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安威川敏樹のネターランド王国

お前はチョーマイヨミか!?

ネターランド王国憲法

第1条 本国の国名を「ネターランド王国(英名:Kingdom of the Neterlands)」と言う。
第2条 本国の国王は「禁句゛(=きんぐ)、戒名:安威川敏樹」とする。
第3条 本国は国王が行政・立法・司法の三権を司る、絶対王制国家である。
第4条 本国の公用語は日本語とする。それ以外の言語は国王が理解できないため使用禁止。
第5条 本国唯一の立法機関は「日記」なる国会で、国王が一方的に発言する。
第6条 本国の国民は国会での「コメント」で発言することができる。
第7条 「コメント」で、国王に不利益な発言をすると言論弾圧を行うこともある。
第8条 「コメント」で誹謗・中傷などがあった場合は、国王の独断で強制国外退去に踏み切る場合がある。
第9条 本国の国歌は「ネタおろし」とする(歌詞はid:aigawa2007の「ユーザー名」に記載)。
第10条 本国と国交のある国は「貿易国」に登録される。
第11条 本国の文章や写真を国王に無断で転載してはならない。
第12条 その他、上記以外のややこしいことが起きれば、国王が独断で決めることができる。

幻の麻雀トランプ

 麻雀好きの人というのは、暇さえあればずっと牌を握っていたいらしい。

たとえば慰安旅行のバスの中でも、後ろの方では旅の車窓そっちのけで4人固まってポンチイ騒いでいる。

でも、バスの中で麻雀をやるというのもなかなか不便だ。

ジャラジャラ洗牌(シーパイ=牌をかき混ぜること)していると寝ている人に迷惑だし、車中では揺れてせっかく積んだ山も崩れやすい。

何よりも広いスペースがないと麻雀はやりにくいし、車中には向かないゲームと言える。

 

その点、カード麻雀は便利である。

捨て牌を置けるテーブルさえあれば、バスの中でもトランプ感覚で麻雀を楽しめる。

実話を元にしたドラマ「スクール☆ウォーズ」では、不良高校生が授業中に牌をジャラジャラかき混ぜて麻雀しているシーンがあったが、実際にはさすがに教室で牌麻雀をしていたわけではなく、カード麻雀をやっていたにすぎない(まあ、麻雀をやっていたことには変わりないが。ちなみに筆者も授業中にカード麻雀をしたことがある。決して率先してやっていたわけではなく、悪友にそそのかされて)。

つまりカード麻雀は、不良生徒にも重宝する代物なのだ。

 

ところで、麻雀トランプというものをご存知だろうか。

と言っても、上記のような136枚の牌を1枚1枚カードにした麻雀ゲームではなく、54枚のカード(ジョーカー2枚を含む)で麻雀を楽しめる、というトランプである。

即ち、麻雀とトランプの両方で遊べるというスグレモノなのだ。

今から30年以上も前にあった、画期的なカードゲームと言える。

(注:トランプとは本来「切り札」という意味で、正式な名称は「プレイイング・カード」であるが、本項では便宜上、日本で一般名称となっている「トランプ」で統一する。)

 

この麻雀トランプの説明書には、

カード麻雀は、僅か54枚のカードで全ての役満を含めて、あらゆる役作りができますから、牌麻雀をしているのと変わらぬ楽しさが得られます」

と書かれている。

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136枚全ての牌を使ったカード麻雀なら 、牌麻雀と楽しさが変わらないのはわかるが、半分以下の54枚で本当に牌麻雀と同じように楽しめるのだろうか。

実はこの麻雀トランプ、普通のトランプに2~4枚の牌の図柄が描かれているのだ。

2~4枚というのは、要するにトイツ(雀頭)、コーツ、シュンツ、カンツなどである。

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しかし説明書には「あらゆる役作りが可能」と書かれている。

でも、シュンツやコーツだけでは国士無双を作るのは不可能ではないか?

そこは心配ご無用、ちゃんと国士用のカードもあるのだ。

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東南西のカードなら、上の写真にある北北のカードを組み合わせる、という形になる。

つまり、国士を作る時は、

東南西、北北、白發中、一萬一索一筒、九萬九索九筒

の5枚のカードを集めれば良い。

 

普通の麻雀では絶えず13枚の牌を持っていて(カンをした場合を除く)、最後にツモアガリするかロンアガリすると14枚になるが、麻雀トランプの場合は1枚の中にほぼ一面子できているので、絶えず4枚持っていて最後にツモアガリかロンアガリで5枚になる、というわけだ。

それだと簡単に和了(アガ)ってしまう?

そりゃ、ほとんどのカードの中に一面子できているのだから、四面子一雀頭を作るなど造作もないことだ。

そこで縛りを加える。

普通の麻雀は一飜縛りだが、麻雀トランプではなんと満貫縛り。

しかも場の二ゾロ、即ちバンバンを点数に加えないから、ドラ以外で六飜以上の役を作らなければならない。

なお、リーチをかけないと和了れないので、リーチ以外の実質五飜縛り(ツモアガリの場合は四飜縛り)ということになる。

細かいルールは以下の通り。

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全ての和了が満貫以上になるので、細かな符計算は必要ない。

また、全ての和了にリーチが必要と言ったが、役満も例外ではない。

天和、地和、人和の場合は配牌からツモる前にリーチ宣言をする必要がある。

しかも、この3つの役満でもリーチを含めて六飜以上ないと和了ることはできない。

 

なお、フリテン和了はしても構わない。

両面待ちも多面待ちも関係ないのだから、いちいちフリテンを取り締まるわけにもいかないのだ。

そして、日本の麻雀ではほとんど使われなくなった花牌も存在する。

花牌はドラと同じ役目で、もちろん縛りには関係ない。

春夏秋冬全ての花牌を集めて和了ると四天花(スーテンホウ)という大役満役満の1.5倍)になる。

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「あらゆる役作りができます」と説明書に書いている通り、僅か54枚のカードで全ての役を実現できるのが麻雀トランプの最大の売りだ。

これは特許もんのアイディアである。

ただし、牌麻雀と違って制約があるので、実際の麻雀とは飜数が違う役もある。

以下が実行可能な全ての役である。

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赤文字の役が実際の麻雀とは違う飜数だ。

たとえば作りやすい役の代表である一飜役のタンヤオは、麻雀トランプでは二飜である。

これはシュンツが各種、一二三、四五六、七八九の3種類しかなく、二三四五六七などがないため、中張牌のみで和了るのが結構難しいからだ。

 

反面、本来なら役満四暗刻が僅か二飜という安い役に成り下がっている。

四暗刻タンヤオが同じ値段という、凄まじい麻雀だ。

これはコーツのカード4枚を集めるのは簡単だからだろう。

同じコーツ系のトイトイが普通の麻雀と同じく二飜、三暗刻が一つ下がって一飜だが、これらの役は重複しないと思われる。

ポンがないのだから(もちろんチーもない)、トイトイの形は全てトイトイ三暗刻四暗刻になる。

ツモリ四暗刻でロンアガリしたらトイトイ三暗刻の三飜で、四暗刻と同じ飜数(四暗刻+門前清)になってしまうのだから、矛盾が生じてしまう。

 

安過ぎる四暗刻に対して、ベラボーに高いのが五対子(ウートイツ)。

七対子でないのは、5枚のカードでは五つしかトイツを集められないからであり、二飜から五飜へ異例の大出世である。

これはトイツの数が少ないからだが、四暗刻よりも七対子、もとい五対子の方が遥かに値段が高いというのも妙なものだ。

普通の麻雀なら、トイツが多い時は七対子を狙っていて、意外にもアンコが増えてきたので思い切って四暗刻を狙う、というケースが多い。

麻雀トランプではその逆で、トイツが増えてくると思い切って五対子を狙う、という形になる。

あと、これら以外で実際の麻雀と違う飜数の役はチンイツで、六飜から四飜と若干安くなっている。

 

さて、一通りのルールを覚えて役の飜数もマスターし、実際にゲームをやってみたら……。

遥か昔にやったことがあるが、ハッキリ言って面白くなかった。

「牌麻雀と変わらぬ楽しさ」というのは、あまりにも無理がある。

配牌で和了っているようなものだから、和了に向って手作りをしていくという醍醐味もなく、フリテン自由だから相手の手を読む駆け引きもない。

役作りができると言っても、やはり牌麻雀の楽しさの比ではない。

 

むしろ一番上の写真の説明書に書いてある「雀ポーカー」の方が面白かった。

「麻雀とポーカー両方の面白さを加味した遊び」と書いているように、ポーカーの要領で麻雀役を競うゲームだ。

こちらはポーカー的な駆け引きがあって、案外楽しめた。

しかし、わざわざ麻雀トランプを買って雀ポーカーをするなら、トランプで普通のポーカーをやればいいだけの話だが。

ちなみに、説明書の一番下に書いている「ローンゲーム」は、三つのゲームの中で一番面白くなかった。

 

とはいえ、麻雀トランプが面白くなくても、普通のトランプとしても使えるわけだから、決して損にはなるまい。

しかし、写真を見ればわかるようにトランプの図柄が小さいので、非常に見にくい。

結局、トランプ・ゲームを楽しむ時は普通のトランプを使っていた。

麻雀トランプの存在を次第に忘れ、このエポック・メイキングなカードゲームはタンスの引出しに長い間眠ることになった。

 

しかし最近、なぜか麻雀トランプのことを思い出し、家のどこかにないかと探し回った。

でも、なかなか見つからない。

そして先日、ようやく麻雀トランプを見つけた。

約30年ぶりに見る、実に懐かしいカードだった。

これは後世に伝えなければならない、と考えて、ここに日の目を見せることにしたのだ。

 

「麻雀トランプ」をネットで検索しても、このカードゲームはヒットしなかった。

出て来るのは136枚を使ったカード麻雀か、トランプを使った麻雀(トランプを何組か使って、絵札を字牌に見立てたような方法)を考案した人のホームページだけだった。

もうこの麻雀トランプは製造中止になったのだろうか。

 

しかし今回、麻雀トランプが見つかったおかげで、発売元が判明した。

「エンゼル・トランプ株式会社」という会社だ。

トランプや花札任天堂の物を買うのがほとんどなので、馴染みのない会社名である。

ひょっとして、もう存在しない会社かとも思い、恐る恐る検索してみた。

 

ヒットした!

「エンゼル・トランプ株式会社」は確かに現存する会社だった。

さっそく同社のホームページを開いて、商品の項目を見てみたが、残念ながら麻雀トランプはなかった。

同社にとっても麻雀トランプは失敗作だったのだろうか。

「麻雀トランプは面白くなかった」と書いてしまったが、販売終了と知ると妙に寂しい。

もう一度復活させて欲しい、と言うと、あまりに虫がいい話だろうか。

 

何よりも、トランプと麻雀の両方が楽しめる、という発想が素晴らしい。

しかも、僅か54枚のカードで麻雀に合わせた、これだけのルールを考え出したというのも脱帽である。

雀ポーカーが面白かったように、麻雀に拘らず別のゲームと組み合わせた色んな遊び方を考案すれば、もっと可能性が拡がったかも知れない。

いずれにしても、麻雀トランプは決して「いらない子」だったのではなく、様々なゲームを構築するために必要な関門だったのだろう。

 

そうそう、麻雀トランプのもう一つの活用法を思い出した。

麻雀初心者に対して、麻雀トランプを使うとルールを説明しやすいのである。

1枚のカードで既に面子が作られているのだから、和了の形をすぐに示せる。

また、役を教えるのにも重宝したものだ。

やはり麻雀トランプは復活させてもらうしかない。