今年(2019年)の秋、日本でラグビー・ワールドカップ(RWC)が開催される。
その会場の一つとなっているのが、高校ラガーマンの聖地と言われる東大阪市花園ラグビー場だ。
花園ラグビー場はRWCに向けて大幅なリニューアルを行い、それが完成した。
総工費は72億6000万円だったという。
筆者は花園ラグビー場での日本代表XV×世界選抜、およびトップリーグのカップ戦を観に行ったが、リニューアルされた花園ラグビー場の部門別採点をしてみよう。
5段階評価で、星が多いほど評価が高い。
◎外観 ★★★★
まず、大きく様変わりしたのが外観だ。
近鉄奈良線の東花園駅を降りて通称スクラムロードを歩いて行くと、花園ラグビー場の南側にあるメイン・ゲートが見えて来る。
そこにあるのは、格子状のデザインとなった花園ラグビー場の外観だ。
シンプルだった改修前と違い、鮮やかなデザインとなっている。
改修前の花園ラグビー場メイン・ゲート
リニューアル後の花園ラグビー場メイン・ゲート
夜になるとライト・アップされる花園ラグビー場
やはり夜になると、今までの花園ラグビー場とは雰囲気が一変する。
今回の改修で残念だったのは、屋根がバック・スタンド側に付けられなかったこと。
冬の観戦では、屋根がない方が日当たりがいいという利点もあるのだが、やはり雨が降ってくると屋根があった方がいいということになる。
屋根があっても、バック・スタンドは西日を浴びるので暖かいだろうし、これからはナイト・ゲームが増えることを考えると、バック・スタンドにも屋根を付けて欲しかったところだ。
◎ナイター照明 ★★★★
前項でも少し触れたが、今回のリニューアルで花園ラグビー場にもナイター設備が設置された。
つまり、ナイト・ゲームが可能になったということである。
やはり「西の聖地」と呼ばれるぐらいなのだから、ナイター設備は欲しかったところだが、日本では冬に行われることが多かったラグビーでは、ナイト・ゲームがおざなりになっていた。
しかし、RWCが開催されることによってナイター設備が必要となったため、埼玉県の熊谷ラグビー場などと共にナイター照明が付けられたのである。
これにより、9月頃のトップリーグでも、花園ラグビー場でのナイト・ゲーム開催が可能になった。
それまでは、9月頃にラグビーをデー・ゲームで行うのは暑すぎたため、大阪での開催はキンチョウスタジアムなどで代用していたのである。
花園ラグビー場のナイター設備は4基とやや少ないが、メイン・スタンドの屋根部分にも照明があり、特に暗いという感じはなかった。
初めてナイト・ゲームが行われる花園ラグビー場
◎スタンド ★★★
今回のリニューアルで、大きく変わったのがゴール裏のスタンド。
北側の、いかにも花園ラグビー場といった感じの、ゴルフの打球練習場跡はなくなり、スタンドが設置された。
以前は、ラグビーのオフ・シーズンには、花園ラグビー場でゴルフの打ちっ放しができたのだ。
その後はゴルフの打球練習場としては使われなくなったのだが、その名残はずっとあったのである。
本格的なスタンドになったのは結構だが、ゴルフ打球練習場跡は選手とファンとの交流の場だったので、それが今ではグラウンドとスタンドが完全に分断されたのが残念。
ゴルフ打球練習場時代の名残がある、以前の花園ラグビー場の北側
リニューアル後は、ゴルフ打球練習場跡が撤去されて本格的なスタンドとなった
貧弱だった南側のゴール裏スタンドも、大幅にリニューアルされた。
ちなみに筆者は、世界選抜戦では南側のゴール裏スタンドで観戦した。
ついでに言えば、そこにはアインシュタインの稲田がいたことも付け加えておこう。
南側スタンドの両隅は、以前と同じく立ち見スタンドだが、RWCでは特別に椅子が設置されるらしい。
南側のスタンドも大きく綺麗になった
メイン・スタンドとバック・スタンドの規模は以前と変わらないが、座席はリニューアルされた。
特にバック・スタンドは、以前の長椅子から一人掛けの椅子に変わっている。
とはいえ、椅子にはカップ・ホルダーがなく、非常に不便だ。
せっかくリニューアルしたのだから、カップ・ホルダーは付けて欲しかった。
なお、メイン・スタンドの椅子にはカップ・ホルダーが付いている。
◎スコアボード ★★
今回のリニューアルで、最も期待されたのはスコアボードだった。
それまでの花園ラグビー場のスコアボードは、得点と選手名が刻まれているだけで、大型ビジョンがなかったのである。
現在のラグビーではTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)というビデオ判定があり、TMOが行われている間の観客は退屈極まりない。
しかし、大型ビジョンでTMOの映像が流れれば、その時間も退屈せずに済むのだ。
しかも、トライ・シーンなどの名場面も、リプレイ映像で楽しむことができる。
果たして、花園ラグビー場のスコアボードには、大型ビジョンが設置された。
それはそれで結構なことだが、残念ながら試合中はずっと試合の映像が流れているため、選手名がわからないのである(得点は一応、試合映像で示されているのでわかる。おそらくJ-SPORTSの映像だろう)。
高校ラグビーでは今まで通り選手名と得点が示されているようだが、トップリーグやテストマッチでは、現在どんな選手が出場しているのかわからない。
スコアボードがあるのは、北側のゴール裏スタンドのみで、南側のゴール裏スタンドにもスコアボードがあれば交互に試合映像と選手名を映し出すことができるのだが、現在の花園ラグビー場ではスコアボードは1つしかないのである。
また、スタンドの角度によっては、スコアボードは見にくい。
簡単に言えば、スコアボードのある北側のゴール裏スタンドに座っている客は、スコアボードを見ることが出来ないのだ。
できればスコアボードは、2つ欲しいところである。
大型ビジョンが備え付けらた花園ラグビー場
◎飲食店 ★
今回のリニューアルで、唯一退化したのが飲食店だ。
花園ラグビー場の特徴として、最も優れていたのが飲食店だった。
野球場では食堂やレストランなどがあるのは当たり前だが、野球場以外の施設では、食堂すらあまりない。
ところが以前の花園ラグビー場には、メイン・スタンドの裏に食券方式の食堂があった。
うどんやラーメン、カレーライスなどの軽食はもちろん、丼物や定食まであったのである。
バック・スタンド裏だって、定食はさすがにないものの、うどんやラーメンなどのメニューがある立ち食い屋があった。
これは、野球場以外では稀有の例であり、花園ラグビー場が最も充実していた部分だったのだ。
しかし、今回のリニューアルで、メイン・スタンド裏の食堂がなくなっていたのである。
第一段階のリニューアルでは、食堂の代わりに屋台村が設置されたのだが、それすらなくなっていた。
バック・スタンドの立ち食い屋も、メニューが大幅に減って、食事と言えるのはうどんのみになっていた。
これを退化と言わずして、何というのだろう。
リニューアル前の花園ラグビー場には、メイン・スタンド裏に食券方式の食堂があった
かつて、食堂があった場所は、現在では関係者以外はオフ・リミットに
バック・スタンド側で食事らしい食事と言えば、うどんのみ(写真はきつねうどん)
ただ、一つ進化したと言えるのは、スタンド内に売り子が歩くようになったことだ。
以前の花園ラグビー場では、売り子の姿がなかった。
これはリニューアルとは関係ないのだが、売り子が歩くようになったおかげで、席を立って飲食物を買いに行く手間は省けるようになったのである。
また、缶ビールではなく生ビールを味わえるようになった。
生ビールを売り歩く売り子
◎ミュージアム ★★★★
花園ラグビー場の特徴として、もう一つ挙げられるのがミュージアムの存在だ。
日本のラグビー場には、不思議なことにミュージアムが存在しない。
僕が知る限り、日本のラグビー専用場にミュージアムがあるのは花園ラグビー場だけだ(他にあったらスンマヘン)。
歴史を伝えるのに、ミュージアムは実に貴重な存在なのに、実にもったいない話である。
花園ラグビー場には、以前からミュージアムはあったが、今回のリニューアルで場所が移転した。
南側のメイン・ゲートから入ってすぐの所で、位置的にはさほど変わっていないものの、ミュージアム自体は新しくなっている。
しかも、映像によるVR体験もできるようになった。
入館料は無料で、ラグビー開催時以外でも水曜日の昼間なら入館できる。
ただし、2019年3月31日を最後に、RWCのリニューアル工事のために入館できなくなるのでご注意を。
今年、花園ラグビー場で試合が見られるのは、RWCが最初となる。
日本でRWCが開催されるのは、これが最初で最後となるかも知れない。
何とかチケットをゲットして、花園ラグビー場へ行ってはいかが?