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安威川敏樹のネターランド王国

お前はチョーマイヨミか!?

ネターランド王国憲法

第1条 本国の国名を「ネターランド王国(英名:Kingdom of the Neterlands)」と言う。
第2条 本国の国王は「禁句゛(=きんぐ)、戒名:安威川敏樹」とする。
第3条 本国は国王が行政・立法・司法の三権を司る、絶対王制国家である。
第4条 本国の公用語は日本語とする。それ以外の言語は国王が理解できないため使用禁止。
第5条 本国唯一の立法機関は「日記」なる国会で、国王が一方的に発言する。
第6条 本国の国民は国会での「コメント」で発言することができる。
第7条 「コメント」で、国王に不利益な発言をすると言論弾圧を行うこともある。
第8条 「コメント」で誹謗・中傷などがあった場合は、国王の独断で強制国外退去に踏み切る場合がある。
第9条 本国の国歌は「ネタおろし」とする(歌詞はid:aigawa2007の「ユーザー名」に記載)。
第10条 本国と国交のある国は「貿易国」に登録される。
第11条 本国の文章や写真を国王に無断で転載してはならない。
第12条 その他、上記以外のややこしいことが起きれば、国王が独断で決めることができる。

「0.1mmの誤差も見逃さない」の大ウソ

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テレビを見ていると、日本の技術力の高さをやたらアピールする番組が目立つ。

もちろん、日本の技術力が高いのは世界で認められているのは間違いない。

よく言われるのが、日本製品は寸分の狂いもない、ということだ。

しかし、本当にそうなのだろうか。

当然、寸分の狂いもないことは非常に良いことなのだが、それにばかり拘っていると、とても仕事など成り立たなくなる。

そういうことを、知っている人がどれぐらい居るだろうか。

 

筆者は以前、板金関係の設計をしていた。

その会社の親会社であるTN社(仮称)が、東証一部上場になったということで、全国テレビCMを始めたのである。

そのCMは「日本のモノ造り」を支援するというコンセプトで、小さな町工場を題材にしていた。

その町工場は、絞り加工の会社だった。

CMのキャッチコピーは、以下の通り。

 

「その手は、0.1mmの誤差も見逃さない」

 

こんなの、大ウソである。

絞り加工で0.1mmの誤差に拘っていれば、全く仕事にならないのだ。

そして、CMで製品を見ると、1mm程度の誤差があっても、全然問題のない物なのである。

 

図面には当然のことながら、寸法が書かれている。

だが、その寸法通りに必ず仕上げなければならない、ということではない。

図面には、寸法公差というものが存在するのだ。

 

たとえば、特に注意書きのない場合、図面では100mmと書かれていても、通常なら±0.5mmはOKという約束事である。

簡単に言えば、それが100.5mmだろうが99.5mmだろうが構わない、というわけだ。

そして、捨て寸法というものもある。

必要寸法が100mmで、両側に90°曲がったスポットしろ(スポット溶接する部分)が15mmずつあったとすると、100mmは±0.5mmを守らなければならないが、スポットしろの15mmを必ずしも守る必要はないのだ。

ハッキリ言って、スポットしろが14mmだろうが16mmだろうが、どうでもいい。

必要寸法の100mmさえ±0.5mmの範囲内に守っていればいいのだ。

 

そもそも、必要寸法が100mmで、両側にスポットしろが15mmという場合、どんな大きさの鉄板を使用すればいいのかご存知だろうか。

普通の人は、100mm+15mm+15mmで、合わせて130mmの鉄板と答えるだろうが、これは大間違い。

鉄板には伸び率というものがあって、それは板厚によって変わってくる。

たとえば、鉄板の板厚が1mmだったとすると、曲げの片側を8掛けで計算する。

1mmの8掛けだから、1回の曲げは片側が0.8mmとなり、曲げというのは片側だけでは成立しないから、1mmの鉄板の伸びは1回曲げで1.6mmとなるわけだ。

設問の場合、スポットしろが両側にあるのだから2回曲げとなり、鉄板の伸びは1.6mm+1.6mmで3.2mmになる。

つまり、必要な材料は1mmの鉄板の大きさは130mmではなく、100mm+15mm+15mm-3.2mm=126.8mmとなるのだ。

ところが、126.8mmなどという中途半端な寸法は、まず購入できない。

そういう鉄板を用意しようとすれば、レーザー加工などで可能だが、それだとコストがかかって仕方がないのである。

鉄板業者はシャーリング加工で鉄板を用意するのだから、0コンマ何mm単位の材料なんて、提供できないのだ。

そのため、126.8mmの鉄板が欲しい場合は、1mm以下は四捨五入して127mmの鉄板を発注する。

捨て寸法があるのに、0.1mmに拘ってコストの高い材料を買うのはアホである。

ましてや、絞り加工は曲げ加工に比べて遙かに寸法を出しにくいので、「0.1mmの誤差も見逃さない」など有り得ないのだ。

 

しかも、鉄板の材質は一定ではない。

この材質では伸び率が8.2割だったのが、別の材質では7.7割だったなんてことがよくある。

そのため、材質が変わった場合は試し曲げして、ある程度の伸び率を把握しなければならない。

その場合でも、捨て寸法を犠牲にするのは当然だ。

  

筆者は設計に携わる前、1年ほどスポット溶接やプレス・ブレーキなどの現場仕事を経験した。

そのときに、口を酸っぱくして言われたのが「図面に書かれている、どれが必要な寸法で、どれが捨て寸法なのか理解しろ」ということだった。

ハッキリ言うと、「0.1mmの誤差も見逃さない」方が楽なのである。

そのかわり、生産性が止まって、無駄な時間を過ごすことになるが。

図面通りの寸法に仕上げればいいのだから、何も考える必要はない。

図面は「見る」のではなく「読む」ことが肝心なのだ。

そのためには、図面に書かれている意味を、キチンと理解しなければならない。

 

もちろん、細かい寸法が必要なときもある。

その場合、図面に書かれているのが寸法公差だ。

たとえば、ある程度の精度が必要な場合は、図面に±0.2などと書かれている。

このときは、±0.5mmの誤差では困るので、誤差は±0.2mmに抑えてくださいよ、という意味だ。

あるいは、+0、-0.2などと書かれている場合もある。

このときは、図面で書かれている以上の寸法になっては困るが、小さい寸法なら-0.2mmまでOKですよ、ということだ。

こうして、作業者は図面を「読む」のである。

寸法公差を無視して「0.1mmの誤差も見逃さない」などと言って仕事が遅々として進まなければ、大きな損失となる。

おそらく「0.1mmの誤差も見逃さない」というキャッチコピーを考えた人は、モノ造りの現実を全く知らないのだろう。

 

さらにTN社は「日本のモノ造りを応援する」とCMで謳いながら、中国製の安いバイスを商品として使え、と我が社に言ってきた。

バイスというのは、要するに万力のような物だが、そこには作業台にネジで取り付けるための穴が空いている。

日本製のバイスは、穴ピッチにほとんど狂いはない。

0コンマ何mm程度の誤差はあるだろうが、穴は大きめに開いているので、特に不便はのである。

日本製のバイスを使用している限り、あらかじめバイスの穴ピッチに合わせた穴を、作業台の天板に開けておけば、それで良かったのだ。

 

ところが、中国製のバイスは、穴ピッチが無茶苦茶。

「0.1mmの誤差も見逃さない」どころか、数センチ単位で全てのバイスの穴ピッチがバラバラだったのである。

そのため、天板に開けた穴と合うバイスを、いちいち管理しなければならない。

AというバイスにはAという天板を、BというバイスにはBという天板とセットにして出荷しなければならなくなったのだ。

そのため、今までは図面通りの穴ピッチに天板にも穴を開けていれば良かったのが、わざわざ一つ一つのバイスの穴位置に合わせて、天板に穴を開けなければならなくなったのである。

このときの手間と費用は計り知れない。

 

しかし、そのことをTN社に訴えても、現場仕事など全く理解していないのだから、「(中国製の)安いバイスを使え」としか言わなかった。

こうして、親会社のTN社は潤っただろうが、その尻拭いを子会社が請け負ったのである。

しかも、それまでバイスを造ってきた日本の工場は、仕事を失ってしまった。

 

何が「日本のモノ造りを支援する」だ。

結局は、「0.1mmの誤差も見逃さない」などという美辞麗句の元に、日本の製造業を破壊したのである。