和歌山県営紀三井寺球場(行った回数:1回)
和歌山県営紀三井寺球場(以下、紀三井寺球場)は和歌山県野球界のメイン球場であり、海に近い和歌山市にある。
和歌山市は当然の如く県庁所在地だが、県の最北西端に位置し、和歌山県南部からは非常に遠い。
例えば県最南東端にある新宮市からは、特急に乗っても和歌山駅まで3時間もかかってしまう。
それでも新宮は鉄道が通っているからまだマシで、鉄道路線がない内陸部の高校は大変だろう。
何しろ夏の高校野球和歌山大会で使用される球場は紀三井寺球場のみだから、遠隔地に位置する高校は和歌山大会に参加するだけで、ちょっとした遠征になってしまうのだ。
JRの紀勢本線に紀三井寺駅という駅があるが、ここから紀三井寺球場までは徒歩約30分もかかる。
JRの和歌山駅や南海電鉄の和歌山市駅からバスが出ているが、所要時間が約40分もかかるので、交通の便がいいとはとても言えないだろう。
和歌山市の中心駅からこれだけ離れているということは、和歌山市街からも離れているということで、むしろ海南市街からの方が近い。
また、西国三十三箇所第ニ番札所として有名な紀三井寺からも結構離れている。
球場は両翼93m、中堅120mと狭く、フィールドは内野が土、外野は天然芝のオーソドックスな仕様、スコアボードは手書きから磁気反転式に改装され、2006年からは念願のナイター設備が設置された。
ナイター設備がなかった頃も、1980年代以前に南海ホークス主催のプロ野球一軍公式戦が行われたことがあったが、最近ではない。
高校野球の他では社会人野球でも使用され、現在では関西独立リーグの紀州レンジャーズの本拠地となっている。
ただの地方球場に過ぎない紀三井寺球場が全国的に有名になったのが、中田翔(現・北海道日本ハム・ファイターズ)がこの球場で放った超特大アーチである。
2006年11月3日、秋季高校野球近畿大会で、当時は大阪桐蔭の二年生だった中田が準決勝の市川戦で推定飛距離170m、到達距離188.41mという、度肝を抜く大ホームランを放った。
金属バットとはいえ、日本人最長のホームランを高校生が放ったのである。
ちなみに僕はこの日紀三井寺球場に行ったのだが、交通渋滞のため球場入りが遅れ、残念ながらこの歴史的瞬間を見逃してしまった。
でも、中田のこの日2本目のホームランはバッチリ見ることができたが、これは170m弾とは対照的に、どん詰まりの当たりがフラフラとレフト後方に上がり、そのままスタンドに入るという「テキサス・ホームラン」だった。
だが逆に、どん詰まりの当たりをオーバーフェンスしてしまう中田のパワーに、末恐ろしさを感じたものである。
そして今や日本ハムの四番打者に成長した。
近畿大会は近畿2府4県の持ち回りで開催されるため、紀三井寺球場の近畿大会での使用は6年に一度だが、和歌山大会は毎年紀三井寺球場で開催される。
和歌山県の高校野球は、戦前の和歌山中(現・桐蔭)や海草中(現・向陽)、戦後は箕島に智弁和歌山と常に全国制覇を狙う高校を輩出する、非常にレベルの高い県である。
そんな彼らを育てたのが紀三井寺球場であり、これからも甲子園で大暴れする高校を送り出すことだろう。