日本での国境問題で真っ先に思い浮かぶのが北方領土であろう。
他にも竹島や尖閣諸島の問題もある。
これらは国益に直結し、こじれると国際紛争にまで発展する可能性が高いだけに、ナイーブな問題と言える。
それに比べると、中央集権国家である日本国内での県境はさほど注目されないが、3月1日に群馬県太田市の一部と埼玉県深谷市の一部との間に「領土交換」が行われた。
江戸時代の1875年に日本とロシアの間に交わされた「樺太・千島交換条約」ならぬ、さしずめ「太田・深谷交換条約」だろうか。↓
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20100302ddlk11010289000c.html
この「領土問題」は、廃藩置県が行われた明治時代に誕生した群馬県と埼玉県との県境が、蛇行していた利根川を基準に決めたために起こった。
その後、利根川の改修工事のため、川が直線になり、利根川より北の一部が埼玉県となり、南の一部が群馬県となった。
しかしそれでは、行政サービスに不備が生じる。
市役所に行く時も、この地域の住民はわざわざ太い利根川を越えなければならないのだから。
公立学校に通うのにも、行政の壁が立ちはだかる。
そうした不便が、1世紀ぶりに改善された。
他にも平成の大合併により、長野県の山口村が岐阜県の中津川市に合併されて、岐阜県になった例がある。
ちなみにこの山口村は、島崎藤村の故郷だ。
県境未確定地域で有名なのが、富士山の山頂付近である。
富士山の山頂、いわゆる「剣ヶ峰」付近には、山梨県と静岡県とのハッキリとした県境が約5kmにわたって存在しない。
これは富士山にある浅間大社との絡みがあり、かなり複雑な問題だ。
県境未確定地域は富士山のような日本を代表する霊峰、しかも人が住んでいない山中だからこそ存在すると思われるかも知れないが、そんなことはない。
実は都会のド真ん中、東京都23区内にも県境未確定地域がある。
それは東京都江戸川区と、千葉県浦安市および市川市の地域だ。
さらに東京都葛飾区と、埼玉県三郷市の地域である。
実は日本国内に、47都道府県の内、約半数の23都県に県境未確定地域があるのだ。
面積にすると、都道府県面積第2位の岩手県に匹敵する広さだ。
さらに、県境、市町村境とも確定しているのは、僅か9県。
近代国家態勢が整った国でもこの有様なのだから、行政の境を決めるのは難しい問題なのだろう。