イングランドで行われているラグビー・ワールドカップ(RWC)で、日本代表が世界3強の一つである南アフリカを34-32で大金星を挙げ、世界中を驚かせました。
日本でも大々的に取り上げられ、ニュースやワイドショーでの話題を席巻したのはご存知の通り。
それまでは、ラグビーのワールドカップが行われているなんて、知らなかった人も多いのではないでしょうか。
そして「ルールはよくわからないけど、ラグビーってなんだか面白い!」と思った人も多いと思います。
日本代表は第2戦でスコットランドに残念ながら10-45で完敗しましたが、まだ決勝トーナメントに進出する可能性は残っています。
では、今までラグビーなんか見たことがないという人のために、ラグビー・ワールドカップとはどんな大会なのか、簡単に説明したいと思います。
ラグビー・ワールドカップは、規模や観客動員、世界中のテレビ視聴者数から考えて、その規模はサッカーのワールドカップや夏季オリンピックに次ぐ、世界第3のスポーツ・イベントとさえ言われています。
先日の日本×南アフリカでも、開催国のイングランドとは関係ない試合なのに、超満員の観客が詰めかけていたのを見て、驚かれた人もいるかと思います。
ラグビー・ワールドカップとは、それだけ注目された、権威のある大会と言えます。
2019年、次回のラグビー・ワールドカップが日本で開催されるのはご存知でしょう。
この大会が日本で行われるのは、実に光栄なことなのです。
そして、いわゆるラグビー強国以外での開催は、次回の日本大会が初めてです。
2002年に行われた日韓共催のFIFA(サッカー)ワールドカップは、日本戦以外でも超満員の観衆を集めました。
2019年のラグビー・ワールドカップ日本大会も、日本戦に関係なく大いに盛り上がって欲しいものです。
ところで、ラグビー・ワールドカップが始まったのはいつ頃なのでしょうか。
それは、1987年(昭和62年)のことです。
サッカーのワールドカップが初開催されたのは1930年(昭和5年)ですから、なんとラグビーの方が57年も歴史が浅いということになります。
なぜこんなに歴史的な差があるのでしょうか?
それには深い理由があります。
元々はラグビーもサッカーも、イングランドで行われていた同じ競技(フットボール)でした。
それが19世紀中頃(日本で言えば江戸時代末期)、伝統的なフットボールを守ろうとするラグビー派と、ルールを統一して各地にフットボールを広めようとするサッカー派に枝分かれしていきました。
ラグビー派は今までのフットボールと同じように手の使用を認め、サッカー派はルールを簡素化するために手の使用を禁じていく方向になりました。
ちなみに、サッカー(soccer)とはアソシエーション・フットボール(Association Football)の略で、日本とアメリカ以外ではあまり使われません。
世界中のほとんどの国では、単にフットボールと呼びます。
ラグビー(Rugby)とは、伝統的フットボールを守ろうとしたのはラグビー校が中心だったので、その名が付けられています。
ルールを統一したサッカーは各地に広まり、選手権大会を開催しました。
つまり、どのチームが一番強いかを決める大会です。
さらに、プロ化されたのも早く、プロとアマの交流も認められていました。
要するに、世界一を決めるワールドカップが誕生する土壌が既にあったのです。
一方のラグビーは、選手権の方向には進みませんでした。
チーム同士の対抗戦を重視し、どのチームが一番強いか、という発想は度外視されたのです。
ラグビー発祥の経緯を考えると、ルールの統一よりも伝統的フットボールを守る方向に動いたのですから、無理に最強チームを決める必要がなかったことも頷けます。
もっとも、各チームでルールがまちまちだと支障をきたすので、結局はルールを統一せざるを得ないようになりますが……。
そして1871年(明治4年)、日本ではようやく文明開化の波が押し寄せてきた頃に、イングランド×スコットランドというラグビー史上初のテストマッチが行われました。
サッカーでテストマッチと言えば、単なる調整試合のように扱われますが、ラグビーでは(クリケットでも)意味が全く違います。
ラグビーにおけるテストマッチとは、国代表チーム同士による、まさしく真剣勝負なのです。
テストマッチに出場した選手にはキャップ(帽子)が与えられ、これがラガーマンにとって最高の栄誉とされます。
このキャップ制度は現在でも続いており、ラグビー中継を見ていても「○○選手は15キャップを得ています」という実況を聞きますが、これは「テストマッチに15試合出場した」という意味なのです。
ラグビーはやがて英連邦を中心に、世界中に広がりました。
そして、ラグビー強国8ヵ国によるインターナショナル・ラグビー・フットボール・ボード(IRFB)が結成されたのです。
その8ヵ国を記してみます。
フランス
オーストラリア
こうして見れば、フランス以外は全て英連邦であることがわかるでしょう。
そして、サッカー同様ラグビーでも「イギリス」という国は存在せず(オリンピックを除く)、イングランド、スコットランド、ウェールズに分かれています。
サッカーと違うのはアイルランドで、サッカーでのアイルランドとはアイルランド共和国を指し、イギリスの一部である北アイルランドは別チームとなりますが、ラグビーにおけるアイルランドはアイルランド共和国と北アイルランドの合同チームです。
つまり、ラグビーでのアイルランドとはアイルランド島のことで、アイルランド共和国とイギリスの一部(北アイルランド)の2ヵ国から成っているわけですね。
よく、ラグビーの日本代表は外国人選手が多すぎる、という意見を聞きますが、こういう歴史が関係しているのかも知れません。
つまり、ラグビーは国籍主義ではなく、協会主義なのです。
一定のの条件を満たせば、その国の代表選手になれるし、その選択権は選手にあります。
日本代表だけが外国出身の選手が多いわけではなく、各国の代表にも外国籍の選手が多く存在します。
日本代表が第2戦で敗れたスコットランドだって、日本代表を超える12人がスコットランド外の選手です。
たとえば、日本代表キャプテンのリーチ・マイケル選手(東芝ブレイブルーパス)は、ニュージーランド出身ながら、日本の札幌山の手高校に留学し、日本国籍を取得しました(日本国籍を取得する前の名前はマイケル・リーチ)。
リーチ選手は世界最高峰のニュージーランド代表(オールブラックス)になる夢を抱いていましたが、敢えて日本代表への道を選んだのです。
しかしリーチ選手は日本代表になったため、今後はルール上、夢にまで見たオールブラックスの一員になることはできません。
それほどのリスクを冒してまで、リーチ選手は日本代表となりました。
話を元に戻すと、ラグビーでのテストマッチは、主にこの8ヵ国によって行われ、特に世界最強を決めるわけではなく「この国とあの国のテストマッチではこの国が勝った。だから、今年の世界最強はこの国だろう」という程度の認識だったのです。
ちなみに日本はIRFBの準加盟国という扱いで、加盟国と試合を行ってもテストマッチと認められることはほとんどありませんでした。
たとえば、1989年(平成元年)に日本代表はスコットランドを28-24で破り、IRFB加盟国から初勝利を挙げました。
しかし、テストマッチ扱いしたのは日本協会だけで、スコットランド協会は「ベストメンバーではなかった」という理由でテストマッチとは認めなかったのです。
だから、この試合に出場した日本代表の選手には日本協会からキャップが贈られましたが、スコットランドの選手たちはスコットランド協会からキャップを得ることはできなかったのです。
つまり、当時はテストマッチと認定するかどうかは、各国の協会に任されていました。
でも現在では、IRFBは発展的解消し、ワールド・ラグビー(WR)という世界統括団体が認めた試合に限りテストマッチと呼ばれています。
ちなみに、ワールドカップの試合もテストマッチの一種であり、試合に出場した選手にはキャップが与えられます。
ラグビーではテストマッチ至上主義でしたが、世界的な広まりを見せるにつけ、世界一を決める大会、即ちワールドカップを開催しようではないかという機運が高まりました。
しかし、一部のIRFB加盟国は、
「ラグビーは一つの大会で最強を決めるようなスポーツではない。それに、ワールドカップが開催されるとアマチュアリズムが崩れる」
という理由で反対しました。
そう、この時点でラグビーにプロフェッショナルはなかったのです。
ラグビーには、今ワールドカップが行われている15人制(ラグビー・ユニオン)以外にも、早くからプロ化した13人制のラグビー・リーグが存在しますが、ラグビー・ユニオンはアマチュアであるべき、という思想が根強くありました。
それでも、IRFB加盟国による多数決でワールドカップ開催が決まったのです。
そして前述のとおり1987年、ニュージーランドとオーストラリアの共催で第1回ラグビー・ワールドカップが開催されました。
ラグビー・ワールドカップは回を重ねるごとに隆盛を極め、アマ継続派が危惧した通り1995年の第3回大会を最後に、遂にプロ化が容認されたのです。
ラグビー(ユニオン)がプロ化された後、競技レベルは格段にアップしました。
しかしその反面、ワールドカップ至上主義になってしまい、かつては最高の戦いとされたテストマッチが、単なる親善試合のようになってしまったような感も否めません。
各国がワールドカップでの戦いを有利に進めるために、メンバー落としを行ったり、たとえ負けても手の内を見せないような戦いぶりになってしまったのです。
それでも、テストマッチに出場すればキャップを得られるという名誉に変わりありませんが。
それに、ヨーロッパの伝統あるシックス・ネーションズ(イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランス、イタリア)や、南半球のザ・ラグビー・チャンピオンシップ(ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン)では、各国がプライドを賭けた真剣勝負のテストマッチを繰り広げています。
そして、ワールドカップがもたらした効果と言えば、旧IRFB加盟8ヵ国を脅かす国が多く現れたことでしょう。
それでも、南半球の優位は動かず、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカが各2回の優勝を果たしており、ラグビーの世界は「南高北低」ですが。
北半球で唯一の優勝経験があるのは、ラグビーの母国イングランドで、2003年の第5回大会で初優勝しました。
今大会のイングランドは2度目の母国開催なので、ぜひとも優勝したいところです。
ここで、旧IRFB加盟8ヵ国を脅かしそうな国を、地域別で記してみましょう。
南アメリカ……アルゼンチン
アジア……日本
【ワールドカップの楽しみ方】
日本代表の試合は感情移入できるので、掛け値なしに面白いでしょう。
みなさんも眠い目をこすって日本代表の試合をご覧になると思いますが、せっかくの4年に1度のワールドカップなのですから、それだけではもったいない。
世界最高レベルの試合を観戦するとともに、その素晴らしい雰囲気を堪能してもらいたいものです。
もう既に終わりましたが、オープニング・セレモニーを見るだけでも充分に価値はあります。
ラグビー文化を伝える映像に加え、各国をリスペクトする演出、そして大会歌「World In Union」の素晴らしさ。
これを見るだけで、もう鳥肌が立ってしまいます。
日本で行われる世界スポーツ大会には、アイドル・タレントの宣伝に利用されるだけのような競技もありますが、2019年の日本でのラグビー・ワールドカップではぜひとも、このようなスポーツ文化を伝える、そして日本文化を存分にアピールした、世界に誇れるオープニング・セレモニーにしてもらいたいものです。
試合では、まずは世界3強と呼ばれるニュージーランド、オーストラリア、南アフリカに注目しましょう。
これら南半球の国々には愛称があります。
これは覚えておいて損はありません。
オーストラリア=ワラビーズ
逆に、英国ホームユニオンと呼ばれるイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの4ヵ国のうち、ウェールズ(レッドドラゴンズ=赤い恐竜)以外には愛称がありません。
これはむしろ、ホームユニオンたるプライドとも言えます。
ちなみに、日本代表には「ブレイブ・ブロッサムズ」という愛称があります。
体が小さいにもかかわらず、体が大きな強豪国に対して果敢に攻めて行く姿が「勇敢な桜」と見えたのでしょう。
これは他国が日本代表に敬意を表して付けた愛称ですが、日本では長すぎるのか単に「ジャパン」と呼ばれています。
ちなみに、現在のサッカー日本代表は監督名を冠して「ハリル・ジャパン」と呼ばれていますが、この呼称は元々ラグビーから派生したもので、昭和40年代に大西鐵之祐氏が日本代表の監督として世界の強豪相手に好勝負を演じたために「大西ジャパン」と呼ばれたのが最初でした。
現在のラグビー日本代表は、ヘッドコーチのエディ・ジョーンズ氏を名に冠したエディ・ジャパンと呼ばれてますね。
さて、外国代表のチームでも、日本で活躍する選手が多くいます。
たとえば、日本が勝った南アフリカ(スプリングボクス)にはフーリー・デュプレア選手(サントリー・サンゴリアス)がいました。
そして、日本代表が試合終了寸前の大逆転トライをカーン・ヘスケス選手(宗像サニックス・ブルース)が挙げたとき、必死でタックルに行ったのがJP・ピーターセン選手(パナソニック・ワイルドナイツ)です。
他にも、サモアにはトゥシ・ピシ選手(サントリー・サンゴリアス)、フォアティンガ・レマル選手(宗像サニックス・ブルース)などもいます。
さらにオーストラリア(ワラビーズ)のイズラエル・フォラウ選手も今季からNTTドコモ・レッドハリケーンズに加入予定です(筆者注:その後、フォラウ選手は故障のため、今季は登録抹消となりました。11月10日筆)。
フォラウ選手は、前述した13人制のラグビー・リーグで活躍し、さらにオーストラリアン・フットボールでもスーパースターでした。
それがラグビー・ユニオンに転身し、今回のワールドカップでも大活躍は間違いないでしょう。
これらのスーパースターが、日本でプレーするのです。
ニュージーランド(オールブラックス)のソニー・ビル・ウィリアムズ選手は、13人制のラグビー・リーグでもスーパースターながらラグビー・ユニオンに転向し、さらにヘビー級ボクサーでもある異色の経歴で、日本のパナソニック・ワイルドナイツでプレーした経験があります。
フィジーのトライゲッターであるネマニ・ナドロ選手は、元々無名の選手だったものの、日本のNECグリーンロケッツに入団してから開眼、ジャパン・トップリーグのトライ王に輝き、今や世界的プレーヤーです。
彼らは日本を去りましたが、日本で活躍した外国人選手が今ワールドカップに出場しているのです。
日本でのプレー経験はありませんが、注目はなんといってもニュージーランド(オールブラックス)主将のリッチー・マコウ選手ですね。
今大会がワールドカップ最後の姿となりそうです。
他にもダン・カーター選手やマーア・ノヌー選手など、オールブラックスは本当にタレントの宝庫です。
その他の国にもスーパースターは色々いますが、いちいち挙げていったらキリがないので、ここで割愛します。
注目するのは試合だけではありません。
たとえば、オールブラックスが行う試合前の儀式「ハカ」です。
ニュージーランドの先住民であるマオリ族が行っていた「勝利の舞」ですね。
このド迫力の儀式を試合前に行うことによって、自らの士気を鼓舞するとともに、相手を圧倒します。
そして今大会はイングランド開催ですので、スタジアム中に流れる「スイング・ロウ・スウィート・チャリオット」が注目ですね。
「スタンドのどこに指揮者がいるのか?」という議題が上がるぐらい、試合が盛り上がった場面で「スイング・ロウ・スウィート・チャリオット」を観客が一斉に歌い出し、相手を圧倒します。
その迫力は、甲子園の「六甲おろし」の比ではありません。
イングランド×ニュージーランドのテストマッチ。「ハカ」を行うオールブラックスに対し、トゥイッケナム・スタジアムを埋めるイングランドの大観衆が「スイング・ロウ・スウィート・チャリオット」を大合唱して「ハカ」を掻き消す
いずれにしても、日本戦以外でもラグビーの魅力が詰まっているのがワールドカップです。
4年に1度のこの機会を、見逃す手はないでしょう。
J-SPORTSでは1~3で全試合を生中継してくれますが、こちらは有料チャンネルなので、加入していなければ視聴することはできません。
それでも、日本テレビやNHKーBS1では、全試合ではないとはいえ、日本戦以外でも放送してくれます。
放送日時については、各サイトを参照してください。
https://www.jsports.co.jp/rugby/worldcup/schedule/
http://www.ntv.co.jp/rugby2015/oa/
NHK-BS1↓
http://www1.nhk.or.jp/sports2/rugby/
【トップリーグを観に行こう】
ワールドカップが終わると、11月13日からジャパン・トップリーグが始まります。
ワールドカップでラグビーの魅力がわかった方は、ぜひとも生観戦しましょう。
テレビ映像とは全く違う、迫力あるプレーを目の当たりにすることができます。
料金は自由席で1600円(高校生以下は500円)と、非常にリーズナブルです。
しかも2試合行われることが多いので、お得感満載ですね。
女性ファンならば、お目当てのイケメン選手を追っかけるのもいいでしょう。
サッカー選手はほとんどがスマートな優男という感じですが、ラグビーでは優男もいる反面、マッチョ系のイケメンも多く存在します。
女性にとっては、ストライクゾーンが広がるわけですね(^_^;)
また、試合が終わると選手たちは気軽にサインや握手などに応じてくれます。
このあたりは、閉鎖的なプロ野球選手とは対照的です。
たとえば花園ラグビー場なら、試合終了後のスコアボード下が狙い目。
スタンドとフィールドの境目がないので、選手たちと触れ合う絶好のチャンスです。
ただし、ちゃんとマナーを守って選手に接しましょう。
ワールドカップでは一躍、時の人となった五郎丸歩選手はヤマハ発動機ジュビロの所属。
可愛い風情の田中史朗選手はパナソニック・ワイルドナイツ、ジンバブエ人との混血である松島幸太朗選手はサントリー・サンゴリアスでプレーしています。
トップリーグ№1のイケメンと呼び声高いクレイグ・ウィング選手は神戸製鋼コベルコスティーラーズの選手です。
また、前述したように、ワールドカップで活躍した他国代表の世界的プレーヤーたちが、日本でプレーするのです。
これはもう、トップリーグを観に行くべきでしょう。
なお、日程は各チームか日本協会のサイトで調べてください。
トップリーグの日程↓
http://www.top-league.jp/game/2015/schedule.html
主な試合会場
東京=秩父宮ラグビー場……東京メトロ銀座線 外苑駅から徒歩5分
愛知=パロマ瑞穂ラグビー場……地下鉄名城線 瑞穂運動場東駅から徒歩10分
大阪=東大阪市花園ラグビー場……近鉄奈良線 東花園駅から徒歩10分
福岡=レベルファイブスタジアム……地下鉄空港線 福岡空港駅から徒歩25分
日本のラグビーは、大学ラグビーで発展したと言っても過言ではありません。
一時ほどの人気はないにせよ、現在でも日本の大学スポーツでは№1の人気を誇ります。
もう既に、各地区でリーグ戦が始まっています。
そして、各地区の上位校が暮れから来年にかけて全国選手権を行い、関東の対抗戦グループ、関東のリーグ戦グループ、そして関西の各大学が大学日本一を争います(他の地区からも出場します)。
現在のところ、関東対抗戦グループの帝京大学が6連覇と、圧倒的な力を見せてますね。
高校ラグビーは東大阪市花園ラグビー場で行われ、高校野球の春夏の甲子園に対して「冬の花園」と呼ばれています。
全国の予選を勝ち抜いた高校が花園に集結し、高校日本一を目指します。
そのひたむきな姿は、春夏の甲子園となんら変わりありません。
大会は暮れから新年にかけて行われるので、正月の風物詩と言えますね。
そして、今年度の高校や大学の大会から、2019年のワールドカップ日本大会に出場する選手が間違いなく現れるので要チェックです。
【ラグビーのルールについて】
ラグビー観戦について、常にネックとなるのが「ルールがわからない」ということです。
でも、全く心配ありません。
ルールなんて、ラグビーを見ているうちに自然に覚えてしまいます。
だいたい、野球のルールよりも、ラグビーのルールの方が遥かに簡単なのです。
最初のうちは、ドーンとぶつかる迫力と、スピードで鮮やかに走り抜ける技を楽しみましょう。
だいいち、日本×南アフリカでは、ルールなんてわからなかったのに、かなり興奮したのではありませんか?
ラグビーは、ルールなんてわからなくても、充分に楽しめるスポーツなのです。
それでも、一応は基本的なルールだけ確認しておきましょう。
まずは、得点方法から。
トライ(T)=5点
コンバージョン・ゴール(C)=2点
ペナルティ・ゴール(PG)=3点
ドロップ・ゴール(DG)=3点
まずトライ(T)はラグビーの華で、敵陣のゴールラインを越えてボールをグラウンディングすると5点を得ることができます。
トライの後のコンバージョン・ゴール(C)は2点で、どこから蹴るかはトライの位置によって決まります。
つまり、中央にトライを決めると正面からキックすることができ、端の方だと角度が付いて成功が難しくなるので、出来るならば中央にトライをしようとするわけです。
五郎丸選手が「拝みポーズ」をするのは、このコンバージョン・ゴールの時ですね。
ペナルティ・ゴール(PG)は、相手が大きな反則を犯した時に得られる権利です。
この際、PGを狙うか、あるいはタッチ・キックやスクラムを選択して、トライを狙いに行くかは、ペナルティ・キックの権利を得た側の自由です。
日本×南アフリカ戦で、最後の場面では3点取って引き分けを狙うPGではなく、スクラムを選択して見事に逆転トライを生み出しましたね。
なお、PGの時にゴールを狙う時も、五郎丸選手は「拝みポーズ」を取ります。
ドロップ・ゴール(DG)は、インプレ―中にドロップ・キックによりゴールを決めることで、3点入ります。
ドロップ・キックとは、プロレスのような飛び蹴りのことではなく、ボールをワンバンドさせて蹴ることです。
日本ではあまり見られませんが、海外では確実に3点を奪うために、よく使われる作戦です。
もちろん日本代表も、競った試合ではDGを狙うでしょう。
得点以外の基本的なルールとしては、味方より前にいるプレーヤーがプレーしてはいけない、ということを覚えておいてください。
これはオフサイドという反則になります。
たとえば、ラグビーではボールを前に投げてはいけない、ということはよく知られていますが、キックでは前に蹴ることができます。
それでも、キックしたボールを捕りに行くプレーヤーは、キックするプレーヤーよりも後ろにいなければならない、ということです。
これがラグビーにおけるルールの大前提で、オフサイドを知ることはラグビーの半分以上を知る、ということです。
それ以外では、レフリーが笛を吹いたら「ああ、反則があったんだな」というぐらいに思っておいてください。
ただし、気を付けて欲しいのは、レフリーのシグナルがサッカーとは逆だということ。
サッカーでは反則した方にレフリーが手を指し出しますが、ラグビーでは反則をされた方に手を上げます。
要するに、反則によってボールを得た側に手を指し出すわけです。
手を指す角度にも特徴があって、水平に手を出したら軽い反則(ノックオンやスロー・フォワード)で、反則された側のマイボール・スクラムとなります。
レフリーの手が90°に曲がれば中ぐらいの反則(アーリー・プッシュなど)で、相手はフリー・キックの権利が与えられます。
ただし、フリー・キックでは直接ゴールを狙うことはできません。
この際、スクラムを選択しても構いません。
なお、反則ではないのですが、フェア・キャッチをした場合でもフリー・キックとなります(フェア・キャッチの説明は割愛)。
レフリーの手が斜め上に上がれば重い反則(オフサイドなど)で、相手側はペナルティ・キックとなります。
ペナルティ・キックの権限は大きく、3点奪えるペナルティ・ゴールを狙うこともでき、あるいはタッチに蹴り出した場合でもマイボールのラインアウトとなり、もちろんスクラムも選択できます。
あと、レフリーが手を上げながら、笛を吹かない場合があります。
これはレフリーがアドバンテージを見ているシグナルです。
アドバンテージ・ルールとは、たとえ反則があっても、反則された側が不利にならなければ、そのまま試合を続行する、というラグビー独特のルールです。
つまり、ラグビーでは反則があってもなるべくゲームを途切れさせないでいよう、というゲームを楽しむ精神があるのです。
反則があった場合でも、レフリーはゲームの流れを見守り、その時には手だけを上げて笛は吹かないようにします。
反則された側に有利とならなかった場合にはレフリーは罰則を与えますが、もし不利にならなければ「アドバンテージ・オーバー!」と叫んで、前の反則はなかったことにするのです。
【ラグビーのポジション】
ポジションについては、最初のうちは大まかに覚えておけば結構です。
ラグビーには大きく分けて2つのポジションがあり、一つ目はフォワード(FW)、二つ目はバックス(BK)です。
フォワード(FW)とはスクラムを組む8人のことで、体が大きくて力が強いヤツ、と覚えてください。
背番号は①~⑧番です。
一方のバックス(BK)は、ボールを貰って走りまくる、足が速い連中と思っておけばいいでしょう。
背番号は⑨~⑮番。
もっとも近年はポジションのボーダーレス化が進み、FWでもスピードを、BKにはパワーが求められてますが。
FWによるスクラムのぶつかり合い
BKに回して、中央に見事なトライ
もっと細かいポジションを知りたい方は、こちらをご覧ください。
ラグビーのポジション < >内は略称 【 】内はユニット名
フォワード<FW>
①左プロップ<PR>【フロント・ロー】
②フッカー<HO>【フロント・ロー】
③右プロップ<PR>【フロント・ロー】
④左ロック<LO>【セカンド・ロー】
⑤右ロック<LO>【セカンド・ロー】
⑥左(ブラインドサイド)フランカー<FL>【バック・ロー】
⑦右(オープンサイド)フランカー<FL>【バック・ロー】
⑧ナンバー・エイト<№8>【バック・ロー】
バックス<BK>
⑨スクラム・ハーフ<SH>【ハーフ・バックス】
⑩スタンド・オフ<SO>【ハーフ・バックス】
⑪左(ブラインドサイド)ウィング<WTB>【スリークォーター・バックス】
⑫左(インサイド)センター<CTB>【スリークォーター・バックス】
⑬右(アウトサイド)センター<CTB>【スリークォーター・バックス】
⑭右(オープンサイド)ウィング<WTB>【スリークォーター・バックス】
⑮フル・バック<FB>【フル・バック】
以上の基本的なことさえわかれば、充分にラグビーを楽しむことができるはずです。
それでは、ラグビーの醍醐味であるぶつかり合い、そして縦横無尽に走り回る華麗なプレイを、存分にご堪能ください。