紀州路快速の和歌山入りは3分遅れてしまい、我々はますます焦った。
キオスクに売っている駅弁に目を奪われつつも、「駅弁はどない?」と言うオバちゃんに対して、「ごめん、時間ないねん!」と言って和歌山線ホームを目指した。
なんとか和歌山線9時4分発の電車に間に合った。
トイメンにはわかやま電鉄貴志川線の電車が停まっていたが、たま電車ではなく、いちご電車だった。
和歌山線はひたすらゴトゴト、長椅子電車ワンマンカーで2両編成の完全なローカル線である。
ほとんどが無人駅のため、乗客は路線バスのように運賃箱にお金を入れて降車する。
そのため、先頭車両と広報車両には電光掲示型の運賃表がある。
つまり、そこには駅名が表示されているわけだ。
和歌山線は難読駅名の宝庫である。
「この駅名はなんと読むかわかる?」と参加者に問い掛け、あーでもない、こーでもないと参加者が悩む姿を見るのは快感だった(^<^)
「千旦」「布施屋」「笠田」「中飯降」など、枚挙に暇がない。
「これはなんて読むの?」と問われると、「いい質問ですねぇ〜」と、池上彰ばりに答えていた。
和歌山線の乗車時間はとにかく長い。
各駅停車のうえ、単線なのでしょっちゅう行き違いがある。
紀ノ川沿いを走る電車は、ずっと山間風景だ。
それでも、今回は一人旅ではなく大勢の人がいたので、おしゃべりしながらだとあっという間に時間が過ぎた。
南海高野線との乗り換え駅である橋本駅を過ぎて、五条駅へ行った。
ここは既に奈良県である。
時間帯によっては和歌山〜奈良間の直通電車もあるのだが、今回のダイヤでは五条止まりで、そこから乗り換えなければならない。
五条から乗り換えと言っても、車両自体はワンマンカーの二両編成と、さほど変わらない。
ここからゴトゴト、奈良県の山間部を走る。
唯一大きな駅と言えば、近鉄南大阪線との乗り換え駅である吉野口駅ぐらいだろうか。
それでも、吉野口駅を過ぎて北上すると、段々都市部の風景が見えてくる。
そしてやがて、高田駅に到着した。
高田駅は大和高田市の中心駅であり、様々な商業施設もある。
大和高田市は、奈良県では人口密度が1位の都市だ。
久々に見る都会風景に、電車は長らく停車する。
スイッチバックをするためだ。
本来、和歌山線はこのまま西北に行って、奈良県の王寺駅が終着駅となる。
しかし多くの電車はこのルートを取らず、高田駅から桜井線(万葉まほろば線)に入線するのだ。
王寺駅へ向かう和歌山線とは逆方向となるため、スイッチバックする必要がある。
そのため、運転士はそれまで後方車両だった運転席に乗り込む。
こうして、五条から乗った電車は王寺に向かう路線に背を向け、大和時代のロマンが漂う桜井線に歩を進めた。
(つづく)