以前に野球のスコアブックについて書いたことがある↓
http://d.hatena.ne.jp/aigawa2007/20081124/1227550685
もう一度おさらいすると、野球のスコアブックでは見開き2ページだけで、敵味方の攻撃および守備を記録することができ、数字とアルファベット、それに記号のみで打撃結果のみならず、走者の動きまで手に取るようにわかるというスグレモノだ。
言わば試合を直接見なくても、僅か2ページのみで試合の全てがわかる、それが野球のスコアブックである。
普通のスポーツでは、試合を再現するにはビデオで録画するしかないが、野球のスコアブックはビデオ録画しなくとも見事に試合を再現してくれるのである。
付け方の基本さえ覚えれば、素人でもすぐにスコアブックを付けることができる手軽さも特徴だ。
カッコイイ先輩に憧れて野球部のマネージャーになった野球オンチの女の子が、間もなくスコアブックを付けることができるようになるのを見ても、その手軽さがわかる。
「記録の神様」こと宇佐美徹也さんが「野球のスコアブックの発明はノーベル賞もの」と言っているのも頷ける。
もう一度、野球のスコアブックの写真(一般式、あるいは早稲田式と呼ばれるもの)を片方のチームの攻撃のみ貼り付けてみよう。
店頭に並んでいる野球のスコアブックの多くは成美堂出版のものだが、成美堂出版の広告チラシがスコアブックに挟まれていた。
そのチラシを見ると、成美堂出版ではサッカーのスコアブックも販売しているらしい。
サッカーのスコアブックって、どんなものなのだろう?
あんなにボールが目まぐるしく動くスポーツで、スコアブックを付けることなど可能なのだろうか?
野球なら1打席ごと区切られているが、サッカーは実に流動的だ。
中盤でのパス回しなど、どうやって記録するのだろう?
僕の好奇心が頭をもたげてきた。
そもそもサッカーファンでも、試合中にスコアを付けている人がいるのだろうか。
野球ファンでは時々見かけるが、サッカーファンでそんなことをしている人など見たことも聞いたこともない。
というよりむしろ、多くのサッカーファンはサッカーのスコアブックすら見たことがなく、どんなものなのか知らない人が大多数ではないだろうか。
これは僕の勝手な憶測だが、サッカー場でスコアを付けている人はファンではなく、指導者かマネージャー、あるいは大会関係者か記者だけのような気がする。
もしサッカー場でスコアを付けているファンがいれば、その人はよっぽどコアなサッカーファンに違いない。
先日、大型商業施設に行くと、中には大きなスポーツ店があった。
この時、サッカーのスコアブックのことを思い出し、ひょっとすればこの店なら売っているかも知れないと思い、サッカーコーナーを物色した。
すると……、あった!
紛れもなく成美堂出版のサッカーのスコアブックだ。
そのスコアブックを立ち読みすると、なるほど、こうなっているのかとわかった。
サッカーのスコアブックとはどんなものなのか見ることができた僕は満足し、家路についた。
もちろん、サッカーでスコアブックを付けることなどないだろうし、購入しなかったため、どんなスコアブックなのかここで紹介することはできない。
どんなものなのか見たかった人は残念だが、諦めてほしい。
まあ、僕だけはどんなものかわかったので、大変嬉しい。
もし、サッカーのスコアブックの中身を知りたい人がいれば、大型のスポーツ店に行って物色してください。
万が一その店に置いてなくても、通販で手に入れるという方法もあります。
……と思っていたのだが、家に帰るとどうしてもサッカーのスコアブックが欲しくなった。
「一度見た」というのと、「常に手許にある」というのでは雲泥の差がある。
さらに、今後の資料にもなる。
それにも増して、ネタラン国民にどんなスコアブックなのか、公開してみたくなった。
おそらく国民の中にも、サッカーのスコアブックがどんなものなのか、知りたい人は大勢いるだろう。
それで国王は、国民のために身銭を切ってサッカーのスコアブックを購入することを決意した。
うう、なんて美しい話なのだろう……。
さっそく件のスポーツ店に行き、大枚はたいてサッカーのスコアブックを購入した。
これがそのスコアブック、両チーム分だ。
野球のスコアブックとはずいぶん様相が違うというイメージだ。
ちょっと見づらいので、片チームのみを示してみる。
これでも見にくいので、簡単に説明すると、中央には当然ながら選手名記入欄があり、そこには前後半と延長戦のシュート数が書き込むことができる。
ポジションはゴールキーパー、フルバック、ハーフバック、フォワードとなっており、システムによって「{」の記号によりペンで自由に変えることができる。
と言っても、フルバックとハーフバックは、今ではあまり使われないポジション名である。
そして、説明書の部分に実例が示されているので、それを貼り付けてみよう。
選手名欄の下には、ゴールキック、コーナーキック、直接および間接フリーキック、ペナルティキックを書き込む欄および備考欄がある。
数字の横にペンで×がいくつか書かれているのは、そのプレーが起こるたびに斜線でマークを付け、いわば「正」の字のように試合後に数えられるようにしているのだろう。
特徴的なのが、ページの端にゴールの絵が4つ(2ページ合わせて8つ)書かれていることである。
要するに、ゴールが決まったときにどういう動きで得点が入ったか、得点経過を示すものだ。
これはページによってチームのゴールが分けられているわけではなく、チームに関係なくゴールが決まった順に書き込むらしい。
だったら両チーム合わせて9点以上入った場合はどうするか?
その場合はスコアブックの最後に補充の得点経過図が付録で付いている。
では、実例を拡大して貼り付けてみよう。
得点経過を説明しよう。
後半19分、チーム「富士」が敵陣ゴール前まで攻め込み、右側にいた6番(HB)の新井にゴロのパスが通る。
新井はゴール前にゴロのパスを送り、ペナルティエリアに入り込んだ9番(FW)の須佐がシュート!
このゴールが決まり富士2−3太陽と1点差に迫る。
須佐が得点者で新井がアシスト。
後半24分、チーム「富士」の11番(FW)の松山が敵陣に攻め込み、チーム「太陽」のゴールキーパー・山岡が一か八かでセービングに行くも、松山がドリブルでこれをかわし、右からゴールを決めて3−3の同点に追い付く。
得点者は松山でアシストはなし。
というのがサッカーのスコアブックの全容である。
もちろん、これは成美堂出版のものであり、他にも違う形式のスコアブックがあるかも知れない。
特に、いわゆるスコアラーと呼ばれる人たちは、この記録方法では不十分と思われ、独自のデータの取り方があるに違いない。
プロ野球のスコアラーも、市販されているスコアブックとは全く違う、1球ごとのコースや球種がわかる、独特のスコアブックを使用している。
この成美堂出版のサッカーのスコアブックは、昭和43年度に日本蹴球協会(現・日本サッカー協会)が統一した記録様式に準拠しているそうだが、得点経過図などはおそらく成美堂出版のオリジナルだろう。
しかし、やはり野球のように全ての記録を網羅するのは不可能で、中盤のパス回しなどを記録することはできないようだ。
やはりサッカーの試合を再現するのは、ビデオ以外にないということか。
それでも、せっかくスコアブックを買ったのだから、長居か万博に行ったときに、スコアを付けながらサッカーを観てみようか。
あるいは、なでしこリーグでINACレオネッサの試合を観ながらスコアを付けるのもいい。
でも、スコアを付けている僕の姿を見て、周りの観客はどう思うのだろう。
「サッカー場で一生懸命、書き物をしているヘンな人」
と思われるのだろうか。
あるいは、
「あの人はきっと、ライバルチームのスパイに違いない」
なんて思われたりして。