2013年度版の公認野球規則(ベースボール・マガジン社)が発売された。
ここ数年は特に大きなルール改正もなかったので、2009年度版以来は買わなかったのだが、今年は全面リニューアルとなったので久しぶりに購入した。
では、どんな点がリニューアルされたのか?
左が2013年度版、右が2009年度版の公認野球規則
上の写真を見て、どこがリニューアルされたかわかるだろうか。
表紙の色が違うのは毎年のことだが、一目でわかるのは大きさが違うということである。
右側の去年まで(写真では2009年度版)のサイズは、単行本でよく使用される170×109mm(この数字は僕が測った実寸で、公式の数字は違うかも知れない)。
左側の今年度版の大きさは166×129mm(同じく実寸)で、縦は4mm小さいが、横は20mmも大きく、日本の書物ではあまり見かけないサイズだ。
実はこのサイズ、原本であるアメリカの「Official Baseball Rules」と同じ大きさなのだ。
実はサイズ以外で、もっと大きな変更点がある。
アメリカ版と同じ大きさということだけでなく、アメリカ版と同じ左開きになった。
即ち、横書きになったのである。
去年までの公認野球規則は、日本の一般的な書物と同じく縦書きだった。
しかし今年の改訂版では、本場アメリカの原本に合わせて横書きとしたのだ。
さらに大きさまで合わせたことによって、去年度版以前よりもページ数が減っている。
横書きにした理由として、公認野球規則の冒頭に記されている「はしがき」には、
「(前略)現在の文書は横書きが主流であり、横書きが親しみやすいことから、思い切って規則書を横書きに変更した。そのほうが読みやすいし、またできるだけ見やすいような工夫も施したつもりでいる(後略)」
と書かれている。
横書きの方が親しみやすい、というのは、パソコンやワード文書が主流になったので、縦書きよりも横書きに接するケースが増えたからだろう。
だが、「横書きの方が(縦書きよりも)読みやすい」というのは、本当にそうだろうか。
漢字や仮名文字など東アジアで生まれた文字は、縦書き用に作られたもの。
従って、漢字や仮名文字を書くのはもちろん、読むのも縦書きの方が自然なのだ。
だから現在でも、日本の書物はほとんどが縦書きである。
もちろん、パソコンやワード文書によって横書きに慣れてきたのは事実だが、だからといって新聞が横書きになれば、ほとんどの日本人が戸惑うだろう。
でも、野球はアメリカ生まれのスポーツなので、その規則書も横書きに合わせるというのも一理ある。
去年までは漢数字だった規則番号が、今年からは算用数字になった。
例えば、去年までは「公認野球規則六・〇七(c)」という表記が、「公認野球規則6・07(c)」に変わったのである。
最近ではネット上で野球規則が書かれることが多いので、算用数字の方がたしかに表現しやすい。
今のところ、横書きと縦書きでどちらが読みやすいかはわからないが、おそらく来年以降も横書きになるに違いない。
パソコンがスタンダードになった以上、日本語でも横書きが主流だからだ。
ちなみに、日本ラグビーフットボール協会が発行している「競技規則(Laws of the Game)」も、以前からずっと横書きである。
普通の書物も、これからは横書きに移行するかも知れない。
そして、多くの野球関係者も今回のリニューアルを機に、公認野球規則を購入されたらいかがだろう。
選手はもちろん監督などの指導者、あるいは評論家や野球ライターなど、野球のルールを把握していない人は多い。
スポーツをプレー、あるいは指導したり、はたまた評論するときに、そのスポーツのルールを知らなければ、どうやって表現するのだろうか。
僕が知る限り、公認野球規則を持っている野球関係者(選手、指導者、マスコミなど)は実に少ない。
ファンとなると、もっと少数派だろう。
野球のルールは複雑なので、常日頃から公認野球規則とニラメッコしなくてもいい。
ただ、野球を見ていて、目の前のプレーでややこしいことが起きれば、公認野球規則と照らし合わせて見ればいいわけだ。
そうすれば、また新たな野球の見方を発見するに違いない。