3月17日(現地時間)、アメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコのAT&Tパークで行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の準決勝第一試合、日本×プエルトリコは3-1でプエルトリコが日本を破り、決勝へ進出した。
この結果、日本のWBC3連覇の夢は潰えた。
プエルトリコは初回、制球に苦しむ日本先発の前田から二つの四球でチャンスを掴み、二死一、二塁から五番のアービレイスが中前適時打を放ち1点先制。
プエルトリコ先発のサンチアゴは動くボールを巧みに操り、日本に得点を与えない。
5回裏、日本は無死一塁で五番の糸井が一、二塁間へ打球を放つも、セカンドのファルーの好守に阻まれ、結局この回は無得点。
抜けていれば日本にとってビッグチャンスだっただけに、ファルーのファインプレーが光った。
7回表、プエルトリコ六番のリオスが、日本二番手の能見からレフトへ2ランを放ち、3ー0と試合を有利に進めた。
前田、能見ともに、かなり制球に苦しみ、甘い球をプエルトリコ打線に狙われた。
8回裏、徐々に捉えだしていた日本打線は一死無走者から一番の鳥谷が右中間へ三塁打を放ち、さらに井端の右前適時打で1点を返した。
反撃ムードの日本は三番の内川の右前打で一死一、二塁、同点もしくは逆転への足がかりを掴んだ。
ここで四番の阿部だったが、サインミスがあったのか一塁走者の内川が飛び出してしまいタッチアウト。
結局、この回は1点止まりで、日本は惜しいチャンスを潰した。
2点を追う日本は9回裏、一死一塁と粘るも、プエルトリコはクローザーのカブレラを投入、後続を絶ってそのまま逃げ切り、初のWBC決勝進出を果たした。
こうして試合経過を書いてみると、やはり8回裏の走塁ミスが痛かった。
この局面、ベンチからどんなサインが出たのかはわからない。
普通に考えれば、四番の阿部が打席でダブルスチールは考えられないから、一塁走者の内川がサインを見間違えたというところだろう。
そうでなければ、ベンチからダブルスチールのサインが出ていて、それを二塁走者の井端が見逃したというところか。
試合後の山本浩二監督のインタビューによれば、あの時はグリーンライトだったようだが、だとすれば二塁走者の井端が走りかけて止まったにもかかわらず、そのまま二塁へ盗塁を試みた内川のボーンヘッドである。
そういう日本のミスがあったにせよ、やはり称えるべきはプエルトリコの健闘ぶりだろう。
特にセカンドのファルーは再三の好守で自軍のピンチを救った。
さらに、キャッチャーのモリーナはワンバウンド投球も巧みにキャッチし、余計な進塁を与えなかった。
さらに、打撃陣では低めのボールになる変化球に全く手を出さなかった。
低めのボールになる変化球を空振りさせるのが日本投手陣の真骨頂なのに、プエルトリコの打撃陣はその手に乗ってこなかったのである。
プエルトリコ打線の選球眼が日本投手陣を苦しめ、甘い球を逃さずに打ったのが勝因だった。
プエルトリコは相当、日本投手陣を研究していたのではないか。
逆に、プエルトリコ投手陣は日本打線に対し、低めのボールになる変化球をことごとく空振りさせた。
日本は完全にお株を奪われたのである。
プエルトリコは最高の野球を魅せたと言えよう。
もちろん、球審の奇妙すぎるストライクゾーンに苦しめられた面もあった。
制球力や選球眼を武器とする日本にとって、安定しないストライクゾーンは厄介な難物だっただろう。
だが、条件は相手も同じこと。
ストライクゾーンは日本に不利だったばかりではなく、後半ではむしろ有利に働いた。
それでも試合の流れを変えることができなかったのは、やはり日本の負けと言わざるを得ない。
WBC3連覇を逃した日本だったが、個人的にはよくやったと思う。
3大会連続ベスト4進出なんて、なかなかできることじゃない。
もちろん、こんな国は日本だけである。
前にも書いたが、WBC3連覇なんて4096分の1という、奇跡に近い大偉業なのだ。
そして今大会で改めて思ったのは、野球とはこんなにも面白いスポーツなのである。
144試合も行われるペナントレースではなかなか実感しにくいが、1球1球で手に汗を握るのが野球の本質だ。
それでいて、リラックスして個人個人のプレーも楽しめる。
豪快なホームランや痛烈なヒット、果敢な盗塁やヒットエンドラン、剛速球や変化球を駆使して三振に斬って獲り、守備でのファインプレーでピンチを切り抜ける。
こんなシーンを見るのは、勝敗を乗り越えて実に楽しい。
今日の試合で言えば、ファルーのファインプレーには思わず拍手を送ってしまった。
プエルトリコは決勝進出を果たした。
準決勝のもう1試合は、今大会で無敗のドミニカ共和国と、ヨーロッパ旋風を巻き起こしたオランダとの対戦である。
どこが勝っても初優勝、優勝の行方を見守りたい。
もちろん、WBCが終わってもペナントレースが待っている。