筆者が子供の頃から愛読していたのが故・ちばあきお先生の野球漫画「キャプテン」「プレイボール」である。
本国でも「野球少年の郷(ふるさと)・墨谷―『キャプテン』『プレイボール』の秘密―」を連載していた。
http://neterlands.web.fc2.com/index2.html
そんな筆者が「キャプテン」に関し、妙にリアリティな夢を見た。
以下の青字部分にそれを記してみよう。
「キャプテン」「プレイボール」を読んだことがない人には、少々わかりにくい内容かも知れないが、そこはご了承いただきたい。
筆者はある知人男性の家を訪れた。
そこには「キャプテン」のジャンプ・コミックス単行本、第1巻があった。
「ああ、懐かしいなあ」などと言いながら、筆者は単行本を手に取った。
もちろん筆者は現実世界でも「キャプテン」「プレイボール」のジャンプ・コミックスを全巻、取り揃えている。
その人は、やや遅い時期に「キャプテン」を読み始めたようだった。
「キャプテン」第1巻の巻末に掲載されている広告には『「プレイボール」第9巻が間もなく発売!』と書かれていた。
「プレイボール」第9巻の発売直前に「キャプテン」を購入したということは、初版からかなりの年数が経っているはずである。
そして「キャプテン」第1巻を読んでいると、妙なことに気付いた。
筆者が持っている「キャプテン」第1巻とは、内容が全く違うのだ。
その単行本は改訂版とかアニメ版とかではなく、間違いなく筆者と同じジャンプ・コミックスである。
実際の「キャプテン」の冒頭は次の通り。
中学野球の名門・青葉学院では二軍の補欠だった谷口タカオは、あまりにも野球がヘタだったため青葉野球部には付いていけず、野球をノビノビ楽しみたいと野球では無名の墨谷二中に転校する。
ところが、転校先の墨谷二中では、青葉出身というだけで「凄い選手が入ってきた」と誤解されてしまう。
また間の悪いことに、バッティング練習でクソボールをメクラ滅法バットを振ったら、偶然にも特大ホームランを打ってしまい、墨二ナインはますます谷口のことを誤解するようになった。
このあたりのストーリーは、夢にしては珍しくリアリティに思い出された。
ところが、知人が持っていた「キャプテン」には、そんなシーンはどこにも掲載されてなかったのである。
ただ、雑誌で連載した後(ちなみに「キャプテン」を連載していたのは月刊少年ジャンプ)、単行本化した際には作者が加筆訂正することはあるようだ。
したがって、夢の中の筆者も、単行本の版数をある程度重ねた後に、あきお先生が加筆訂正したのだろうと思っていた。
ところが、単行本第1巻の2/3を読んでも「谷口のクソボール・ホームラン」のシーンは、全く出てこなかったのである。
それどころか、谷口すら登場しなかった。
知人の「キャプテン」では、谷口が登場する前に、なんと佐野が現れたのだ。
佐野というのは青葉学院の一軍エースである。
しかも、青葉学院の一軍が、墨谷二中と練習試合を行う。
その練習試合で、墨谷二中の丸井(谷口の一年後輩で、谷口の次に墨二のキャプテンとなる選手)が佐野からホームランを放つのだ。
しかし佐野は「本番のために、わざと打たせてやったんだよ」などと嘯いている。
そんなこと、ありえねーだろ!?
「キャプテン」を読んだり、あるいはアニメで見たことがある人ならわかると思うが、谷口が転校してくる段階での青葉学院は、墨谷二中のことなど全く眼中にはない。
しかも、当時の青葉学院は、地区予選では一軍を温存し、二軍メンバーで戦っているのだ。
そして、二軍でも青葉学院は圧倒的な力で勝ち進み、地区予選で優勝してしまうのである。
そんな青葉学院が、無名の墨谷二中と練習試合を行うはずがないし、仮にあったとしても一軍のエースが登板するなど有り得ないのだ。
ましてや「本番のために……」云々を、佐野が言うはずもないのである。
そもそも、谷口が転校する前の丸井は一年生で、レギュラーですらなかった。
有り得ないシーンはまだ続き、「プレイボール」で初めて登場する倉橋が、なんと墨谷二中のメンバーになっている。
そんなバカな、倉橋は隅田中の出身のはずなのに、なぜ墨谷二中にいる?
まさか、墨谷二中のチンタラした練習に愛想を尽かして、隅田中に転校したとか。
こうしてリアリティな想い出と有り得ないシーンがゴチャ混ぜの夢は進み、とうとう「谷口のクソボール・ホームラン」が現れることなく夢から醒めてしまった。
「墨谷」のモデルとなった東京都墨田区の八広、荒川の河川敷