僕がプロ野球のオールスター戦の存在を知ったのは小学校低学年、まだ野球に興味を持っていない頃だった。
当時、公立小学校の先生だった親父が、夏休みに近所の子供を集めて塾のようなことをしていた。
今から思えば法律違反である。
そんなある日、勉強を終えた晩に、母親がその子供たちにカレーを振る舞っていた。
なぜそんなことを憶えているのか自分でも不思議だが、そのときの光景は今でも僕の脳裏にハッキリと刻まれている。
みんなでカレーを食べながら「今日はオールスターがあるな」と誰かが言ってテレビを点けた。
当時の僕は「オールスター」と言えば「歌合戦」のことだと思っていた。
その頃、日曜の夜8時から萩本欽一が司会の「オールスター家族対抗歌合戦」という番組をやっていたので、僕の中では「オールスター=歌合戦」だったのである。
今日は夕方から歌合戦をするのかと思っていたら、やっていたのは野球だった。
なんでオールスターなのに野球なの!?と、野球オンチだった当事の僕は思ったものだ。
その頃、僕は南海沿線に住んでいたので、そのとき僕の家に来ていた子供たちはほとんど南海ホークスファン。
当然みんなパ・リーグを応援していた。
パとセの違いがわからなかった僕は「じゃあ僕はパセリを応援する」とわけのわからんことを言っていた記憶がある。
その後、僕は野球に興味を持つようになり、「オールスター」の意味をようやく理解することができた。
「オールスター」とは「歌合戦」のことではなく、「全てのスター」という意味だったことを。
そして、ペナントレースとは違う、色とりどりのユニフォームがなんとも美しく見えた。
「夢の球宴」とはよく言ったものである。
「球の宴」つまり、野球の夏祭りだ。
球場が夕闇に消える頃、ナイター照明が点灯し、各球団の鮮やかなユニフォームがカクテル光線によってよりいっそう映える。
夏の夜ならではの、花火の打ち上げもオールスターを大いに盛り上げた。
今年のオールスターゲーム、第1戦は東京ドーム、第2戦は仙台のフルキャストスタジアムで行われた。
第2戦のフルスタではデーゲームだった。
ゴールデンタイムでの放映権料の折り合いがつかなかったための措置らしいが、やはり夏の宴は夜に見たい。
今年は天候が悪く、残念ながら降雨コールドゲームだったが、やはりデーゲームでは情緒に欠けていた。
僕は、オールスター戦はナイター、日本シリーズはデーゲームという時代に育ったから、どうしてもその方式から抜け出せないでいる。
オールスターは夏の夜の夢、日本シリーズは秋の日はつるべ落としで夕闇が迫る頃に日本一が決まる、そんな感傷にふけっていたいという思いがある。