寺内町ムード満々だったが、角を曲がると万里春の酒蔵だったと思われる家屋を発見した。
だが、地図ではそこがビアホールではないことが判っていたので、さらに狭い角を曲がる。
すぐにビアホールらしき酒蔵跡があり、着いたのは午前11時20分頃で、開店は11時半だったが、そこには既に人が並んでいた。
我々は予約していたので、並んでいても特に気にする必要はなかったが、暑かったので待ち時間の約10分がやけに長く感じる。
やがて開店時間となり、我々はようやく冷たいビールが呑めると喜び勇んで涼しい店内に入った。
店内は酒蔵をリノベーションしただけあってレトロな雰囲気。
店員に、写真撮影させて欲しいと頼んだところ、他のお客様に配慮してくださるなら、と許可をいただいた。
したがってフラッシュは使わず、ISO感度を上げての撮影となる。
▼レトロな雰囲気のビアホール
▼店内には囲炉裏の席が
▼扉の向こう側にはビールの醸造所がある。左側にある古い保管庫は現在、おしぼり入れとして使用されている模様
▼蔵人の寮にあったという、1967年製の19型カラーテレビ(サンヨー)。大卒初任給が2万3千円の時代に、このカラーテレビは約8倍の18万3千円。今年(2024年)の大卒初任給は約22万6千円なので、現在に換算するとカラーテレビが1台なんと約180万円
メニューは10種類のクラフトビール、それぞれMサイズとLサイズが用意されていた。
値段は種類によって多少違うが、だいたいMサイズが税抜600円、Lサイズが税抜900円である。
筆者は最初の1杯こそLサイズを注文したが、2杯目からは出来るだけ色々なビールを試してみようとMサイズに切り替えた。
結論から言うと、2人で10種類のビールを制覇してしまったのだ。
味は全体的に言えば、大手ビールに比べてフルーティー、苦さを抑えて甘みがある感じとなっている。
▼写真はいずれもMサイズ
なお、ビール以外にもハイボールやレモンサワー、もちろんソフトドリンクもあった。
ただ、元造り酒屋だったにもかかわらず、日本酒はない。
当然、料理やアテもあったが、もう少し多くのメニューがあって欲しいところ。
最初はホットドッグやチョリソーなどガッツリ系を注文していたが、最後の方は枝豆ばかり食べていた。
▼元は造り酒屋だったことを示す椅子
帰りのバスの関係で、12時半もしくは14時半には店を出なければならない。
つまり、1時間という短期決戦か、3時間の長丁場という二者択一だったのだ。
だが、1時間なんてあっという間に過ぎたため、3時間コースとなる。
10種類のクラフトビールを制覇し、他にハイボールやレモンサワー、ライムサワーと料理も堪能して、料金は2人で1万円を超えていた。
やはり我々のような呑んべ姉弟が3時間も呑むとなると単品注文ではかなりキツく、呑み放題メニューか、ビアガーデンのようなピッチャーがあればいいのだが。
まあ、それでも久しぶりに外でのビールを存分に堪能した。
そもそも、富田林のような田舎にビアホールができるなんて、以前には全く考えられなかったのである。