ダン・ミセリ(巨人)
意外にもこのコーナーで投手としては初登場。
やはりダメ外人といえば「三振かホームランか」というタイプが多いからかもしれない。
それに、外国人助っ人というと、パワーのある打者を求めがちだから、投手よりも打者の助っ人が多いからだろう。
このミセリはメジャーでリリーフとして活躍したのち、2005年に巨人に入団。
当時はクローザー不在が最大の課題だった巨人にとって、抑えとしてのまさしく救世主と思われた。
ところが、キャンプやオープン戦では全く調子が上がらず、巨人首脳陣や巨人ファンは「もしやダメ外人では……?」という不安を抱いたが、当の本人は「開幕までには完璧に仕上げるさ」といたって呑気に構えていた。
ところがシーズンに入ってからの投球は悲惨そのもの。
僅か3イニング足らずで被安打9(内1本がサヨナラヒット)で被本塁打が3本という大惨事。
このホームラン数の多さを、ミセリ本人はこう説明している。
「リトルリーグみたいな狭い球場で野球をやっているからだ」
日本の球場もズイブン偉くなったものである。
ミセリが打たれたホームランのうち、2本は東京ドーム、1本は横浜スタジアムだ。
東京ドームが開場したのが1988年。
当時は日本唯一の国際規格を満たした広い球場だともてはやされたものだ。
それまでの日本の本拠地球場は両翼90mそこそこだったが、東京ドームは両翼100m。
これならメジャーの球場にもヒケをとらないと思われていた。
そして横浜スタジアムも両翼94mと当時の日本の球場にしては広く、フェンスも高かったのでホームランが出にくい球場と言われた。
それが20年近くたつと、この両球場は狭い球場の代名詞とされ、元メジャーリーガーからは「リトルリーグ並み」と酷評される有様。
日本の球場がいかに広くなったかの現われだろう。
それはともかく、ミセリの理由付けなど単なる言い訳にしか過ぎない。
いかに球場が狭くても、1イニング当たり1本以上のホームランを打たれる投手などメッタにいないからだ。
さらにミセリの場合はホームランだけでなく、ヒットもキッチリ打たれている。
こんなクローザーなど信頼できるわけもなく、当然の如く球団は二軍での調整を命じた。
ところがミセリは、「本人の承諾なくファーム落ちはできない」という契約条項を盾に二軍行きを拒否。
巨人との話し合いも合意には至らず、開幕から半月あまりで解雇となった。
巨人は3イニングに満たない投球回数で0勝2敗0セーブ、防御率20点台の投手に、年俸3カ月分の約5000万円を支払わされたのである。
と、ここで終わっていればただのダメ外人リストに一人加わるだけで済んでいた。
ところが、ここからミセリは日本中を唖然とさせる行動に出るのである。
巨人を解雇された翌日、なんとミセリは妻子を連れて浅草観光を楽しんでいたのである。
このニュースを見た巨人ファンは怒り狂い、他球団のファンは爆笑した。
ちなみに、私事で恐縮だが、ミセリには大変感謝している。
というのも、筆者が「週刊ベースボール」の「ボールパーク共和国」に初掲載されたのが、このミセリネタだったからだ。
しかもこの時は優秀国民に選ばれるというオマケまで付いた。
せっかくなので、この時の記念すべきネタを紹介して、この章を〆よう。
○きっといる
巨人のミセリ投手が解雇された翌日に浅草観光をしているというニュースを見て、
「就労ビザではなく、観光ビザで来日していたのか!?」
と思った人。