12月17日、テレビ大阪で「誰も知らんキング第4弾」という番組を放送していた。
大阪府下にある43市町村を、今まで誰も調べたことがない調査を行い、その結果をランキング形式で発表するという番組である。
その中で「マンモス団地ランキング」というコーナーがあって、富田林市の金剛団地が戸数で2位の約1.5倍という圧倒的大差で大阪府下のマンモス団地№1に輝いたのだ。
先日、このネタランで金剛団地のイルミネーションについて書いた。
そのとき、思わぬことを発見したのだ。
関西はよく「私鉄王国」と呼ばれる。
阪急電鉄、阪神電気鉄道、京阪電気鉄道、近畿日本鉄道(近鉄)、南海電気鉄道という大手私鉄が、関西5大私鉄として君臨しているのだ。
大手私鉄の会社数では首都圏の方が多いものの、首都圏の私鉄は国鉄(現:JR)に追随して発展してきたのに対し、関西の私鉄は国鉄に対し常にケンカを売っていたのである。
もちろん、私鉄同士でも激しい競争が行われたため、関西では私鉄文化が色濃く残り、各鉄道会社の特徴がハッキリしているので実に個性的だ。
大阪府下で言えば、阪神電鉄は大阪市内のみを走り、阪急電鉄は大阪府北部の摂津地域、京阪電鉄は大阪府北東部の北河内地域、近鉄は大阪府中東部および南東部の中・南河内地域、南海電鉄は大阪府南西部の泉州地域および南東部の南河内地域を網羅している。
大手私鉄各社は、沿線で宅地開発をしているため、地域によって特色がクッキリ現れるのだ。
この5大私鉄は全て大阪市を起点としているので、大阪市には全ての大手私鉄が走っているのは当然だが、それ以外の市町村では1社しか大手私鉄が走っていないケースが多い。
たとえば大阪府で2位の人口を誇り、政令指定都市でもある堺市(人口約82万人)を通っている鉄道は、南海電鉄(南海線および高野線)、泉北高速鉄道、阪堺電気軌道(阪堺線)、JR西日本(阪和線)、大阪メトロ(御堂筋線)の5社だ。
しかし、このうち泉北高速鉄道は南海高野線と直通運転しており南海グループ傘下、路面電車の阪堺電軌も南海電鉄の子会社である。
JRの阪和線ですら戦前は南海に買収されて山手線と名乗っていた時期もあるし、南海電鉄と無関係なのは元々大阪市営地下鉄だった大阪メトロだけだ。
つまり、堺市は南海電鉄の影響をモロに受けており、市内の雰囲気も南海そのものである。
豊中市(人口約40万人)も、北大阪急行電鉄(大阪メトロの御堂筋線と直通、阪急阪神ホールディングス傘下)や大阪モノレールが走っているものの、大手私鉄としては阪急電鉄のみだ。
もちろん、豊中市は阪急一色であることは言うまでもない。
同じ大阪府北東部でも、淀川を境に北側の阪急文化圏(茨木市や高槻市など)と、南側の京阪文化圏(寝屋川市や枚方市など)では、雰囲気が全く異なる。
ところが、この原則に反している市が、大阪府下には大阪市を除いて2市だけあるのだ。
それが、富田林市(人口約11万人)と河内長野市(人口約10万人)である。
富田林市と河内長野市は隣接しており、共に大阪府南東部の南河内地域にある市で、ハッキリ言うと大阪府の中でも田舎だ。
そんな田舎なのに、この両市には大手私鉄が2社も通っているのである。
その2社とは、両市とも南海電鉄(高野線)と近鉄(長野線)だ。
このうち、河内長野市の中心駅である河内長野駅は、南海電鉄と近鉄の両方が乗り入れているのだ。
しかし、インフラでは南海電鉄の方が圧倒的に上。
南海電鉄の河内長野駅は特急を含む全列車が停まるが、近鉄の長野線は南大阪線の支線となっているため特急は通っていない。
駅のホームも、南海電鉄の河内長野駅は2面4線という大きな駅なのに対し、近鉄の河内長野駅は事実上1面1線(造りとしては1面2線だが、ホームは1線しか使われていない)。
河内長野駅全体も、ほぼ南海色で染まっており、駅前のロータリーには南海バスが多く停まっているが、近鉄は隅に追いやられた感じだ。
また、河内長野駅以南は全て南海電鉄の駅であり、河内長野市全体としても近鉄色はほとんどなく、南海一色と言っていい。
近鉄は大阪阿部野橋(天王寺)へ直通で行けるが、本数が少ないうえに時間がかかる。
南海電鉄だと本数が多いし、有料特急に乗らなくても急行を利用して新今宮でJRに乗り換えた方が、近鉄よりも早く天王寺に着けるぐらいだ。
そもそも、南海電鉄ならミナミのド真ん中である難波に直通で行くことができる。
▼河内長野駅のロータリーには南海バスが多く行き来し、駅ビルも南海マーク
一方の富田林市は、南海電鉄の駅が1つなのに対し、近鉄の駅は5つだ。
これだけ見ると、富田林市は近鉄色の方が圧倒的に濃いように思える。
ところが、富田林市民が最も多く利用する南海高野線の金剛駅は、大阪狭山市にあるとはいえ市境近くに存在し、大阪府下№1のマンモス団地である金剛団地の玄関口のため、事実上は富田林市の駅と言ってもいいぐらいだ。
また、金剛駅も河内長野駅と同様、特急を含む全列車停車駅である。
さらに、金剛駅の隣り駅である大阪狭山市駅も富田林市民が徒歩で行くことができるので、富田林市と馴染みの深い南海電鉄の駅は3つあると言っていい。
そして、富田林市内の人口では南海沿線の方が、近鉄沿線よりも遥かに上だ。
とはいえ、富田林市の中心駅は近鉄長野線の富田林駅であり、河内長野市と違って近鉄が不利というわけではない。
富田林市内の中央部には、羽曳野丘陵が南北に連なっている。
この羽曳野丘陵を境に、東側が古い街並みの近鉄文化圏、西側が新興住宅地の南海文化圏と、ハッキリ分断されているのだ。
前述したように、関西では私鉄によって個性が前面に押し出されるため、同じ富田林市内でも東と西では雰囲気が全く違う。
田舎ながら大阪市以外で、2社の大手私鉄が通ずる富田林市と河内長野市。
特に富田林市は、2つの私鉄文化が存在する、大阪府下でも唯一の市と言っていい。