今年の1月26日、作家の赤瀬川隼さんが亡くなった。
享年83歳。
芸術家・赤瀬川原平の実兄でもある。
赤瀬川さんは1995年に「白球残映」で第113回直木賞を受賞した。
と言っても、「白球残映」というタイトルの小説があるわけではない。
「白球残映」は短編集である。
しかし、赤瀬川さんのことを「直木賞作家」と呼ぶのはピンと来ない。
赤瀬川さんはやはり「野球作家」である。
「白球残映」に収められている5編の小説全てが野球小説というわけではないが、赤瀬川さんは野球小説を中心に執筆してきた。
「白球残映」の中でも、特に「消えたエース」は絶品である。
赤瀬川さんを世に送り出したのは、なんといっても「球は転々宇宙間」だろう。
なんとも仰々しいタイトルの小説だが、なぜこんなタイトルなのかは実際に小説を読んで確かめていただきたい。
赤瀬川さんの作品は短編が多いが、これは長編小説だ。
この長編野球小説で赤瀬川さんは1983年、吉川英治文学新人賞を受賞している。
間違いなく、野球小説の金字塔と言えるだろう。
詳しくは過去に書いたことがあるので、そちらを参照されたい。
赤瀬川さんの作品には全て、野球に対する深い愛情が感じられた。
ある人の証言によると、野球のことを語っている時の赤瀬川さんはとても大人とは思えず、無邪気な野球少年のようだったという。
往年の大投手・江夏豊は赤瀬川さんの小説「捕手(キャッチャー)はまだか」に心酔していた。
謹んで、ご冥福をお祈りしたい。
天に昇った現在は、宇宙間を転々としているのだろうか。