11月1日(土)、ノエビアスタジアム神戸で行われたラグビーの日本代表XV×マオリ・オールブラックス戦を観に行った。
マオリ・オールブラックスとは、ニュージーランドの先住民族であるマオリ族からなる代表チームのことである。
従って、ニュージーランドの正代表ではないが、日本代表のヘッドコーチであるエディー・ジョーンズによると、世界ランキングでも6~7位程度の実力があるとのこと(日本は11位)。
つまり、前回(2011年)のワールドカップで準優勝となったフランス代表と互角の実力があるということだ。
だが、あくまでも正代表ではないので、今回の試合もテストマッチではなく、日本も正代表ではなく日本代表XV(フィフティーン)という名称で戦う。
と言っても、メンバーの顔ぶれを見ると、どう考えても日本代表だが。
当然、来年(2015年)にイングランドで行われるワールドカップに向けて、試金石となる試合だ。
エディー・ジョーンズはマオリ・オールブラックスを、ワールドカップで対戦する仮想・スプリングボクス(南アフリカ代表)としている。
ちなみに、本家のオールブラックスはアメリカ遠征をしていて、この日の翌日(日本時間)にアメリカ代表(イーグルス)とテストマッチを行い、74-6で圧勝した。
マオリ・オールブラックス(以下=マオリ)を見られるということで、地下鉄は大混雑、御崎公園駅からノエスタに続く道路も1時間前にもかかわらず大勢の人で溢れかえっていた。
観衆は、実数発表となった2004年以降では日本代表戦(日本代表XVを含む)で最多となる21,234人を数えたという。
地下鉄を降りて駅から出ても、歩道は人だかり
ノエスタに着いて、スタンドに入った。
バックスタンドの自由席だが、既にもう満杯で空いている椅子がない。
上の方にようやく席を見つけたが、こんなに高い位置からラグビーを見るのは初めてだ。
やがて両軍の選手が入場し、いよいよマオリのハカが始まる。
今回はオールブラックスのハカとは異なり、マオリ族独自の「ティマタンガ」と呼ばれるハカだ。
正直に言うと、このハカを生で見たくて神戸まで来たようなものだ。
3列に並び、ハカが始まる
やがてピラミッド型に形を変える
マイク無しであれだけ声が広い会場に響き渡るとは思わなかった
結構長い時間のハカが終わり午後2時10分、いよいよキックオフ。
試合の方は、ハッキリ言って勝負にならなかった。
全てにおいてレベルが違う。
日本代表XVがいくら敵陣ゴール前まで攻め込んでも、そこからゲインを突破することができず、マオリがターンオーバーすると自陣ゴール前からいとも簡単にトライに結び付ける。
マオリがディフェンスラインを突破すると、必ず2人以上のサポートが付いている。
日本代表XVも突破するシーンはあったが、サポートがいないため孤立してしまい、結局ターンオーバーされて逆襲に遭ってしまっていた。
キック一つにしても、マオリは必ず相手のいない所に蹴り、バウンドまで計算しているかのようにマイボールとしてしまう。
バックス(BK)の細かくて素早いパス回しはジャパンのお家芸なのに、この日はマオリの方が遥かに速くて正確だった。
試合開始早々、日本代表XVの反則でペナルティ・ゴール(PG)を狙う。このキックは外したものの、トライではなく確実にPGを狙うところにマオリの「本気度」が窺い知れる
日本代表XVがいくら敵陣深く攻め込んでも、マオリがボールを獲るとあっという間にトライまで結び付けてしまう
日本代表XVにも見せ場があった。
前半25分、日本代表XVは敵陣ゴール前のマイボール・ラインアウトからモールを組み、一気に押し込むとマオリのフォワード(FW)はたまらず崩してしまい、モール・コラプシングを取られてペナルティ・トライ。
ジャパンが海外の強豪チーム相手にペナルティ・トライを奪うなんて、初めて見た。
さらに日本代表XVはスクラム戦でも圧倒、マオリは度々コラプシングの反則を取られていた。
そして後半33分、敵陣ゴール前の5mスクラムでも日本代表XVはグイグイ押し込み、またもやコラプシングでなんと2度目のペナルティ・トライ!
それにしても、レフリーのルーク・ピアース(イングランド協会)は判定がかなり早く、2回とも一発でのペナルティ・トライだった。
日本のレフリーだったら、何度かペナルティを与えた上で判定するだろう。
ついでに言うと、シンビンを命じる時にポケットからイエローカードを出した時も、電光石火の速さだった。
後半33分、日本代表XVは敵陣5mスクラムを押し込み、マオリは故意にスクラムを崩したとしてコラプシングを取られ、ペナルティ・トライの判定
マオリは押されるFWにイライラしたのか、あわや乱闘というシーンもあった。普段ならマオリの大男たちと喧嘩などする気にはならないだろうが、試合中のためかなり熱くなっていた。このプレーによりマオリのマーティー・マッケンジーがシンビン
試合が終わると、乱闘を忘れてお互いの健闘を称え合う両軍の選手たち
日本代表XVには他にもう1本トライがあった。
後半12分、リザーブで途中からナンバーエイト(№8)に入っていたアマナキ・レレィマフィのトライである。
マフィはトンガからラグビーでは無名の花園大学に留学、今年からトップリーグのNTTコミュニケーションズ・シャイニングアークスに入団した。
無名大学出身とあって全く注目されていなかったが、トップリーグでメキメキと頭角を表し、今回初めて正代表ではないとはいえジャパンのジャージを着ることになった。
そしていきなり、マオリを相手に初トライである。
ちょうどこの前日、BS朝日の「ラグビーウィークリー」という番組の「ワイルドな奴」というコーナーでマフィの特集が組まれていた。
マフィにとって、最高の形のデビュー戦と言えるだろう。
それにしても、完敗だったことに変わりはない。
BK戦で惨敗し、FW戦で優位に立つという、従来のジャパンとは全く逆の結果となった。
2つもペナルティ・トライを取って大敗するなんて聞いたことがない。
スクラムも、スプリングボクス相手ではこんなに押せないだろう。
来年のワールドカップに向けて、BK陣の強化とディフェンスの整備が急務である。
なお、マオリとの第2戦は11月8日(土)、14時から東京・秩父宮ラグビー場で行われる。
★11月1日(土)14時10分KO ノエビアスタジアム神戸(観衆:21,234人)
リポビタンDチャレンジカップ2014第1戦
●日本代表XV21-61マオリ・オールブラックス○(前半7-35)
日本代表XV 3T 3G 0PG 0DG