●第65回日本選手権シリーズ第1戦 10月25日(土)阪神甲子園球場
H 000 001 100=2
T 000 150 000=6
(阪神1勝)
勝=メッセンジャー1勝
負=スタンリッジ1敗
セントラル・リーグ代表(2位)の阪神タイガースと、パシフィック・リーグ代表(優勝)の福岡ソフトバンク・ホークスとの第65回日本選手権シリーズ第1戦は、阪神が6-2で快勝、先手を取った。
史上初めて外国人投手同士のマッチアップとなり、阪神先発のランディ・メッセンジャーが7回2失点の好投、さらに四番のマウロ・ゴメスが2安打3打点の活躍と、今シーズンの阪神を象徴するかのような助っ人勢の活躍だった。
戦評の方は翌朝の新聞を読んでいただくとして、分水嶺となったターニングポイントを挙げてみよう。
★分水嶺
【「9人制野球」に慣れていなかった秋山監督】
0-0で迎えた3回表、ソフトバンクの攻撃は先頭打者で七番の今宮健太が右前安打で出塁。
ここでソフトバンクの秋山幸二監督は、八番の細川亨に送りバントを命じた。
送りバントは成功して一死二塁、バッターは九番・投手のジェイソン・スタンリッジ。
ここで秋山監督が出したサインはまたもや送りバント。
しかしスタンリッジのバントはピッチャーの正面に転がり、二塁走者の今宮は三塁手前でタッチアウト。
チャンスを潰してしまった。
このシーンで多くの解説者や評論家は、
「三塁はタッチプレーなのだから、二塁走者の今宮は自重すべきだった。今宮の判断ミスが阪神に流れを呼んだ」
と語っている。
だが、果たして本当にそうなのだろうか。
今宮の判断ミス云々の前に、このケースで送りバントが必要だったか?ということの方が問題だ。
もちろん、打者が投手なのだから、ヒットはあまり期待できないが、一死二塁で行う作戦ではない。
スタンリッジだってまかり間違ってヒットを打つ場合もあるし、上手く右側にゴロを打つことができれば三塁に走者を進めることもできる。
一死一塁や一死一、二塁ならともかく、ダブルプレーの心配がない一死二塁なのだから、わざわざアウトを一つ相手にあげることはないのだ。
セ・リーグの監督なら、まず行わない作戦だろう。
もちろん、二塁より三塁に走者がいる方が点を取る確率が高くなるのは当たり前だが、二死になってしまえばあまり関係ないのである(漫画「ドカベン」で同じ作戦をとったことがあったが、これはあくまで漫画での話で、ストーリーを面白くしているに過ぎない)。
しかも、次打者は長打力のある一番・柳田悠岐なので、試合序盤から外野が浅く守ることは有り得ず、二塁走者の今宮はワンヒットで楽々ホームに帰って来れるのだ。
でも、それ以上に大きな問題がある。
そもそも、八番の細川に送りバントをさせたことが間違いなのだ。
せっかくの無死一塁なのに、八番打者に送りバントをさせると、九番の投手では二死を覚悟しなければならない。
つまり、得点する可能性が極端に低くなってしまうのである。
なぜ得点確率の低い作戦をとったかといえば、秋山監督が9人制野球に慣れていないからだ。
DH制を採用しているパ・リーグならば、無死一塁で八番打者に送りバントをさせることは珍しくない。
打線の中に投手はいないので、九番打者でもヒットが期待できるからである。
だが、9人制だとそうはいかない。
だから、セ・リーグで試合序盤に下位打者が送りバントをすることはほとんどないのだ。
六番打者以下の選手が無死で出塁しても、投手の打順でアウトを一つ覚悟しなければならないので、送りバントでアウトを増やすことはしないのである。
9人制野球でもう一つ言えば、1-0で1点ビハインドの5回裏での阪神の攻撃。
スタンリッジが制球を乱し、2四球などで二死満塁となった場面で前の回に左越え適時二塁打を放っている四番・ゴメスを迎えた。
ここでゴメスは左前2点適時打を放ち、さらに五番のマット・マートンにも中越え適時二塁打を打っている。
ここでスタンリッジは降板したが、ここまでスタンリッジを引っ張ったのは6回表の攻撃がスタンリッジからだったからだろう。
つまり、5回までもってくれれば、6回には代打を出せると思ったわけだ。
しかし、結果は裏目に出て、この回一挙5点を奪われ、試合はほぼ決まってしまった。
スタンリッジは第1戦を任されたエースだし、あの場面での続投も間違いとは言えないだろう。
「ゴメスの場面でスタンリッジを諦めるべきだった」
という声もあるが、こればかりは結果論になってしまうので、ここでは続投の是非は問わない。
ただ、秋山監督はDH制にはない9人制野球の難しさを痛感したはずだ。
今後、第2戦と第6、7戦はDH制なしの試合となる。
秋山監督は9人制野球への対応が必要になるだろう。