今日(12月13日)、アメリカン・フットボールの大学王座決定戦である毎日甲子園ボウルが阪神甲子園球場で行われ、関西大学が法政大学を50−38で破り、実に62季ぶりの甲子園制覇を果たした。
甲子園ボウルを甲子園で行うのは3年ぶり、なんて書き方をするとややこしいのだが、ここ2年は甲子園が改修工事を行っていたため、甲子園ボウルを大阪・長居スタジアムで行っていたのである。
甲子園ボウルは今年から方式が変わり、それまでは関東と関西の学生王者決定戦だったのが、全国に門戸を拡げて全国大会とし、その決勝戦が甲子園ボウルとなったのである。
だが、関東および関西と、地方の大学リーグではレベルの差が歴然としており、今年は順当に関東×関西対決となったわけである。
普通の大学スポーツではほとんどが東高西低だが、唯一アメフトでは西高東低と言っても過言ではない。
今年の関大の勝利によって、過去10年間の甲子園ボウルにおける東西対決の勝敗は関西勢の7勝3敗。
ちなみに、大学アメフトと同じく東西対決が色濃い大学ラグビーでは、24年連続で関東勢が優勝している。
そもそも、今季の関大の快進撃は突然変異のようなものだ。
去年の関西リーグでの関大は、3勝4敗の5位。
62季ぶりの甲子園制覇と書いたが、甲子園ボウル出場自体が61季ぶり。
関西のアメフト界でも、とても強豪と言える存在ではなかった。
一方の法大は、ここ10年間で8度も関東を制して甲子園ボウルに出場している、関東きっての強豪。
今年の練習試合でも法大が関大を圧倒したということもあって、格の上では法大が遥かに上だった。
だが、フタを開けてみれば関大の勝利。
関西リーグでの厳しい戦いを経て、関大は確実にレベルアップしたということだろう。
たしかに関西リーグには強豪校が集い、お互いの腕を切磋琢磨した歴史があった。
関西リーグの厳しい戦いにより、関西アメフトのレベルが上がったのは間違いないだろう。
だが、大学アメフト界でも、東高西低の時代があった。
1980前後の、日本大学の戦いぶりである。
故・篠竹監督率いる日大は、独自のショットガン戦法を開発し、関西勢を圧倒した。
この頃の関西の雄は、関西学院である。
関学は日大に打ち勝つために、アメリカからショットガンを導入した。
こうして日本のアメフト界はショットガン全盛となるが、異質の集団が表れた。
それが京都大学である。
スポーツには縁がない京大だが、アメフトは大学から競技を始める者が多く、他のスポーツに比べてハンデは少なかった。
そこで京大の水野監督は、ラグビー経験者などを集めて、アメフト部に引き入れて英才教育を行ったのである。
素人集団と呼ばれた京大はたちまち頭角を現し、関西リーグを制して、遂には甲子園ボウルで最強の日大をパワーで粉砕した。
その後も京大の快進撃は続き、特に日本史上最高のクォーター・バックと言われる東海辰弥がいた頃は、日本史上最強チームとも言われた。
関学と京大とのライバル関係も特筆され、関京戦は関西の黄金カードと呼ばれた。
この関京戦が関西アメフト界のレベルを引き上げたと言っても過言ではない。
京大の水野監督は、
「ウチの選手は、関学戦のときに一番燃える。これが甲子園ボウル、ライスボウル(社会人王者と対戦する日本選手権)と進むたびに、テンションが下がる」
と言っていた。
関西リーグは、関学と京大の二強が競り合うことで、レベルをアップさせてきた。
さらにここに、立命館大学が絡んできて、三強時代となった。
ただ、ここへ来て京大がさすがに国立大学の苦しさからか、優勝は難しくなってきた。
関西リーグは関学と立命の二強時代になると思われていたが、関大の思わぬ快進撃である。
昨年までは、関大が甲子園制覇、いや甲子園出場すら予想していた者はいなかっただろう。
一方、関西のラグビー界では関学が二連覇を果たした。
これも数年前までは考えられなかったことだ。
関学なんて、ラグビー界では全く注目されていなかった。
去年、関学がラグビーの関西リーグ制覇を果たした時は
「アメフト部から助っ人を呼んだの?」
と思ったぐらいだった。
関西の名門私大である「関関」に、何か変革が起こっているのだろうか。