昨今は府知事選で話題持ち切りの大阪だが、もうひとつ大きなニュースが飛び込んできた。
大阪に本社を置く大手電機企業、「世界の松下」こと(ん?それはどこぞのアナウンサーか)松下電器の社名変更である。
創業者として有名な松下幸之助の「松下」の名前が消え、海外ブランドとして発達してきた「パナソニック」に関連企業も統一される。
改名の理由は、家電メーカーとしては海外で韓国のサムスンや日本のソニーにブランド力で劣っているため、社名もパナソニックにしてブランド力を高めようという狙いのようだ。
そういえば、1980年代に「松下電器がソニーを叩き潰さない理由」という本がベストセラーになったが、海外では「技術のソニー」の評価が高いようだ。
元々、松下電器は「ナショナル」というブランド名が圧倒的に有名だったが、アメリカに進出するとき、同国には同じ「ナショナル」というブランド名があったため、「パナソニック」ブランドを使用し始めた。
また、「ナショナル」といえば、街の電気屋さんを想像する人も多いだろう。
もちろんこれは、松下電器が街の電気屋さんを支援してきたからだが、最近は大手家電量販店に押され、店舗数も激減した。
そしてこれらの多くの店は「ナショナル」の看板を掲げており、松下電器は看板の書き換えをバックアップしなければならないだろう。
街の電気屋さんはただでさえ苦しいのに、看板を書き換えるとなるとさらに費用がかかってしまう。
近所の街の電気屋さんを見て廻ったが、松下電器以外の店は1件も無かった。
かつては東芝の店があったが、既に別の店に変わっていた。
そして松下電器の店も、看板は全て「National」が掲げられていて、「Panasonic」単独の店は無かった。
中には両方のブランド名が書かれている店もあったが、やはり「National」単独の店が圧倒的である。
それだけ日本では「家電はナショナル」の文化が根付いていたということか。
「あっかる〜いナショナ〜ル、あっかる〜いナショナ〜ル、みんな、うちじゅう、な〜んで〜も、ナショ〜ナ〜ル〜♪」というお馴染みの歌を聴くと、反射的に「じ〜んせい楽ありゃ苦〜もあるさ〜♪」というメロディが脳裏をよぎる人も多いだろう。
サザエさんで有名な「光る東芝」と並ぶ有名な家電CMソングだったが、もう二度とCMとして登場することはないだろう。
僕は見たことがないが、「ナショナルキッド」という特撮ヒーロー物もあった。
僕が「ナショナルキッド」を知ったのは「すすめ!!パイレーツ」というマンガに登場したからだが、さすがにスポンサーが松下電器だとは思わなかった。
今の感覚で言えば、そんなに露骨なPRをしてもええんかい!といったところである。
スポーツ界での松下電器といえば、現在ではガンバ大阪が有名だが、かつてはバスケットボールとバレーボール(いずれも男子)が名門中の名門だった。
その両スポーツでは、日本鋼管(現在は廃部)がライバルで、常に優勝を争っていた。
僕が両スポーツを見始めた1980年前後、バスケットでは松下電器がまさしく黄金時代だった。
当時としては珍しい、ジョンソンという外国人選手がいて、日本リーグや全日本総合選手権では何度も優勝していた。
同時期のバレーボールでは黄金時代は過ぎていて、日本リーグでは中堅クラスだったが、それでも「燃える松下」として人気があった。
特に1981年の都市対抗(現在の黒鷲旗)では当時最強だった新日鉄堺(現・堺ブレイザーズ)と日本鋼管を撃破して優勝し、バレーファン及び関係者をあっと驚かせた。
そんな名門・松下電器も、現在では「パナソニック・トライアンズ(バスケット)」及び「パナソニック・パンサーズ(バレー)」と、チーム名が変わっている。
まるで社名変更を予測していたようなチーム名変更である。
もう「松下」「ナショナル」というお馴染みの名前が見られなくなる寂しさと同時に、社名は変わっても創業者の理念を忘れずに、本当の意味での「世界の松下」になってもらいたいと願わずにはいられない。