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安威川敏樹のネターランド王国

お前はチョーマイヨミか!?

ネターランド王国憲法

第1条 本国の国名を「ネターランド王国(英名:Kingdom of the Neterlands)」と言う。
第2条 本国の国王は「禁句゛(=きんぐ)、戒名:安威川敏樹」とする。
第3条 本国は国王が行政・立法・司法の三権を司る、絶対王制国家である。
第4条 本国の公用語は日本語とする。それ以外の言語は国王が理解できないため使用禁止。
第5条 本国唯一の立法機関は「日記」なる国会で、国王が一方的に発言する。
第6条 本国の国民は国会での「コメント」で発言することができる。
第7条 「コメント」で、国王に不利益な発言をすると言論弾圧を行うこともある。
第8条 「コメント」で誹謗・中傷などがあった場合は、国王の独断で強制国外退去に踏み切る場合がある。
第9条 本国の国歌は「ネタおろし」とする(歌詞はid:aigawa2007の「ユーザー名」に記載)。
第10条 本国と国交のある国は「貿易国」に登録される。
第11条 本国の文章や写真を国王に無断で転載してはならない。
第12条 その他、上記以外のややこしいことが起きれば、国王が独断で決めることができる。

ダメ外人列伝〜その11

ドン・マネー(近鉄)


マネーはミルウォーキー・ブリュワーズなどで活躍、メジャーリーグのオールスターにも出場するなどの名プレーヤーだった。
37歳で引退し、農場で家族と共に余生を過ごそうとしたが、1984年に近鉄からオファーがあり、2年契約2億2千万円という当時としては破格の待遇で入団。
近鉄に入団してからのマネーは噂に違わぬ長打力を発揮し、開幕からホームランを量産。
ここまではとてもダメ外人とは言えない。


しかし、マネーが優良外人からダメ外人呼ばわれされる瞬間が唐突にやってきた。
開幕から僅か1ヶ月で突如退団を宣言するのである。
しかもその理由が「球場の設備が不満」というものであり、さらに弟分の新外国人、リチャード・デュランまで一緒に帰国したのだから、日本のファンからは「外人を甘やかすな!」との怒号が飛んだ。
「名前がマネーだけに、そんなにマネーが大切か!」というお決まりのベタなヤジを浴びせかけて。


だが、実際のマネーはわがままと呼べるものではなく、むしろ近鉄の契約内容に不備があったという声が現在では一般的である。
近鉄球団はマネーに対し、メジャー時代と変わらない生活環境を保証するから……、と言って、日本でのマンションのパンフレットを渡した。
パンフレットを見たマネーは、緑に囲まれてなかなかいいマンションじゃないか、と満足した。
しかし実際に入居してみると、周りに緑なんか全くなく、ゴキブリがワンサカ出て来るオンボロアパート(日本人にとっては平均的なマンションだったのだろうが)。
ゴキブリが出てくるのならゴキブリホイホイを置いておけばいいじゃないかと思うかも知れないが、そんな問題ではない。
約束していた物件と全く違うことがマネーにとって問題だったのである。


さらに、そのマンションは当時の近鉄の本拠地だった日生球場藤井寺球場から遠く離れており、マネーは1時間半も好奇な目に晒されながら電車に揺られて毎日通わなければならなかった。
これでは精神的にも肉体的にも疲れてしまうと考えたマネーは、やむなくタクシーで球場通いすることになる。
いくら年俸1億円と言っても、タクシーに1時間半も乗っていれば1万5千円ぐらいはかかっただろうし、毎日続くとその出費はバカにならない。
しかも往復3時間も通勤時間(?)がかかれば、家と球場の往復だけで時間が費やされ、ゴキブリに悩む家族はたちまちホームシックにかかってしまった。


そして1時間半かけてロッカールームに辿り着くと、出迎えてくれるのはネズミたち。
当時の日生球場藤井寺球場のロッカールームは川崎球場と並び最悪の汚さと言われ、選手会からも改善要求が出されていた。
さらに、風呂はボロボロで入るとかえって体が汚れるんじゃないかとさえ思えた。
メジャーの豪華な施設に慣れていたマネーにとって、それは信じがたい光景だった。


アメリカでメジャーリーガーと言えば、まさに殿様。
試合が終われば、気持ちのいいジャグジー風呂に浸かって疲れを癒す。
綺麗で広々としたロッカールームで着替えを済ませてユニフォームをその辺に脱ぎ散らかしておくと、翌日には用具係がちゃんとクリーニングをして、綺麗に畳まれて自分のロッカーに置いてある。
風呂に入った後はビュッフェの施設が整った広いクラブハウスでビールを呑み、豪華な食事を楽しみながらチームメイトと談笑しあう。


ところが日本では、ゴキブリが出るアパートに住まわされ、ネズミが出るロッカールームで着替えさせられる……。
まさしく前門のゴキブリ、後門のネズミ、である。


かくして、マネーは開幕から1ヶ月で球団に対し退団すると告げた。
職場放棄は良くないというのが大方の意見だが、マネーが他のダメ外人と違うのは、このときに契約金と年俸は全て返す、と申し出たことだ。
金だけ貰って働かないというダメ外人に比べると、マネーは球団に対し言いたいことは山ほどあるが、途中退団するのは事実だし、いただいたお金はお返しする、と言ってきたのだ。
権利ばかりを主張するイメージが強いアメリカ人選手にしては、驚くほど殊勝な態度ではないか。
むしろ、義理人情を重んじる日本人的な発想で、「ダメ外人列伝」シリーズで紹介したとはいえ、マネーは決してダメ外人ではなかったと筆者は考える。


マネー退団後の翌年、近鉄球団は貸球場の日生球場は無理としても、自前の藤井寺球場のロッカールームと風呂を改装し、近鉄の選手たちが満足できるほどピカピカになった。
ある意味、マネーのとった行動が近鉄球団を動かし、選手の待遇改善に繋がったというのは穿ちすぎる見方だろうか。


現在、マネーはブリュワーズ傘下の2Aチームで監督をしている。


日本滞在期間約1ヶ月。出場29試合。本塁打8本。打点23点。打率.260。盗塁0。三振10。