野球はチームスポーツである。
従って、何よりもチームの勝利が優先されるし、優勝こそが選手にとって最大の喜びであることは言うまでもない。
ところが、プロ野球ではこの原則が当てはまらない。
優勝しても活躍できなければ減俸、あるいはクビになるし、最下位でも個人が活躍すれば年俸は上がる。
なぜなら、プロ野球選手はサラリーマンではなく、個人事業主だからだ。
セントラル・リーグ最下位は東京ヤクルト スワローズだったが、同チームでシーズン本塁打日本新記録を達成したウラディミール・バレンティンはMVPを獲得したし、さらに大幅な年俸アップを勝ち取るに違いない。
その反面、日本一になった東北楽天ゴールデンイーグルスでは、活躍できなかった選手には戦力外通告を突き付けられたのだ。
その選手の一人が河田寿司(かわた・ひさし)である。
実は、僕には河田寿司とはちょっとした因縁がある。
2005年の秋、ドラフトで河田寿司は楽天に4巡目指名された。
ちょうどその頃、僕は週刊ベースボール(週べ)の、ボールパーク共和国(ボ共)というコーナーに、投稿をし始めていた。
この時の僕は「寿司」という名前を、文字通り”ネタ”にできるのでは?と考えたのである。
きっといる
●「河田寿司って、寿司屋かい!」と思った人。
●東北楽天はドラフト会議場が寿司屋だと勘違いしたと思った人。
●「ドラフトで寿司を注文してどうする!?」と思った人。
でも、どれもしっくり来ない。
やがて、ハタと思い付いた。
これなら、いけるのではないか!?
●きっといる
「河田寿司」
という名前を見て、
「選手を取らずに、出前を取ったのか?」
などとツッコミを入れた人。
このネタは、週べの2005年12月26日号で、見事にボ共の最優秀国民に選ばれた。
僕にとって、初めての最優秀国民である。
このネタを活かすことができたのは、ドラフトで「選手を”取る”」ということと、寿司屋で「出前を”取る”」ということを引っ掛けたからである。
このフレーズを考え付いた時、最優秀国民はともかく、最低でも優秀国民を獲得するだろうと確信した。
さらにこのネタは、当時の楽天がどうしようもなく弱かったからこそ成立したネタだ。
もし、現在のように強い楽天だったら、このネタは成り立たない。
イジリようがないのだ。
弱い楽天だからこそ「ドラフトで、選手ではなく出前を取る」というネタが成り立つのであり、仮に強いチームが「○○寿司」という選手をドラフト指名しても、面白くもなんともない。
この頃の楽天は、球団削減騒動の最中にやむなく誕生した、どうしようもない弱小球団だった。
もちろん、この年はダントツの最下位で、しばしばボ共ネタにされていた。
まさしく、天の配分があったのである。
それ以降、ボ共では「河田寿司ネタ」がブームとなった。
僕としてはネタをパクられたようなものだが、悔しい気持ちは全くなかった。
むしろ、僕のネタがきっかけになってブームになったのは、実に嬉しかったのである。
ただ、ボ共で「河田寿司ネタ」が流行りだすと、河田寿司本人は「コンプレックスを感じている」とウィキペディアでは書かれており、僕としては少々申し訳なく思っている。
僕の投稿が初めて最優秀国民に選ばれて、あれからもう8年も経ったのかと思うと感慨深い。