「ミスター・タイガース」こと野球解説者の掛布雅之が、市税滞納のために自宅が一時差し押さえられていたという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081226-00000500-sanspo-ent
現在は解除されているが、引退して20年たった今でもテレビなどで活躍する人気者だけに、ショッキングなニュースだ。
掛布は1974年、ドラフト6位で阪神タイガースに入団した。
当時の掛布は全く無名で、一応ドラフトにはかけられているが、事実上のテスト生で契約金はなし。
年俸は当時の二軍最低年俸の84万円。
「え、それって月給じゃないの?」と聞き返したくなるくらいの低年俸だ。
月額に直すと、僅か7万円。
実はこの頃から掛布には「借金ぐせ」があったという。
寮に入るため「食う寝るところに住むところ」は保障されているが、当然寮費は年俸から差し引かれる。
アドバイザリー契約なんてないから、バットやグラブは自分で買わなければならない。
結局、手元に残るのは月1万円くらいで、まさしく綱渡りの生活をしていた。
そんな生活の中で、掛布はある物を購入するために借金をした。
それは、10万円のステレオ。
近所の電気屋さんに「今度、この店で一番高いステレオをキャッシュで買いますから」と約束して、そのとき払えるローンを特別に組んでもらったという。
1年目から一軍出場が多かったために2年目の年俸は大幅にアップ、掛布は約束通り50万円のステレオをキャッシュで買った。
その後、掛布はミスター・タイガースとして文字通り阪神の顔となり、年俸もプロ野球界有数の高額となったが、借金が無くなることはなかった。
そのひとつが、上記のような豪邸を購入した時のローンだ。
さらに掛布はかなりのカーキチで、ポルシェやベンツなど様々な高級車を乗り回している。
ただし、ファッションには全く興味がなく、ジャージ姿でベンツに乗り込むので、島田紳助から「掛布さん、アンタおかしいで!」とよくツッコまれていた。
ちなみに、プロ入りした頃には借金してまでステレオを購入した掛布も、なぜか愛車にはカーステレオを付けていないらしい。
掛布はなぜ借金してまでこれらの物を手に入れたいのか?
たしかに豪邸や高級車はプロ野球選手のステータスシンボルなのだが、それだけではないという。
むしろ「借金すること」そのものが目的だというのだ。
二軍にいる間は、早く一軍に上がって年俸を上げようと頑張る。
しかし一軍入りしてレギュラーに定着してしまうと年俸を上げる意味がなくなってしまう。
いわば、年俸を上げる目的を作るために借金をするというのだ。
だから一流の選手はみんな借金を抱えているのだという。
つまり、プロ野球選手の豪邸や高級車は、自らのハングリー精神を湧き立たせるための象徴だというわけだ。
なるほど、理に適った話だが、腕一本で建てた豪邸の裏で借金生活をしているというのも、何となく夢が無くなってしまう感じがするのは筆者だけだろうか。
と言っても、掛布は借金をバネにして頑張ったからこそミスター・タイガースと呼ばれるようになったと自負しているのだから、上記ニュースのような出来事もこれからの人生のエネルギーにしようとしているのだろう。
一方、現役時代に掛布のライバルだった元・読売ジャイアンツの江川卓も借金生活をしていた。
もっとも、こちらの事情は掛布とは少々違うようで、バネにするための借金ではなく、金儲けのための借金だというのだ。
貯蓄して税金を取られるくらいなら、借金して土地売買した方が節税になり、結局は得だというわけだ。
しかしバブル崩壊で大損し、結局は多額の借金を背負うことになった。
こちらの借金は決して望んだものではないだろう。
また、株にも手を出していて、こちらでも損をしたことがあるという。
ただ、こちらは専らギャンブル好きから高じたもので、株での失敗はあまり悔やんでいないらしい。
ちなみに掛布は、ギャンブルは大の苦手である。
時代も大きく変わった現在、今の選手たちの金銭感覚はどんなものなのだろう。
掛布や江川のようにドンと投資をしているのか、あるいは先行き不透明な世の中なので、貯蓄に回しているのか。
ただひとつ言えるのは、掛布や江川が借金生活を選んだのは高額所得者だからであって、普通の人は無意味な借金(身の丈に合わない贅沢品の購入やギャンブルによるもの)など絶対にしない方がいい。