近年は地球温暖化が問題視されているが、今年の冬は例外らしい。
日本列島全域が寒波に襲われ、各地で雪の被害が相次いでいる。
雪には慣れているはずの日本海側の人達も、今年の大雪には悩まされ、事故が多発し交通網も寸断されている。
今日は温暖な南紀(和歌山県南部)でも積雪し、太平洋側でも例年になく降雪しているが、やはりそれは日本海側の比ではない。
日本海側に大雪を降らせるのは、ユーラシア大陸北部に発生するシベリア高気圧である。
これが冬になると南下して日本にやってくるわけだが、それだけでは大雪にはならない。
大陸で育ったシベリア高気圧は気温が非常に低いが、乾燥しているからだ。
シベリア高気圧が日本に来る途中に日本海を通るが、大陸と列島の間にあるこの日本海が曲者なのだ。
乾いたシベリア高気圧は日本海の海水を吸い上げ、湯気が発生し、積乱雲(入道雲)が現れる。
入道雲と言うと夕立ちを降らせる夏の雲というイメージが強いが、実は冬の日本海の方が多く発生するのだ。
この入道雲が、日本海側に大雪をもたらす。
もし日本海がなければ、日本海側はただ単に寒いだけで、大雪が降ることはない。
しかし日本海があるために、新潟や北陸地方は緯度が低いにも関わらず、世界有数の豪雪地帯となっている。
北緯35度ぐらいの平野部で、これだけ大雪が降るというのは世界でも珍しいのではないか。
日本海側に住む人にとって、日本海とは大被害を与えるにっくき海、ということになるのだろう。
もっとも、日本海がなければ「日本海側」とは呼ばれないだろうが。
また、日本海があるからこそ、日本海の海の幸に恵まれている、とも言える。
そしてそれだけではなく、日本海側の大雪は大いに役に立っているのだ。
日本海側の山に降り積もった雪は、春になると溶け出して川に注がれる。
日本海の海水が、雪によって真水となり、飲料水や水田を育てる水となる。
新潟や北陸地方が、日本の食料を支える穀倉地帯となっているのも頷ける。
いわば日本海側の大雪は、日本には欠かせない巨大なダムとなっているわけだ。
日本列島は、夏前には梅雨のために大雨に見舞われ、秋になると台風の通り道となり、冬になると大雪の被害も出る。
また世界有数の地震国でもあり、現在でも鹿児島・宮崎両県では新燃岳の噴火による被害は大きい。
だが、梅雨や台風、大雪は日本に豊かな水をもたらし、地震被害の温床となる火山活動は温泉などの観光資源にもなっている。
これだけ自然災害が多発する小さな島国に、1億人以上の人が住み、世界でも重要な先進国になっている背景として、地理的要素による奇跡的な天の配分があるような気がしてならない。