ジャンケンのルールを知らない人はいまい。
グーがチョキに勝ち、チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝つという、三つ巴の戦いである。
だが、このルールにはちょっと納得のいかない部分もある。
グーがチョキに勝つ、これはわかる。
グー、即ち石に対して、チョキたるハサミは切ることができないので負ける、ということである。
石をハサミで切るのは困難極まりなく、しかも刃こぼれすると予想されるので、グーがチョキに勝つのは当然だろう。
グーがパーに勝つ、これはどうか。
紙を意味するパーが、石(グー)を包み込むのでパーの勝ち、というわけである。
だが、ちょっとこれには異議を申し立てる。
硬度で言えば石の方が紙よりも遥かに硬いので、石は紙を突き破ることができる。
とはいえ、紙が石を包み込むことが出来るのも事実なので、グーとパーは引き分けとすべきではないか。
さらに、紙が石を包み込めるのなら、ハサミだって包み込むことは可能なはずだ。
もちろん、ハサミは紙を切ることが出来るためチョキはパーに勝つ、という理屈もわかるので、やはりチョキとパーも引き分けにすべきである。
即ち、
1位 グー 1勝0敗1分
2位 パー 0勝0敗2分
3位 チョキ 0勝1敗1分
という順位になるわけだ。
したがってネタラン式ジャンケンは、
(1)グーはチョキに勝つ。
(2)グーはパーとあいこ。
(3)チョキはパーとあいこ。
というルールを採用する。
ちなみに僕は幼少の頃、チョキが一番強いと思っていた。
何の根拠もないのだが、チョキがなんとなく一番強そうだったからである。
しかし今回の検証で、それが誤りだということが実証された。
ところで、ジャンケンのルーツは中国というのが定説となっているが、現在のようなグー・チョキ・パーのルールが出来たのは日本で、意外にも新しく江戸時代後半の頃らしい。
さらに近年では日本式ジャンケンが世界中に広まって、カナダでは毎年ジャンケン世界大会まで行われているそうだ。
英語ではジャンケンのことを、石と紙とハサミを意味する"Rock-paper-scissors" (略称RPS)という。
もっとも日本人ほど、誰でも知っているゲームというわけではないようだが。
ジャンケンに似た遊びとしては、ヨーロッパにモラというゲームがある。
遊び方は色々あるようだが、一例としては奇数の人と偶数の人をあらかじめ決めておいて、掛け声と共にお互いに指を出し、両者の指の合計が奇数なら奇数の人の勝ち、偶数の場合は偶数の人の勝ち、というものである。
いずれにしても基本的には数当てで、日本式ジャンケンのように指の形に意味を持たせ、強弱を決めるものではない。
サッカーやラグビーの国際試合では、キックオフかサイドかを決めるのにコイントスが行われるが、日本のラグビーでは結構最近までコイントスではなくジャンケンで決めていた。
「ミスター・ラグビー」と呼ばれた平尾誠二は、神戸製鋼のキャプテンを務めていた現役時代、試合前のジャンケンでは必ずグーを出していた。
相手のキャプテンは当然そのことを知っているのでパーを出して勝ちに来るが、そここそ平尾の狙い目で、平尾はわざとジャンケンで負けるためにグーを出し続けていたのである。
相手がジャンケンに勝ってキックオフを取るか、あるいはサイドを取って風上を選ぶか風下を選ぶかによって、相手の作戦がわかるからだ。
だが、そのことを知っていたあるキャプテンは、平尾と同じようにグーを出し続け、いつまでも無意味なジャンケンが続いたのでレフェリーが「エエ加減にせい!」と怒り出してしまった。
結局、相手キャプテンが根負けしてパーを出して勝ったが、試合は平尾の思惑通り神戸製鋼が勝った。
しかしこの平尾の奇策は、国際試合ではコイントスなので使うことはできなかった。
ちなみに、高校野球では現在でも未だに先攻・後攻はジャンケンで決めている。