先日、マサチューセッツ工科大学(MIT)などの国際研究チームが、重力波を初観測したと発表した。
アルベルト・アインシュタインが重力波の存在を予言したのが1916年、そのちょうど100年後の今年に、重力波が観測されたわけである。
アインシュタインといえばすぐに相対性理論が連想されるが、重力波も相対性理論の一つ。
しかも一般相対性理論だ。
筆者などは、特殊相対性理論の原理だけはかろうじてわかるが、一般相対性理論となるともうお手上げ。
天才アインシュタインをもってしても、特殊相対性理論を発表してから、一般相対性理論を完成させるまで10年もの歳月を費やしたほどだ。
一般相対性理論が、量子力学と並ぶ20世紀最大の理論と呼ばれる所以である。
特殊相対性理論は一般相対性理論に比べて遥かに易しいといっても、その原理を説明するのは図なしでは難しい。
簡単に結論だけ言えば、
●この世に光を超えるスピードのものはない
●速度は相対的なものだが、光速のみ絶対的なものだ
●光速に近付けば近付くほど質量が増し、加速が難しくなる
●止まっているものと動いているものでは、時間の進み方が違う
といったところか。
要するに、普段は想像もできないようなことを、理論立てて説明したのである。
特殊相対性理論を発表した頃は、常識はずれの理論だったのだ。
当時はせせら笑われた荒唐無稽な理論が、やがては多くの科学者によって立証されたのである。
これほどの理論を体系づけたアインシュタインだったが、実は落ちこぼれだったのだ。
画一的な教育を行う学校に馴染めず、成績も悪かったという。
学校を卒業しても、科学者にはなれなかった。
アインシュタインを変えたのは思考実験である。
頭の中であれこれと空想し、謎とされていた光の正体に迫った。
そして数式を駆使し、特殊相対性理論を完成させたのである。
特殊相対性理論が一般相対性理論の足掛かりになったのは言うまでもない。
この相対性理論がやがて、人類永遠の謎とされた宇宙創成の秘密まで解き明かしたのだ。
現在、宇宙が誕生したのはビッグバンだというのが定説となっているが、それも相対性理論がなければ成り立たなかった。
宇宙の始まりとされる、ビッグバンという名の大爆発。
ではいつ、ビッグバンが起こったのかと、誰もが思うだろう。
しかし「いつ」なんてものはないのだ。
ビッグバンが起こる前は、無の世界。
無の世界、即ち何もないというのは凄いことで、要するに時間すら存在しなかったのである。
時間がないのだから、いつ(ビッグバンが)起こる、ということもない。
現在、時間の中で生きている我々には想像しがたいが、そんなことまで理論づけてわかってきたのだ。
夜空を見上げてみよう。
数々の星が瞬いている。
例えば、全天の中で一番明るい恒星は(太陽を除く)、おおいぬ座のシリウスだが、地球からの距離は8.6光年である。
つまり、宇宙最速である光の速さ、秒速30万kmで8年以上もかかる距離だ。
しかし、シリウスは地球からはかなり近い星で、北極星などは400光年以上とも言われる。
シリウスの50倍もの遠さだ。
だが、これら一つの星として見られるのは、銀河系の中でも地球にかなり近い星といえる。
それより遠くなると、一つの星としては認識できず、帯状になってしまうのだ。
それが天の川である。
地球からはあまりにも遠いため、もはや星としては見ることができない。
それでも、天の川は銀河系内にある星の群れだ。
銀河系とは、直径10万光年にも及ぶ島宇宙(銀河)である。
地球を含む太陽系は、その銀河系の端っこの方にある、いわばド田舎だ。
地球から一つの星として見えるシリウスや北極星も、銀河系の中ではド田舎と言えよう。
そう考えたら、地球なんて銀河系の中では存在感などまるでない星である。
しかし、銀河系だって宇宙全体から見れば、とんでもないド田舎だ。
銀河系から一番近い島宇宙はアンドロメダ銀河だが、その距離は約250万光年。
一番近いにもかかわらず、気が遠くなるような距離である。
そして、全宇宙には銀河系やアンドロメダ銀河のような島宇宙が無数にあるのだ。
銀河系の中には星が無数にあり、そして全宇宙には銀河系のような島宇宙が無数にある……。
多くの天文学者が地球外生命体、即ち宇宙人は存在するだろうと予測するのは、この気が遠くなるような宇宙の広さ故だ。
と同時に、宇宙人が地球に来ていることを否定するのも、この気が遠くなるような宇宙の広さ故である。
我々が住む太陽系から一番近い恒星はケンタウルス座α星で、その距離は4.4光年。
つまり、光の速さで4年以上もかかるわけだ。
仮に、ケンタウルス座α星を回る惑星に宇宙人がいたとして、わざわざ遠い地球に、何の目的で来るのだろうか。
我々地球人類が地球外の星に辿り着いたのは、最も近い月だけだ。
現在では火星への有人飛行が計画されているが、火星へ行った人は二度と地球へは戻れないという。
金星と並んで、地球から最も近い惑星である火星ですら、行くのは命がけなのだ。
ましてや4.4光年も離れたケンタウルス座α星からやって来るなんて、狂気の沙汰もいいところである。
ちなみに、地球人が発明した最も速い乗り物、即ち宇宙ロケットのスピードは光速の1万分の1。
つまり、最も近い恒星系のケンタウルス座α星へは40万年以上もかかるわけだ。
仮に、恐ろしく知能が発達した宇宙人が、光速の10分の1のスピードを出せるUFOを造ったところで、ケンタウルス座α星から地球まで40年以上。
その宇宙人は一生を棒に振るだろう。
もちろん、宇宙戦艦ヤマトのように、光速を超えるワープ航法を実現すれば地球に来ることも可能かも知れないが、現在ではワープ航法は不可能だと断定されている。
ちなみに、光が秒速30万kmものスピードを出せるのは、光に質量がないためで、人が乗る宇宙ロケットには当然のことながら質量があるのだから、光速と同じスピードを出すのは絶対に不可能だ。
宇宙戦艦ヤマトは、ワープをしない通常航行では光速の99%の速度を出せることになっているが、実際にそんなことをしたら質量が7倍にも膨れ上がって、その自らの重さで押し潰されてしまうだろう。
しかも、これは地球から最も近いケンタウルス座α星の惑星系に宇宙人がいればの話。
ある天文学者によれば、地球のような高等生物がいる星がいる可能性は、銀河系の中で最大20万個だという。
20万個と言えば凄い数に思えるが、銀河系は直径10万光年という巨大な島宇宙なので、もし20万個の星に宇宙人がいたとしても、その実態はスカスカだ。
地球から最も近くても、100光年は彼方だろう。
100光年の彼方から、光速の10分の1のスピードを持つ超高速UFOに乗って、1000年もの時間を費やす。
なんてバカな宇宙人なのだろう。
しかも、銀河系に20万個というのはかなり多く見積もった数字で、実際には限りなくゼロに近いという。
つまり、地球というのはそれだけ奇跡的な星なのだ。
これだけ絶妙なバランスを以って高等生物を生み出した星など、銀河系広しといえども地球をおいて滅多にない。
もっとも、宇宙には銀河系以外にも島宇宙が無数にあるので、地球外生命体が数多く存在する可能性は高いのだが、だからといって銀河系外から地球にやって来るのは不可能だろう。
「地球には宇宙人がやって来ている」などと主張するUFO信者たちは、宇宙の広さを知らない、全く無知な輩と言えよう。
そんな無意味なことを考えるより、夜空を見上げると、様々な発見をする。
ケンタウルス座α星は日本からは見えないが、シリウスは8.6光年、北極星は400光年。
要するに、シリウスは8年以上前、北極星は400年前の姿を見ているのだ。
さらに、アンドロメダ銀河は250万光年、即ち250万年前の島宇宙である。
そして、さらに遠くの1億光年彼方の銀河を見るということは、1億年前の宇宙を見ているということだ。
これを四次元の世界と言わずとして、何と言おう。
普段、我々が体感しているのは、三次元の世界だ。
つまり、縦、横、高さの空間である。
しかし、時間に関しては、過去から未来へ一方通行でしかない。
ところが、夜空を見上げると、シリウスのような8年前から、アンドロメダ銀河のような250万年前、そして1億年以上前の姿を見ることができる。
つまり、夜空というのは宇宙の歴史を映す、巨大なVTRなのだ。
歴史を勉強する時、例えば聖徳太子や徳川家康の行動を知るには、文献を調べるしかない。
しかし宇宙の歴史は、夜空が映像として示しているのである。
宇宙の始まり、即ちビッグバンは、137億年前に起こったと言われる。
ということは、137億光年の彼方にある天体を調べれば、宇宙の創世記がわかるということだ。
つまり、夜空を眺めるということは、タイムマシンに乗っているということでもある。
今回の、重力波の初観測によって時空の歪みを捉え、望遠鏡では見えなかった初期宇宙に迫ることが出来るという。
それは、四次元の世界を体感し、我々のルーツを探るということだ。