東京方面から東海道新幹線に乗って新大阪駅で降りた時、戸惑った経験はないだろうか。
新幹線が新大阪駅に近付くと、車内アナウンスが流れる。
ところが、新大阪駅で降りてJR在来線の構内へ行くと、東海道線の表記はどこにもない。
あるのは、おおさか東線と、JR京都線やJR神戸線およびJR宝塚線、そして特急の案内だけである。
「これから東海道線に乗って吹田に行かなきゃならないのに、どのホームに行けばいいんだよ!?」
と怒り出す人がいるかも知れない。
実は、JR西日本では「東海道(本)線」という案内はしていないのだ。
JR西日本の管轄内を走る東海道本線のうち、京都駅~大阪駅をJR京都線、大阪駅~姫路駅をJR神戸線という愛称を使っている。
ちなみに、東海道本線の起点は東京駅だが、終点は大阪駅ではなく神戸駅。
したがって、JR神戸線のうち、大阪駅~神戸駅は東海道本線で、神戸駅~姫路駅は山陽本線というややこしいことになる。
▼東海道本線なのに、新大阪駅の在来線構内では京都方面行きをJR京都線と表記
ところが、たとえ愛称であっても新大阪駅はJR京都線に含まれるはずだが、なぜか大阪や三ノ宮方面行きはJR神戸線、宝塚方面行きはJR宝塚線と表記しているのだ。
これは、新大阪駅から大阪駅までは1駅しかなく、杓子定規にJR京都線と書くよりも、一目でどこへ行くのかが判るJR神戸線やJR宝塚線と表記する方が、利用客には判りやすいからである。
ついでに言えば、JR宝塚線というのも大阪駅~篠山口駅の愛称で、正式路線は大阪駅~尼崎駅が東海道本線、尼崎駅~篠山口駅が福知山線だ。
▼西の方へ向かう東海道本線は、JR神戸線およびJR宝塚線と表記
それではなぜ、東海道新幹線の車内では東海道線としかアナウンスしないのだろうか。
利用客にとっては判りづらく、不便である。
「JR京都線やJR神戸線なんていうのはJR西日本さんが勝手に付けた愛称だから、ウチは正式路線名の東海道線を使うよ」
というわけである。
したがって、JR西日本が運営する山陽新幹線の車内では、新大阪駅に近付くと「JR京都線、JR神戸線」とアナウンスするのだ。
何しろ、同じJRグループといっても、JR東海とJR西日本は別会社なのだから。
なお、JRの新大阪駅には駅長が2人おり、1人はもちろんJR西日本、もう1人はJR東海に所属する駅長である。
ついでに言えば、東京駅での在来線では正式名称の東海道線を使用しているが、実はこちらもややこしい。
東京駅の在来線地上ホームには東海道線の他に山手線、京浜東北線、中央線、上野東京ラインなどの文字が並んでいるが、正式路線としては東海道本線、中央本線、東北本線となる。
「え、じゃあ山手線は?」
と思うかも知れないが、実は山手線には東京駅は含まれていないのだ。
山手線の正式路線は品川駅から新宿駅を経由して田端駅まで。
つまり、山手線は正確には一周していない。
山手線は、東海道本線および東北本線の路線を借りて、ようやく一周しているという考え方だ。
東北本線の起点は上野駅というイメージが強いが、正式な起点は東京駅で、京浜東北線や上野東京ライン、宇都宮線などというのは愛称であり、いずれも東北本線の一部である(京浜東北線は東海道本線も含まれる)。