●第65回日本選手権シリーズ第4戦 10月29日(水)福岡ヤフオク!ドーム
T 002 000 000 0=2
H 200 000 000 3x=5
(ソフトバンク3勝1敗)
勝=サファテ1勝1S
負=安藤1敗
本=中村1号(呉昇桓)
パシフィック・リーグ代表(優勝)の福岡ソフトバンク・ホークスと、セントラル・リーグ代表(2位)の阪神タイガースとの第65回日本選手権シリーズ第4戦は、延長10回の熱戦の末、ソフトバンクが中村晃のサヨナラ3ランにより5-2で勝ち、3勝1敗で日本一にリーチをかけた。
★分水嶺
【継投策が明暗を分けた】
2-2の同点で迎えた延長10回裏のソフトバンクの攻撃、阪神は9回から登板した安藤を続投させた。
しかし、フィルダース・チョイスもあって一死一、二塁で五番の松田宣浩を迎えたところで、阪神はクローザーの呉昇桓を投入。
呉昇桓は松田をセカンドフライに抑えたものの、六番の中村に右越えサヨナラ3ランを浴びてしまった。
ピンチを迎えた場面で呉昇桓を投入するなら、なぜ10回の頭から登板させなかったのか。
イニングの頭から登板するのと、走者が残った場面でマウンドに上がるのとでは、気分的に全然違う。
特に10回表、阪神の攻撃で一死一、三塁のチャンスを迎えたとき、ブルペンにいた呉昇桓は「よし、この裏は俺の出番だ」と思ったはずだ。
結果は四番のマウロ・ゴメスが併殺打に倒れて勝ち越し点は奪えなかったが、呉昇桓の準備は出来ていただろう。
しかし、ワンテンポ遅れての登板となって、呉昇桓も張り詰めた緊張の糸が一瞬だけ緩んだに違いない。
もちろん、イニングの頭から登板させても打たれたかも知れないし、レギュラー・シーズンと違って日本シリーズは延長15回までの長丁場だから、できるだけ呉昇桓の前の投手を引っ張りたい気持ちはよくわかる。
だが、クローザーを投入するなら、最高の状態の場面でマウンドに上げるべきだろう。
継投時期とは関係ないが、真っ直ぐで押した配球もいただけなかった。
呉昇桓がストレートだけではパ・リーグの打者に通用しないのは、交流戦で証明済みだ。
パ・リーグには決め打ちしてくる選手が多い。
カットボールやスライダーを混ぜていたら、中村も1-2と追い込まれた状態からあれだけ思い切ったスイングはできなかっただろう。
一方のソフトバンクは、見事な継投を見せた。
先発の中田賢一は2点を先制してもらったにもかかわらず、「暴れ馬」の異名通り3回で6四球の大乱調で同点に追い付かれる。
センターの柳田悠岐の2度にわたる好プレーで逆転は許さなかったものの、ソフトバンクの秋山幸二監督は4回からスパッとピッチャーを東浜巨に代えた。
第1戦の分水嶺で、筆者は「秋山監督は9人制に慣れていない」と書いたが、今日は逆にDH制ならではの采配だったと言えよう。
9人制の野球に慣れたセ・リーグの監督なら、投手に打順が回ってきて代打を送った時以外に、失点が少ない早い回でこれほどまでに思い切った継投は行えない。
しかし、DH制に慣れた秋山監督は、投手の打順には気にしなくていいので先発投手がダメだと思ったら、思い切りよくリリーフを送ることが出来る。
結果はこの継投策が当たり、東浜は3回1安打無失点という見事なリリーフで、火が点きかけた阪神打線の勢いを消し止めた。
今日のヒーローはもちろん中村だが、東浜が影のヒーローと言ってもいいだろう。
東浜の好リリーフがなければ、阪神が勝っていたかも知れない。
これでソフトバンクが3勝1敗で日本一にリーチ、阪神は崖っ淵に立たされた。
第5戦の先発は、ソフトバンクが攝津正、阪神は第1戦に続き中4日でランディ・メッセンジャーと発表されている。
メッセンジャーは第1戦では、7回2失点の好投で勝利投手となった。
中4日でも大丈夫だろうが、ソフトバンク打線は5日前に対戦しているので、慣れられてしまっているというハンディがある。
ただし、攝津もクライマックス・シリーズでは不調だったので万全には程遠く、阪神にも付け入る隙はあるだろう。
ソフトバンクが地元・福岡で一気に日本一を決めるか、阪神が意地を見せて甲子園に戻って来るか、いよいよ日本シリーズも大詰めに近付いてきた。