奈良市鴻ノ池陸上競技場(行った回数:1回)
奈良市鴻ノ池陸上競技場(以下、鴻ノ池競技場)はその名の通り奈良市の鴻ノ池運動公園にあり、奈良県を代表するスポーツ施設だ。
奈良県民なら誰でも行ったことがあるという遊園地のドリームランド(現在は閉園)のすぐ近くにある。
隣りには奈良市鴻ノ池球場があって、そこでは高校野球の奈良大会はもちろん、大阪大会まで行われたこともあった。
2015年12月20日、ジャパンラグビー・トップリーグの公式戦(近鉄ライナーズ×東芝ブレイブルーパス)が鴻ノ池競技場で行われるというので、早速行ってみた。
奈良県と言えば、高校ラグビーでは天理高校や御所実業、大学ラグビーでは天理大学が強く、また子供のラグビー・スクールも多いなどラグビーの盛んな土地柄だが、トップリーグが行われることはほとんどない。
前年の2014年には天理市の天理親里ラグビー場で初めてトップリーグの試合が行われたが、いかんせんこのラグビー場は交通の便が悪い上に、キャパシティが少ないのだ。
そこへいくと鴻ノ池競技場は奈良市のド真ん中にあり、駐車場も広大なので交通の便はずっといい。
ただし、交通の便がいいと言っても、最寄駅からはかなり離れていて、路線バスを利用するのが一番だ。
筆者は近鉄奈良駅からバスに乗ろうとしたのだが、鴻ノ池競技場(最寄りの停留所は「市営球場前」)行きのバスは近鉄奈良駅のバス・ターミナルからではなく、JRの奈良駅から出発するので、普通の道路脇の停留所に行かなければならない。
参考までに言っておくと、近鉄奈良駅とJRの奈良駅はかなり離れており、奈良市の中心部に近いのは近鉄奈良駅の方だ。
ただ、鴻ノ池競技場に行くのならば、始発停留所であるJRの奈良駅(西口)から乗った方が、座れる確率が高いだろう。
そんなわけで、ターミナルから離れた停留所に行ってみると、昨今のラグビー・ブームを反映してか、狭い道に凄い人だかり。
とても1台のバスでは乗り切れない。
おそらく、ほとんどがラグビーの乗客だろうが、いつも路線バスを利用している地元住民にとってはいい迷惑だろう。
筆者も列で並んでいると、奈良交通の職員が「もうすぐ臨時バスが来ますので、もうしばらくお待ちください」と叫んだ。
しばらく、と言っても結構待ったのだが、やがて空のバスがやって来た。
おそらく、JRの奈良駅は経由せずに、直接近鉄奈良駅に来たのだろう。
しかも、ラッキーなことに、超満員にもかかわらず座ることができた。
ところが、バスが出発しても大渋滞でなかなか進まない。
何しろ行楽地の奈良で、しかも一本道である。
天気のいい日曜日に、渋滞しないわけはない。
歩いた方が速いんじゃないかと思うようなノロノロ運転で、しかも鴻ノ池競技場の近くに行けばほとんど止まったような状態になった。
要するに、鴻ノ池競技場へ車で行こうとする人たちが多いので、駐車場の入り口で大渋滞になっていたのである。
いくら広大な駐車場があると言っても、そこに行くまでの道が一本で、しかも出入り口が限られていたら、大渋滞となるに決まっているではないか。
結局、バスの運転手が一つ前の停留所で「ここで降りても、さほど遠くないので、降りた方が早いと思います」と言ったので、みんなゾロゾロと一つ前の停留所で降りた。
たしかに、大した距離ではなかった。
なお、一つ前で降りたからといって運賃が安くなるわけではない。
どこまで乗っても一律、大人210円である。
まあそれでも、これほど駐車場に停めるのに苦労するのならば、公共交通機関を利用した方がマシというところか。
関西では昔から私鉄が発達していて、またプロ野球の球団を持っていた関係で大抵のスタジアムは駅に近い所にあるのだが、それ故に「バスでスタジアムに行く」ということに慣れていない。
しかし奈良にはプロ・スポーツのチームが存在しなかったので、交通の便に対する配慮が足りないのだろう。
鉄道駅に近いという点では、奈良市からは離れているものの、橿原市にある奈良県立橿原公苑陸上競技場の方がマシだ。
ただし、キャパシティはかなり少ない。
ようやくの思いで鴻ノ池競技場に辿り着き、いつものようにバックスタンドで見ようと思ったが、入り口正面はメインスタンドなのでグルっと反対側まで回らなくてはならない。
陸上競技場ならどこでもそうだが、メインスタンドからバックスタンドまではやたら距離があるのだ。
しかも、売店などはメインスタンドの外側しかなく、飲食物を買いたければ、あらかじめメインスタンド側の外で買わなければならない。
買いそびえたり、途中で何かを欲しくなれば、またグルっとメインスタンド側までえっちらおっちら歩かなければならないのだ。
ようやくバックスタンドに辿り着いた。
バックスタンドは芝生席である。
これがまた、平面で見づらい。
それでなくても、陸上用のトラックがあるのだから、臨場感など全くない。
東大阪市花園ラグビー場で見慣れた筆者にとっては、これほどつまらないラグビー観戦はなかった。
前半は我慢してバックスタンドで見たものの、後半は多少悪い席でもメインスタンドで見ようと思い、ハーフタイムの時に移動した。
メインスタンドはちゃんとした席で、端っことはいえさすがにバックスタンドよりは見やすかったものの、やはり陸上用トラックがあるのは臨場感に欠ける。
なぜ日本には、これだけ沢山の陸上競技場が存在するのか、全く理解できない。
国民体育大会などという、今や前世紀の遺物となったものに、未だにしがみついているのだろうか?
あるいは、陸連特定スポーツ団体の横暴がまかり通っているのか。
よほどの利権が絡んでいるとしか思えない。
鴻ノ池競技場のメインスタンド
鴻ノ池競技場のバックスタンド
お粗末なのは、それだけではない。
ナイトゲーム用の照明塔がない。
しかもなんと、スコアボードがない。
だから得点状況がわからない。
当然、時計もない。
試合時間がわからない。
選手名がわからない。
さらに、場内には売店もない。
ちなみに、公称の収容人員数は3万人となっているが、そんなことあるわけない。
ないない尽くしで何にもない。
あるのは、見にくくて無駄な陸上用トラックだけ。
これほどまでに欠陥だらけのスタジアムで、しかも奈良市のド真ん中にありながら交通不便となれば、トップレベルのスポーツ・イベントを開催するのは無理がある。
これが奈良県におけるスポーツ施設の状況だということを、行政は把握しているのだろうか。
おそらく、何にもわかっていないだろう。
要するに、スポーツ文化を全く理解していないのだ。
これは奈良県の問題だけではなく、日本の全ての自治体が考えるべき問題である。
やれ東京オリンピックを招致した、やれ国体を我が県で行える、などと利権絡みで一喜一憂しているから、このような貧しいスポーツ行政になるのだ。