今日、東京ドームでアメリカンフットボール日本選手権(ライスボウル)が行われ、社会人代表の松下電工インパルスが学生代表の関西学院大学ファイターズを53−38で破り、3度目の日本一に輝いた。
前半は松下電工の一方的なペースだったが、第4クォーターでの関学の猛反撃で一時は7点差まで迫り、しかし松下電工が粘る関学を振り切った。
タッチダウンの応酬となった試合だったが、実力的には社会人王者の松下電工が明らかに上回っていた。
これでライスボウルの通算成績は社会人の4連覇、14勝11敗となったが、それでも他のメジャースポーツと比べると、社会人と学生の差はまだ小さいといえる。
社会人と学生の王者同士が日本選手権を争う競技といえばラグビーが有名だったが、社会人と学生の実力差が開きすぎてしまい、現在では方式が変わっている。
そんな中で、社会人と学生の王者が日本一を争う試合が残っているアメフトは、ある意味では貴重なスポーツであり、穿った見方をすれば遅れているともいえる。
そもそも、ライスボウルとはなんなのか?
本場アメリカのカレッジ・フットボールでは伝統的なボウル・ゲーム(ボウル=bowlとはお椀のような競技場のことを指す)が行われる場所の特産品が頭に付く。
ローズボウル、シュガーボウル、オレンジボウルなどがそうだ。
ライスボウルが行われる東京の特産品は別に米=riceではないのだが、日本人の主食が米という理由から、日本を代表するボウルゲームということでライスボウル=Rice Bowl=米のお椀=お茶碗!?と名付けられたのだろう。
しかし、元々このライスボウルは日本選手権ではなく、東西学生オールスター戦だった。
日本では社会人アメフトが発達していなくて、学生中心で運営されており、卒業すればアメフトから足を洗う選手がほとんどだった。
したがって、単独チーム日本一を決める事実上の試合は、現在でも続いている甲子園ボウル(東西学生王座決定戦)であり、社会人チームが日本一になるチャンスは無かった。
そして、ライスボウルが日本選手権に格上げされたのが1983年度(試合開催は1984年)。
日本選手権としては歴史が浅い。
当時はまだ東京ドームが無かったので、学生オールスター戦時代から引き続き国立競技場での開催だった。
この頃はまだ練習量の豊富な学生が圧倒的に強く、第8回までは学生が7勝1敗と一方的な戦績を残していた。
ところが、社会人チームもアメフトに力を入れ始め、大学を卒業してもアメフトを続ける選手が増えてからは徐々にその力を逆転し、最近では社会人優位の状況が続いている。
とはいえ、他のスポーツに比べるとまだまだ社会人と学生の戦力は拮抗しているといえるだろう。
1970年代、ラグビーでも社会人と学生の実力は拮抗していたが、新日鉄釜石の7連覇で差が拡がり、その後はやや持ち直したものの、神戸製鋼の7連覇でその差はさらに大きく開き、トップリーグが発足してからは学生が日本一になるなんて夢また夢となってしまった。
アメフトの場合、ラグビーと同じような流れで、社会人は学生との差をさらに拡げるのだろうか。
それとも、景気に左右されて各会社ともアメフト部をサポートするだけの余裕が無くなり、社会人チームが衰退して再び学生の天下になるのだろうか。
前者の場合、ラグビーのように日本選手権の運営方法が変更されて、社会人チーム中心(もちろん、学生チームも参加)で日本一を決めるという方式になることが予想される。
そうなると、日本のアメフトのレベルも上げることができるだろう。
問題は、後者の場合だ。
最近は企業スポーツのあり方が現代に合わなくなり、各社のスポーツ部が相次いで廃部に追い込まれている。
この流れでいくと、アメフトの社会人チームも衰退しかねない。
今後の社会人アメフトの動向によってライスボウルの方向性が決まると言えよう。