先日、我が家の風呂がブッ壊れてしまった。
実は昨年の4月頃、給湯器にエラーが出て、その時は知り合いの電気屋さんに対処方法を聞いて事なきを得たが、電気屋さんからは「次にエラーが出たら、買い替えなアカンかも知れまへんな」と言われていたのである。
そして、約1年経ってエラーが出たので「遂に来るべきものが来たか」という感じだった。
例の電気屋さんからは最後通達、つまり買い替えが必要だと言われたのだ。
修理も可能だが約10万円もかかり、修理してからすぐ故障して買い替えでは10万円をドブに捨てるようなものである。
それならばと、約40万円もかかってしまうが、買い替えを選択した。
もっとも、家に配管などの穴を開ける必要はないので、最初からの工事に比べると幾分かは安いそうだが。
問題なのは、土日を挟むため工事完了まで4日間ぐらいかかるということだ。
つまり、4日間も風呂なし生活を余儀なくされる。
場合によっては、5日ぐらいはかかるかも知れないという。
恐ろしいほどの体臭に悩まされそうだ。
そんなこと、とても耐えられそうにない(自分が、というより周りの人が)。
初日はいきなりの出来事だったので、やむなく風呂なしとなった。
何しろ、風呂場はお湯どころか水も全く出ないのだから、シャワーすら浴びることはできないのだ。
風呂場以外は水こそ出るものの、お湯は出ない。
それでも洗髪ぐらいはしておきたかったので、洗面所の冷たいシャワーでシャンプーする。
何しろ梅雨の真っ只中、非常に寒かった。
それにしても、入浴なしの日など何十年ぶりだろう。
2日続けて風呂なしは無理なので、翌日は銭湯へ行くことにした。
と言っても、我が家があるのは新興住宅地なので、銭湯などあるわけがない。
考えてみれば筆者は、ずっと団地や新興住宅地で育ったので、銭湯に行くという習慣がなかった。
銭湯へ行くのは、既に亡くなった祖母の家へ遊びに行った時ぐらいである。
祖母の家には風呂はあったものの、壊れていたので銭湯へ行かざるを得なかった。
しかし、滅多に入ることができない大浴場、むしろ銭湯を楽しみに祖母の家へ行っていたようなものだ。
当時はスーパー銭湯なんてなかったので、行っていたのは昔ながらの銭湯。
暖簾がかかっている、これぞ「ザ・銭湯」という感じで、情緒があったのを憶えている。
周りは古い家が多かったため(祖母の家の便所も汲み取り式)銭湯は必要で、また近くに近畿大学があったので、独り暮らしの学生なども銭湯を利用していたようだ。
家の風呂と違い、銭湯は広々としていて気持ちが良かった。
風呂上がりに飲んでいたコーヒー牛乳の味が忘れられない。
大人になって、別の銭湯に入った時は、
「この銭湯、ずいぶん狭いな。祖母の家の近くの銭湯は、もっと広かったのに」
と思ったのだが、よくよく考えてみれば子供の頃は体が小さかったので銭湯が広く感じただけで、大きくなってから入ると狭く感じるのは当たり前なのだが。
思わぬ昔話になったが、話を元に戻すと近所に銭湯がないので車に乗って行ったのが、大阪府羽曳野市にあるスーパー銭湯「延羽の湯」だ。
駅からは遠く離れたヘンピな場所にあるのだが、隣りには「123」という巨大なパチンコ屋がある。
関西人には結構有名なパチンコ屋で、郷ひろみがテレビCMに出演したので知られるようになった。
この「延羽の湯」とパチンコ「123」は、同じ延田グループなのだ。
金曜日の夕方、「延羽の湯」の駐車場に車を停めて館内に入ろうとすると、自転車に乗った部活終わりらしき男子高校生が2人「延羽の湯」に入って行った。
今時の高校生は、学校の帰りにスーパー銭湯へ立ち寄るのか。
そもそも、大浴場に入るのは何年ぶりだろう。
銭湯やスーパー銭湯はもちろん、温泉旅行すら近年は行っていないので、大浴場なんて本当に久しぶりだ。
10年ほど前に東京へ行った時、新宿にある1泊3,800円という格安のビジネスホテルに泊まったことがあるが(素泊まり)、そのホテルは部屋にユニットバスすらなくて共同の大浴場があるのみだったが(トイレも共同)、その時以来か。
とりあえず入館したが、勝手が全く判らない。
てっきり入浴券を買うのかと思ったが、券売機が見つからず、どうすればいいのか往生してしまった。
すると、脱いだ靴を入れるロッカー(無料)のキーをフロントに預けてください、という貼り紙を発見したので、靴をロッカーに入れてキーをフロントに持って行った。
そこで番号の書かれた脱衣所のロッカーのキーを渡されたが、支払いは入浴後だという。
ちなみに入浴料は大人850円で、フェイスタオルを無料で貸してくれる。
キーとタオルを受け取り、浴場を探したがどこにあるのか判らないほど館内は広かった。
ようやく男湯を見つけ、久しぶりの大浴場を味わうことに。
結構、客も多かったが、金曜の夜にすれば少ないかも知れない。
やはりコロナが影響しているのか。
中も広くて気持ち良かったが、筆者は長湯を楽しむタイプではないので、850円で利用するのはもったいないかも。
それに、早く帰って原稿を書かなければならなかったので、あまりノンビリもしていられない。
とはいえ、せっかく来たのだからと露天風呂は味わうことにした。
露天風呂のスペースはかなり広く、しかも幾つもある。
しかし、この時期だから仕方がないが、虫の死骸が浮いていたので、すぐ出て内湯に入り直した。
やはり露天風呂は冬が一番か。
と言っても、冬の露天風呂は寒いのだが。
サウナも苦手だし、早く帰る必要もあったので、サウナには入らず出ることにした。
風呂を出ると、子供の頃のコーヒー牛乳と違って、生ビールをジョッキで一気飲みしたいところだが、コロナのさなか酒類は提供していまい。
もっとも、ビールを販売していたところで、車なので呑むことはできないが。
ともかく、銭湯生活の1日目は終わった。
翌日の土曜日は、昼から買い物も兼ねて奈良県へ。
奈良県は車で行くと我が家から結構近く、また安いスーパーやガソリンスタンドがあるので、よく利用する。
そこで行ったスーパー銭湯が、橿原市のイオンモール近くにある「橿原ぽかぽか温泉」(そのままのネーミング)。
ここは「延羽の湯」と違い、券売機でチケットを買う必要がある。
入浴料は大人750円で、「延羽の湯」より100円安い(平日は700円)。
ただし、フェイスタオルの無料貸し出しはなく(もちろんバスタオルも)、タオルを忘れた人は有料で借りるか、買わなければならない。
中の付帯施設は「延羽の湯」ほど多くなかったが、内湯の広さは引けを取らなかった。
ただし、カランとシャワーの場に置いてあるのは、ボディーソープとリンスinシャンプーだけ。
「延羽の湯」ではボディーソープの他に、シャンプーとコンディショナーをそれぞれ置いており、洗顔用ソープまであった。
とはいえ、「延羽の湯」もそうだったが、洗髪後に髪がきしむことなく、肌荒れもしなかったので、そこそこのシャンプーを置いているようだ。
最近の客は、シャンプーには敏感で、石油系の安いシャンプーを使っていると一発で見抜かれるので、シャンプーには気を遣っているのかも知れない。
今回は、来る前の朝に脱稿していたので、少しはノンビリと入浴することにした。
長湯をしても値段は同じなのだから、楽しまなければ損だ。
露天風呂もあり、「延羽の湯」ほど数は多くなかったが、湯に虫も浮いてなかったのでゆっくり浸かった。
内湯にはジェットバスが幾つもあり、これは気持ちいい。
ただ、今回はサウナにも入ってみたが、こちらは熱かったので(当たり前だが)すぐにギブアップ。
入浴が終わり、ここは緊急事態宣言のない奈良県なのでビールを販売していたが、車のためもちろん呑めない。
もし、誰かに運転してもらえるのなら、熱いのを我慢して汗を体内から完全に絞り出すぐらい長時間サウナに入っていただろう。
その後の生ビールは、さぞかし旨いに違いない。
家に帰ると、土曜日にもかかわらず電気屋さんが特別に来てくれて、工事をしていた。
そしてなんと、その日の夜遅くには風呂に入れる状態になるという。
つまり、日曜日には銭湯に行く必要がなくなったわけだ。
ひょっとすると、月曜日も銭湯へ行かなければならないかもと覚悟していたので、これは嬉しかった。
こうしてみると、家に風呂があるというのがいかに有り難いことか判る。
スーパー銭湯の入浴料を平均800円とすると、1ヵ月で24,000円。
3人家族だと、実に72,000円もかかる。
普通の銭湯だと大阪府の場合、大人の入浴料は450円だそうだ。
スーパー銭湯に比べると約半額だが、それでも1人1ヵ月で13,500円、3人家族だと1ヵ月40,500円である(割引となる回数券はあるが)。
そもそも、現在では銭湯の数は激減している。
いずれにしても、水道料金と光熱費を考慮していないとはいえ、3人家族の場合スーパー銭湯だと半年の6ヵ月で432,000円、普通の銭湯でも10ヵ月で405,000円と、1年も経たずに今回の工事費の40万円を超えてしまうのだ。
それだけではなく、家に風呂があると時間を選ばない。
筆者の家のように、銭湯が近くにないと、車を飛ばしてはるばるスーパー銭湯へ行く必要がある。
ガソリン代もかかるし、何よりもタイム・イズ・マネーの考え方からすると時間のロスは大きな損失だ。
しかも、銭湯の場合は営業時間外には入浴できないが、家に風呂があるといつでも好きな時間に入浴できる。
それに、昔に比べると今の風呂は格段に進歩した。
筆者が幼少の頃の風呂は、まず湯船に水を貯める必要があったが、それを監視していないと水が溢れてしまう。
水を貯めてからガスで風呂を沸かすが、沸き上がるまで40分ぐらいはかかっていた。
もちろん、ガスを止めるのを忘れていると、お湯が異常に熱くなってとても入浴できなくなる。
それでも、ガスで沸かすようになってからは、かなり便利になったに違いない。
それ以前は薪で風呂を沸かしていたのだから、相当大変だっただろう。
何しろロシア人は「月曜日はお風呂を焚いて、火曜日にお風呂に入」っていたのだから。
しかし、何のために1日前から風呂を沸かしていたのだろう?
ただでさえロシアは寒いのに、お湯は冷めなかったのだろうか。
しかも、このロシア人女性は1週間に一度しか風呂に入っていなかったようだ。
(この歌の解釈については、こちらをどうぞ↓)
それはともかく、今の風呂はスイッチ一つで適温・適量のお湯が貯まる。
風呂が沸くのも5分程度なので「風呂に入りたいな」と突然思い付いたら、ほとんど待つことなく入浴できるのだ。
しかも、筆者の家の風呂がガスから電気給湯器に移行した頃は、夜遅くになるとお湯が不足して入浴できなくなったが、今ではそんなことはない。
昔は、寒い冬に夜遅く帰宅して、風呂でも入って温まろうとしてもそれすらできなかったのだ。
故障して気付いた、家に風呂がある有難味を噛みしめながら、日曜日は我が家の風呂を堪能しよう。