阪神はクライマックスシリーズ・ファーストステージで巨人に0勝2敗で敗れ、ファイナルステージ進出はならなかった。
しかし、これは必然の敗戦だったと言える。
0勝1敗で迎えた第2戦、阪神は6回表を終わって4−2でリード。
6回裏、無死一塁で先発の久保に打順が回ってきたとき、代打を出した。
僕はこの時、イヤな予感がした。
ひょっとして、7回から久保田を投入するのではないかと。
久保はこの段階で98球、投球内容ではもう1イニング投げて欲しかったが、打順の関係で降板は仕方がない。
結局、この回に平野の2点タイムリー3ベースが飛び出して、6−2と点差は4点に広がった。
4点差なら、7回は渡辺あたりに1イニングを任せて、8回は久保田、9回は藤川球児という、理想的なリレーを送れるだろうと思った。
しかし、7回からは予定通り(としか思えない)久保田を投入。
この流れで行くと、7,8回を久保田で行って、9回を球児で逃げ切る、というパターンだろう。
あるいは、8回途中でピンチになれば、球児を投入する、と考えていたに違いない。
だが、久保田は7回に平野のタイムリーエラーがあったとはいえ、高橋由伸に右越え2ランを浴び1点差に詰め寄られる。
問題はその裏である。
7回裏、二死無走者で浅井がセンター前ヒット。
さらに藤川俊介が四球で出て二死一、二塁。
僕はこの時「どうせ点が取れないのなら、いっそのことアウトになってくれ」と思っていた。
しかし野球とは面白いもので、こういう時に限って連続出塁となる。
打順は久保田に回ってきた。
こうなると、久保田に代打を出さざるを得ない。
代打は神様・桧山。
しかし代打の神様と言っても、今季の成績は打率.254。
案の定、桧山は三振に倒れ、点は取れないわ、久保田を降ろしてしまうわという、最悪のパターン。
1点リードながら、この時点で僕は阪神の負けを確信していた。
8回からは当然のことながら、球児が登板。
1点リードを守りきれる投手なんて、阪神には他にいないのだ。
しかし今の球児に、僅か1点リードを2イニングにもわたって、巨人の強力打線相手に守りきるのは、あまりに酷に思えた。
その証拠に、シーズン終盤ではホワイトセルに逆転ホームランを浴び、村田にも逆転ホームランを打たれていた。
特に村田に打たれた1球は、高めのストレートをスタンドに運ばれてしまうという、球児には考えられない一投だった。
球児の高めのストレートは、打者はみんな空振りしてしまうのに、である。
それだけ球児の球威が落ちていたのだ。
8回からマウンドに上がった球児は、二死を簡単に取ったものの、変化球に頼る球児らしからぬピッチング。
そこから安全パイの亀井に四球を与え、小笠原に2ベースを浴び、ラミレスに変化球を捉えられて逆転打を許してしまった。
これは明らかに、球児の登板過多による弊害である。
この日も、シーズン終盤も、球児はストレートで空振りを取れなくなっていた。
さらにコントロールが定まらず、四球で走者を溜めて一発を浴びるシーンも目立った。
シーズン途中から、リードを奪うと球児を平気でイニングまたぎ登板させてきた。
結果的に勝つ試合も多かったが、その代償はあまりにも大きかったと言わざるを得ない。
この目先の1勝のために、シーズン終盤の貴重な2勝を失ってきたのだ。
シーズン中にもっと我慢して、久保田と球児を1イニング限定で使っていたら、いちばん大事な優勝争いのシーズン終盤やCSでは、久保田―球児の盤石リレーが見られただろう。
今日の試合だって、7回を他の投手で任せたら、4点リードを守ることぐらいできたと思える。
それを無理して7回から久保田を投入して、結局は逆転負けを許してしまう。
無理を重ねてきたツケが最後の最後で回ってきたのだ。
この敗戦の責任は、当然のことながら真弓監督にあるだろう。
それ以上に久保ピッチングコーチの方が悪いと思われるが、チームの最高責任者は監督なのだから、真弓監督に責任が及ぶのは当然である。
だが僕は、それ以上に阪神OBの評論家の方が罪が重いように思える。
もうひとつ言えば、虎番記者と言われるベテラン記者どもである。
この連中は、阪神が惜敗するたびに
「なぜ久保田を早めに使わない?なぜ球児を8回から投入しない?」
などとのたまっていた。
この御仁たちは、未だに村山と江夏の幻影を追っているのか、現代の野球を全くご存じない。
そして困ったことに、阪神というチームはこういういい加減な評論家や虎番記者どもの影響力が強くて、監督のクビも飛びかねないのだ。
僕が知る限り、久保田や球児の登板過多を危惧していた評論家は有田修三ぐらいである。
「アリタの法則」と呼ばれるぐらい、有田修三の予言は的確だ。
それ以外の評論家は、結果論であーだ、こーだと言っているのみである。
もう来季の方針は決まった。
8回は久保田、9回は球児という、1イニング限定を厳守することである。
そして、7回の1イニングを任せられる投手を育てること。
さらに、能見、久保、岩田が最低7イニングを投げられるようにすれば、おのずから優勝への道が拓かれる。