今日、フィジーのラウトカチャーチルパークでラグビーのパシフィック・ネーションズ・カップ(PNC)のフィジー×日本戦が行われ、日本が24−13で勝って同大会初制覇を成し遂げた。
リーグ戦を戦った相手はフィジーの他にトンガとサモアといういずれ劣らぬ実力国だっただけに、この優勝には価値がある。
とはいえ、試合内容としてはかなり不満が残るものだった。
フィジーは前半18分にシンビン、20分に退場者を出してこの8分間は13人で戦うという、ジャパンが絶対的に有利な立場だったのに、前半を0−8で無得点のまま折り返す。
後半に入ってもフィジーは1分にシンビン、19分に退場者を出し、39分にもシンビンを出して最終的には12人になってしまった。
ジャパンは後半に24点取って逆転勝ちしたものの、これは勝って当たり前で、こんな有利な条件で勝てないようではテストマッチなどやらない方がいい。
しかもこの試合、ただ勝つだけでは優勝はできず、勝ち点の関係で4トライ以上が必要だったが、その4トライ目を取ったのがフルタイム間際という、薄氷の優勝だった。
フィジーは最後の20分を13人で戦っていたのだから、4トライぐらいはさっさと取っておかねばならなかった。
ディフェンス面でいえば、体の大きいフィジー選手の突進をアッサリ許し、スコーンと抜かれてしまう。
そのため、相手が1人減ってもやっと互角という感じで、2人減った時点でようやくアドバンテージを得た、という印象だった。
オフェンス面ではセットプレーの不安定さが目立ち、ラインアウトではしばしばマイボールを奪われていた。
ジャパンが絶対に負けてはいけないスクラムでも、相手FWがベストメンバーではない(退場者が出たため、バックスの選手がスクラムに加わっていた)にも関わらずスクラムを回され、相手ボールになってしまったりした。
ジャパンもメンバーを大幅に入れ替えたのでベストメンバーというわけではなかったが、今後に大きな課題が残った。
ジャパン以上に反省点が多かったのがフィジーだろう。
退場者2人、シンビン3人というのは尋常じゃない。
そんなラフプレーをしなくてもジャパンの突進を止めていたのに、全く不可解だ。
退場者の2人はスタン・ハンセンばりのウエスタン・ラリアット(スティッフアーム・タックル)をお見舞いし、いずれも一発レッド。
シンビンの3人のうち2人は相手を持ち上げて地面に叩き付けるという、こちらはフロント・スープレックスのような危険なタックルでイエロー。
かつてはフィジアン・マジックと呼ばれる魅惑的なプレーでファンを喜ばせたのに、こんなラフプレーばかり見せられたのは残念である。
試合内容に不満があるとはいえ、ワールドカップイヤーにこれだけの相手に対して2勝1敗で優勝したのは大きな収穫だろう。
ワールドカップで直接戦うトンガには28−27と1点差とはいえ、接戦で勝ち抜いたことに意義がある。
ただ、今回のPNCでトンガは2位に甘んじたとはいえ、得失点差では唯一のプラス、しかも+33点とダントツの成績を挙げているのだ(ジャパンは−7点)。
ジャパンが完敗したサモア相手にも、トンガは29−19で快勝している。
今日、ジャパンが2人多い状態でやっとこさ勝ったフィジーに、トンガは36−18というダブルスコアで完勝しているのだ。
ワールドカップでのトンガ戦はかなり厳しい戦いを余儀なくされるだろう。
ワールドカップまであと2ヵ月を切った。
ジャパンのジョン・カーワンHC(ヘッドコーチ)はワールドカップ2勝を公約に掲げている。
ジャパンが戦う相手はフランス、ニュージーランド、トンガ、カナダだが、このうちフランスとニュージーランドにはまず勝てない。
つまり、2勝するにはトンガとカナダに確実に勝たなければならないのだ。
この両国はジャパンにとって比較的相性がいいとはいえ、簡単に勝てる相手ではない。
というよりも、この両国相手に1勝するのさえ、相当険しい道程だろう。
過去のワールドカップで、ジャパンは1勝1分した以外は全て敗れている。
ジャパン唯一の1勝は、1991年の第2回大会でのジンバブエ戦で(於・北アイルランド)、この時は52−8と圧勝した。
それ以来20年間、ジャパンはワールドカップでの勝利の美酒を味わっていない。
唯一の引き分けは、前回の2007年の第6回大会でのカナダ戦で(於・フランス)、12−12とフルタイム寸前でのトライ&コンバージョンの同点劇だった。
そしてこの時のヘッドコーチだったのが、今大会も指揮を執るカーワンである。
カーワンはあのフランスでの屈辱と歓喜からの4年間、ジャパンをどう構築してきたのか。。
カーワン・ジャパンの集大成が、2ヵ月後にカーワンの母国であるニュージーランドで現れる。
2007年のワールドカップでの日本×カナダ戦