現在は梅雨の真っ只中だが、7月の声を聞けば梅雨も明けて本格的な夏を迎える。
夏と言えば海、今回は大阪府と和歌山県との県境にある海にご案内しよう。
ただし、写真は全て2月下旬に撮影したものなので、夏の海になると雰囲気も変わるだろう。
赤い部分が大阪府南西部の岬町、青い部分が和歌山市の加太、緑の部分が友ヶ島
◎大阪府最南端の岬町
海に面した大阪府南西部の岬町は、大阪府で最南端の市町村でもある。
南海電気鉄道の南海本線が通じており、大阪ミナミの中心部・難波駅へは特急「サザン(自由席なら特急券不要、指定席なら指定券必要)」に乗って約50分で着く。
また和歌山市駅へも特急利用(同上)で約12分、関西国際空港にも近く、思った以上に便利だ。
海が見える遊園地として有名なみさき公園もあるので、行ったことがある人も多いだろう。
車利用の場合は第二阪和国道と呼ばれる国道26号線が通じており、こちらでも大阪市内や和歌山市内にはすぐに行くことができる。
2017年4月1日には第二阪和国道の一部、阪南市から岬町を通って和歌山市に至る自動車専用道路(無料)が全通し、和歌山市へ行くにはますます便利になった。
それではまず、第二阪和国道を通って岬町を散策しよう。
自動車専用道路が開通し、新たに「道の駅みさき 夢灯台」がオープンした。
この道の駅は第二阪和国道からは外れた所にあり、一般道からも利用できる。
道の駅みさき 夢灯台
中には「丘の上食堂」というフードコートがあり、また土産物や地元の農産物が売られている「産直市場よってって」という売店もある。
灯台を模した展望台からは、みさき公園や大阪湾を一望でき、天気が良ければ明石海峡大橋も望むことができるそうだ。
展望台から見た、みさき公園の大観覧車
道の駅みさきを離れて、旧国道26号線へ出てみよう。
みさき公園がある辺りから、和歌山市街へ行くことができる旧国道26号線と、海沿いを走る府道65号線(岬加太港線)に分かれる。
今回は府道65号線を走ることにする。
ちょうどここは南海本線のみさき公園駅から南海電鉄の多奈川線に分かれる分岐点だ。
難波駅や和歌山市駅への直通の電車もなく、この4駅を行ったり来たりするだけの、完全なローカル線だ。
岬町内を走る南海多奈川線
このローカル線が必要なのかと思うぐらい、みさき公園駅から終点の多奈川駅まであっという間(約6分)に着く。
電車の本数は基本的に、1時間に2本(多くても3本)、本当に利用する人がいるのかと思ってしまう。
道路も並行して走っているのだから、需要はほとんどないだろう。
いつ廃線になるかも知れないので、鉄ちゃんなら今のうちに行っておいた方がいいかも知れない。
ひっそりとした多奈川駅の駅前
多奈川駅を出てさらに車を走らせていると、海が一望できる道路となった。
すると、海に突き出た部分に妙な建築物がある。
なんだ、あの奇妙な鯉のぼりみたいなのは!?
海に突き出た、妙な建築物
近くまで車を走らせていると、なんとまた道の駅があった!
岬町には2軒も道の駅があるのか。
しかも、この道の駅は「道の駅・海釣り公園『とっとパーク小島』」という名称で、つまり道の駅が釣り場になっているのだ。
せっかくなので、ここにも入ってみよう。
道の駅・海釣り公園『とっとパーク小島』
中に入ってみると、さすがに海近くの道の駅らしく水槽に入った海産物が売られている。
さらに奥へ行くと小ぢんまりとした売店があり、そこから外へ出ると桟橋のようになっていた。
桟橋を抜けると、あった!
さっきの奇妙な建造物の正体は、これだったのか!!
あの妙な鯉のぼりの中は「とっと食堂」およびレストハウスになっており、ちょっとした食事ができるようになっている。
釣りをする前か後か、釣り人が腹ごしらえをするらしい。
奇妙な建造物の正体は「とっと食堂(上)」とレストハウス(下)
なお、釣り桟橋は有料となっており、それでも釣り人にとっては人気スポットのようで、2月の寒い時期にもかかわらず大勢の人が海釣りを楽しんでいた。
筆者は釣りの趣味はないので、釣り桟橋には入らなかった。
大勢の人が海釣りを楽しむ『とっとパーク小島』の釣り桟橋
◎和歌山市・加太と、その向こうに見える無人島の友ヶ島
『とっとパーク小島』を出て再び府道65号線を走ると、まもなく和歌山市内に入った。
和歌山県内に入ると、府道65号線(岬加太港線)は県道65号線(岬加太港線)と名称を変える。
和歌山市内とはいえ、県庁所在地とは思えないほどの田舎風景だ。
ずっと海沿いを走っていたが、県道65号線は急に内陸部へと入り、長いトンネル(大川トンネル)を通る。
トンネルを抜け、しばらく走っていると、加太海水浴場に出た。
この辺りは和歌山市の加太という地区で、加太とは「かだ」と読む。
中学生の時、たしか初夏の頃だったと思うが、ここへ遠足で行ったときに潮干狩りをしたのを憶えている。
加太には加太温泉や淡嶋神社もあり、特に夏になると大賑わいだ。
加太海水浴場
宿泊施設もある加太温泉
加太海水浴場の隣りには加太港があった。
加太港は単なる漁港ではなく、客船も運行されている。
客船の行先は友ヶ島だ。
友ヶ島とは、和歌山市と淡路島の間にある、紀淡海峡に浮かぶ島である。
なお、淡路島は兵庫県だが、友ヶ島は和歌山県(和歌山市)に所属する島だ。
淡路島と友ヶ島は目と鼻の先であり、即ち兵庫県と和歌山県は海上とはいえ隣接しているわけで、和歌山県の隣りに兵庫県があるというのはピンと来ないだろう。
関東で言えば、神奈川県の三浦半島と千葉県の房総半島が隣接しているようなものか。
友ヶ島と言っても、そんな島は知らないという人も多いかも知れない。
しかし、なぜ無人島に客船を走らせているのだろう。
そもそも、実際には友ヶ島などという島は存在しない。
友ヶ島とは地ノ島、沖ノ島、虎島、神島という4島の総称である。
このうち、神島は非常に小さく、虎島は沖ノ島とほとんど陸続きなので(陸繋島)、事実上は地ノ島と沖ノ島の2島と考えてよい。
このうち、加太港から客船が行き着く先は沖ノ島のみで、地ノ島には航路がない。
沖ノ島は、知る人ぞ知る観光スポットなのだ。
沖ノ島には、旧日本軍の砲台跡があり、明治時代から太平洋戦争までは重要な軍事要塞施設だった。
そのため、一般人の立ち入りは禁止されていたのである。
現在では砲台跡を訪れる人が多く、そのため沖ノ島への客船の航路があるというわけだ。
また、江戸時代以前は修験道だったという。
友ヶ島は無人島ながら、昔から近代まで重要な位置づけとされていたわけだ。
筆者はまだ友ヶ島には行ったことはないが、ぜひ一度行ってみたい島である。
なお、加太港からは友ヶ島汽船が運航されており、大人は片道1,000円、約20分で沖ノ島に着く。
友ヶ島。左(西)が沖ノ島で、右(東)が地ノ島。遠くに見える薄い稜線が淡路島
地ノ島
加太港を離れ、今度は県道7号線(粉河加太線)に入り、和歌山市街方面へ車を走らせる。
まもなく加太駅に着いた。
加太駅と、さっき通った多奈川駅を、県道65号線沿いに線路を繋ごうと思えばできるのだろうだが、そうはしなかったらしい。
おそらく需要がないのだろう。
多奈川駅と加太駅の位置関係
加太線は紀ノ川駅を含めて全8駅で、多奈川線に比べると利用客も多い。
また和歌山市駅まで直通運転しているので、利便性も良さそうだ。
最近では「めでたいでんしゃ」という、鯛を模したピンク色の電車も走っている。
なお、加太駅は和歌山県内で最西端の駅だ。
南海加太線の終着駅、加太駅。駅前にはタクシー乗り場や商店もある
これで岬町~加太を巡る旅はおしまい。
このまま県道7号線を東へ走ると和歌山市街に出る。
途中で旧国道26号線とぶつかるのでそこを左折、つまり北上して大阪方面へ走ると、途中の和歌山大学近くにはイオンモール和歌山がある。
広いショッピングセンターなので、そこで買い物をしてから帰路に就くのもいいだろう。