2011年4月15日、日本プロ野球(NPB)の、ある偉大な記録が途絶えた。
阪神タイガースの金本知憲が持つ連続試合出場が1766試合でストップしたのだ。
連続試合出場のNPB記録は衣笠祥雄(元・広島東洋カープ)の2215試合であり、金本の記録は史上2位である。
しかし、金本には衣笠を越える偉大な記録があった。
それが1492試合の連続フルイニング出場の記録であり、これはメジャーリーグ(MLB)にもない、ギネスブックに載っている世界最高記録である。
その記録が途絶えたのが昨年の4月18日であり、連続出場記録が途絶えたほぼ1年前というのは因縁深い。
実はこの時の金本は右肩を故障していて、先発出場できる状態ではなかった。
前日の横浜ベイスターズ戦で、レフトからの送球がまともにできなかったためにチームは負け、翌日に真弓明信監督に先発出場辞退を直訴して、連続フルイニング出場記録は終わった。
しかしその後も代打出場や交流戦でのDH出場で、連続試合出場記録だけは続いた。
ただ、連続試合出場記録を延ばすために、無理に金本を代打で起用して、その結果代えなくてもいい投手に交代を余儀なくされて、落とした試合もあった。
結局、それが響いて中日ドラゴンズに僅か1勝差で優勝を逃してしまった。
今季、右肩の状態も良く、東日本大震災により開幕が遅れたこともあって、金本は開幕戦から先発出場した。
しかし、広島との開幕3戦目で金本の拙守により負けてしまったからか、翌日(つまり4月15日)の中日ドラゴンズ戦では先発から外れた。
この試合、阪神が5−3でリードを奪い、なんとしても追加点が欲しい8回表、二死一塁で投手・久保田の代打として金本が送られた。
この打席を完了すれば金本の連続試合出場記録は続いたが、一塁走者の俊介(藤川俊介)が盗塁に失敗してしまい、金本は打席を完了できなかった。
この後、金本が守備に着けば連続試合出場は続くが、僅か2点リードの状態で守りに不安のある金本を守備に着かせるわけにはいかない。
当然、金本はベンチに引っ込み、この瞬間に連続試合出場は1766試合で途絶えてしまった。
連続試合出場とは、1打席を完了するか、守備に着くかしなければならない。
もう一つ言えば、代走に出ただけでは連続試合出場とは認められないのだ。
もちろん、アテ馬などは論外だ。
でも、この偉大な記録が途絶えて、良かったと思う。
昨年は明らかに、金本の連続試合出場の記録を伸ばそうとして、無理に代打起用するシーンがままならずあった。
それがやはり、阪神のV逸の原因になったと思う。
でもそれが、真弓監督の甘さだとは思えない。
監督がチームの勝利を優先するのは当然だが、個人記録をサポートするのも監督の務めだからだ。
だからこそ、真弓監督は金本の連続試合出場を続けさせたのだろう。
今季、僕はBT(ベースボール・タイムズ)のプレイヤーズ・ファイル(選手名鑑)での金本の項で、
「連続フルイニング出場記録は1492試合で途切れた。今季は個人記録にこだわらず、勝負強い打棒で優勝に貢献する」
と書いた。
でもそれが、金本自身にも、真弓監督にもその覚悟があるのか、と不安だった。
しかし、優勝争いの最大のライバルである中日戦で、それが実行されたことに意義がある。
もう真弓阪神は、金本の記録に気を遣うこともないだろうし、勝利に貢献する最大限の選手として金本を扱うだろう。