近くには、紅葉の名所である竜田川が流れていることで有名だ。
王寺駅はＪＲの関西本線（大和路線）および和歌山線の他、近鉄生駒線が乗り入れており、隣りには近鉄田原本線の新王寺駅があるという、町の中心部である。
ＪＲと近鉄の２社４路線を合わせた王寺駅および新王寺駅の１日の平均乗降客数は約４１，０００人と、王寺町の人口の２倍近くにも及ぶ。
そんじょそこらの「市」の中心駅よりも遥かに豪華であり、とても「町」にある駅とは思えない。
特にＪＲの王寺駅は、和歌山線の終点であるばかりか、関西本線では大阪側と奈良駅のちょうど中間点の役割を果たすターミナルでもある。
大阪方面から来る普通電車の大半が王寺駅で折り返しとなり、３面５線という奈良県内の駅でも有数の規模だ。
駅前は北口と南口に分かれており、それぞれにロータリーがあってバスやタクシーの発着も盛ん、商業施設も充実している。
重ねて言うが、この駅が本当に「町」の駅なのかと疑ってしまう。
王寺駅の西側には、ある名物が存在する。
それが、ＪＲの線路下をくぐるアンダーパスだ。
アンダーパスと言っても自動車の通行は不可で、歩行者および自転車専用である。
なにしろ、その大きさは幅１．５ｍ、長さ４１ｍ、高さ１．７ｍというものだ。
幅と高さに比べて、距離は異様に長い。
それでは、王寺駅の南側からアンダーパスを通ってみよう。
アンダーパスの近くの線路には、ＪＲの回送電車が停まっている。
ＪＲの回送電車が停まっている王寺駅の南西側
回送電車の近くには……、あった、アンダーパスが！
アンダーパスの両側に掲げられている黄色い看板には、
「単車、自転車はおりて通行して下さい」
と書かれている。
しかし、地元民は慣れているのか、自転車に乗ったまま通行していた。
おそらくスクーターでも、降りずに通行している人が多いのだろう。
アンダーパス南側入口
筆者は身長が１ｍ８７cmなので、高さ１．７ｍだと確実に頭を天井にぶつける。
しかも南側の入口は、明らかに１．７ｍよりも低くなっていた。
こんな低さで、よく自転車に乗ったまま通行できるものだ。
歩いて通るのでさえ、恐怖を覚える。
高さ１,７ｍだが、それよりは確実に低い南側の入口
アンダーパスに入ってみる。
天井が低いうえに、とにかく薄暗い。
こんな状態が４１ｍも続くのだから、暗所恐怖症・閉所恐怖症の面堂終太郎なら、
「暗いよ～狭いよ～怖いよ～」
と泣き叫ぶだろう（※）。
薄暗いアンダーパスの中
幸い、筆者がアンダーパスの中を歩いているときには電車は通らなかったが、もし通っていたら頭の真上を電車が通るので、相当やかましかったに違いない。
頭の真上は線路
低い天井がずっと続く
４１ｍ歩いて、ようやく反対側の北口に辿り着いた。
ＪＲの王寺駅は線路が無数にあって敷地面積が広いうえに、相当離れた場所にしか北側と南側を結ぶ手段はないのだから、地元民にとってはこのアンダーパスは貴重な通路なのだ。
困るのは大雨が降ったときで、冠水するようである。
北側の入口
北側の入口周辺
※面堂終太郎……漫画「うる星やつら（作：高橋留美子）」に登場する、主人公・諸星あたるのライバル。家は金持ちで秀才・イケメンのため女性にモテるが、実際のアホさ加減は諸星あたると、そう変わらない。暗い場所と狭い場所が弱点。自宅には私設軍隊を備えている。
