先日、出題した日本の県名クイズの解答編である。
読み方と現:都道府県名がそれぞれ5点、全20問の100点満点で自己採点してくれたまえ。
①神戸県
読み方=かんべ
1871年(明治4年)7月の廃藩置県によって、神戸藩が改称され神戸県が誕生。
しかし、同年の11月には神戸県を含め6県と合併して安濃津(あのつ)県となり、神戸県は僅か4ヵ月の命だった。
安濃津県は翌1872年(明治5年)4月に三重県と改称され、1876年(明治9年)4月に渡会(わたらい)県と合併して、三重県は現在の姿となる。
なお、神戸県は兵庫県神戸市とは全く関係がない。
②宮谷県
読み方=みやざく
明治維新まもない1868年(慶應4年)に府藩県三治制が施行、翌1869年(明治2年)2月に令制国の安房(あわ)国・上総(かずさ)国・下総(しもうさ)国・常陸(ひたち)国の旧幕府領および旗本領だった部分を宮谷県として発足した。
1871年(明治4年)11月には安房国と上総国の地域を木更津県(現在の千葉県)、下総国と常陸国の部分を新治(にいはり)県(現在の千葉県と茨城県)に移管。
宮谷県は2年9ヵ月で消滅した。
③足羽県
読み方=あすわ
1871年(明治4年)7月の廃藩置県によって、福井藩が福井県となる。
しかし、同年の12月に福井県は足羽県と改称された。
ところが1873年(明治6年)1月、敦賀県に合併され、足羽県の命も儚いものとなる。
その後、敦賀県は1876年(明治9年)8月にお隣りの石川県に合併されるなど不遇の時代を送り、1881年(明治14年)2月にようやく福井県として独立した。
もし足羽県がもう少し頑張っていれば、福井県は今ごろ足羽県という名称になっていたかも知れない。
④厳原県
読み方=いづはら
江戸時代は対馬府中藩と呼ばれ、対馬国および肥前国の一部を統括する藩だったが、明治維新になって1869年(明治2年)に行われた版籍奉還によって厳原藩と改称。
1871年(明治4年)7月の廃藩置県によって、厳原藩は厳原県となった。
しかし同年の9月には佐賀県と合併して伊万里県となり、厳原県はたった2ヵ月の短命県となる。
この地域は⑧でも登場するが、実に紆余曲折の運命を辿った。
⑤櫛羅県
読み方=くじら
1871年(明治4年)7月の廃藩置県によって、櫛羅藩が改称され櫛羅県が誕生。
しかし同年11月、櫛羅県は奈良県に吸収されて、無駄に画数が多いのに4ヵ月でアッサリ消滅。
奈良県はその後、1876年(明治9年)4月には堺県に編入されて姿を消す。
1881年(明治14年)2月には大阪府の管轄となるなど苦難の道を歩み、ようやく奈良県として再び独立したのは1887年(明治20年)4月のこと。
なお、櫛羅県は海なし県なのになぜ「くじら」なのかは不明。
⑥生実県
読み方=おゆみ
現:都道府県名=千葉県
1871年(明治4年)7月の廃藩置県によって、生実藩が改称され生実県が誕生。
しかし同年11月、生実県は印旛県に編入、例によって4ヵ月で消え去った。
1873年(明治6年)2月に印旛県は木更津県と合併して千葉県となり、現在の原型が出来上がった。
⑦磐前県
読み方=いわさき
1871年(明治4年)7月の廃藩置県によって誕生した6県が合併して、同年11月に平県が発足、その後まもなく磐前県と改称された。
1876年(明治9年)4月には宮城県の一部が磐前県に編入。
同年8月に磐前県は福島県や若松県と合併、現在の福島県とほぼ同じ形になる。
その際、宮城県から編入された地域は宮城県に戻され、磐前県南部の一部は茨城県に移管した。
⑧三潴県
読み方=みずま
1871年(明治4年)7月の廃藩置県によって誕生した久留米県、三池県、柳川県が合併して、同年11月に三潴県が発足。
1876年(明治9年)4月には佐賀県を吸収合併、佐賀県は消滅した。
同年8月、三潴県の旧・佐賀県部分は長崎県に編入され、残りは福岡県に併合されて、三潴県はその役目を終える。
なお、長崎県から分離して佐賀県が復活したのは1883年(明治16年)5月のこと。
薩長土肥の一角を担う佐賀県がこれだけ冷遇されたのは、薩摩の鹿児島県と共に政府から難治県とマークされ、さらに1874年(明治7年)に勃発した佐賀の乱が原因と言われている。
⑨母里県
読み方=もり
1871年(明治4年)7月の廃藩置県によって、母里藩が改称され母里県が誕生。
同年11月、母里県は松江県、広瀬県、浜田県の一部(隠岐国)と合併して島根県となり、母里県は姿を消した。
ちなみにその後、島根県は浜田県だけでなく鳥取県をも併合するなど大県となり、鳥取県と分離して現在の姿になったのは1881年(明治14年)9月のこと。
なお、母里藩は江戸中期まで、①と同じく神戸藩と呼ばれていた(読みも同じ)。
⑩胆沢県
読み方=いさわ
1869年(明治2年)8月、陸前国と陸中国にあった伊沢県および栗原県の一部区域に胆沢県を設置した。
戊辰戦争で敗れたこの地域は明治政府に没収されたため、廃藩置県より早い時期に県を発足させたのである。
1871年(明治4年)11月、胆沢県は一関県に統合され、2年強で消滅してしまう。
その後、一関県は水沢県や磐井県などと改称し、やがて宮城県と岩手県に分割編入された。
【総括】
上記の各設問を読んでとっくにお気付きだと思うが、明治政府により1871年(明治4年)7月に断行された廃藩置県では、江戸時代に存在した藩をそのまま全て県としたのだ。
これはもちろん、欧米列強に対抗する必要性から、強力な中央集権国家の建設が急がれたためである。
実は廃藩置県より前の1868年(慶應4年)、即ち明治政府が樹立した年に府藩県三治制が施行され、旧幕府の領地に3府(東京府、京都府、大阪府)41県が誕生していた。
そして3年後の廃藩置県により誕生した県を合わせると、実に3府302県が存在していたのだ。
現在の47都道府県と比べると約6.5倍である。
もしこの頃に生まれていたなら、地理の時間は県名を暗記するだけでも大変だっただろう(もっとも、当時の日本にはまだ学校制度はなかったが)。
さらに、当時にもし高校野球まであって1県1代表制だったら、305校が甲子園に集い、304試合も行っていたことになる。
しかし、廃藩置県では計画性もなく取り敢えず藩を県に置き換えただけなので、さすがにこれでは統制が取れず、4ヵ月後には3府72県と約1/4に激減、江戸時代までの行政区分だった令制国とほぼ同じ数となった。
これはもちろん、小さい県同士を合併させたためで、上記クイズでも多くの県が4ヵ月で消滅している。
75府県でも現在よりずっと多いが、統廃合がさらに進められて、1876年(明治9年)8月には3府35県と現在よりも少なくなってしまった。
38府県は約3年間続いたが、当時は交通網も発達しておらず、鉄道も東京周辺や大阪周辺に限られていたため、あまりに県域が広すぎると県庁への手続きなどで住民に大きな負担を強いることになったので、今度は県の分割が行われるようになった。
明治時代での、県の改編が終了したのは1888年(明治21年)で、3府43県と現在にほぼ近い形となったのである(北海道はまだ府県と同格ではなかった)。
さて、自己採点の結果はいかがだっただろうか。
もし全問正解の者がいたら、その人はバケモノである。
なお、予告したとおり、40点以下の赤点坊主は追試を行う(てか、ほとんどの者が赤点だろう)。
追試
⑪日出県
⑫伯太県
⑬置賜県
⑭菰野県
⑮飫肥県
解答は写真の下に記載している(写真と答えは関係ない)。
【解答】
⑪日出県
読み方=ひじ
1871年(明治4年)7月の廃藩置県によって、日出藩が改称され日出県が誕生。
同年11月、日出県を含む8県と合併して大分県となった。
⑫伯太県
読み方=はかた
1871年(明治4年)7月の廃藩置県によって、伯太藩が改称され伯太県が誕生。
同年11月、伯太県は堺県に吸収されて4ヵ月で消滅した。
1881年(明治14年)2月、堺県は大阪府に編入される。
なお、現在でも大阪府和泉市には伯太町という地名があって、その近くには陸上自衛隊があり、自衛隊があるということは夜の街が(ry。
⑬置賜県
読み方=おきたま
1871年(明治4年)7月の廃藩置県によって、米沢藩が改称され米沢県が誕生。
同年11月、米沢県は置賜県と改称した。
1876年(明治9年)8月、置賜県、山形県、鶴岡県が合併して、現在の山形県となる。
⑭菰野県
読み方=こもの
1871年(明治4年)7月の廃藩置県によって、菰野藩が改称され菰野県が誕生。
しかし同年の11月、菰野県や①の神戸県を含め6県と合併して安濃津(あのつ)県となり、菰野県は僅か4ヵ月の命だった。
安濃津県は翌1872年(明治5年)4月に三重県と改称され、1876年(明治9年)4月に渡会(わたらい)県と合併して、三重県は現在の姿となる。
現在の三重県菰野町には菰野高校があり、甲子園にも何度か出場しているので、読み方は知っている人が多いかも知れない。
⑮飫肥県
読み方=おび
現:都道府県名=宮崎県
1871年(明治4年)7月の廃藩置県によって、飫肥藩が改称され飫肥県が誕生。
1873年(明治6年)1月、都城県は美々津(みみつ)県と合併して宮崎県となる。
しかし1876年(明治9年)8月、宮崎県は鹿児島県に吸収され、消滅してしまった。
⑧でも説明したとおり、旧・薩摩藩の鹿児島県は明治政府から要注意県と警戒されており、鹿児島県による宮崎県併合もその一環だったが、翌1877年(明治10年)2月には明治政府が危惧したとおり西南戦争が勃発、旧・宮崎県地域も戦禍に巻き込まれてしまった。
宮崎県にとってはとんだトバッチリだったが、消滅から10年後の1883年(明治16年)5月9日に宮崎県はようやく独立を果たした。
実はこの日、富山県と佐賀県も他県から分離・独立を果たしており(富山県は石川県から、佐賀県は⑧参照)、この3県にとって5月9日はインディペンデンス・デイである。
【自己採点】
では、読み方を10点、現:都道府県名を10点で自己採点してみよう。
100点満点中50点以上なら進級、40点以下なら留年とする。