最近、大阪ネタが続いていたが、今日もまた大阪ネタ。
今日の朝日新聞で、近鉄南大阪線の大阪阿部野橋駅が、日本一高いビルになると一面で報じていた(おそらく大阪本社版だけのスクープだろうが)。
大阪阿部野橋駅といえば、近鉄南大阪線のターミナル駅であり、JRや地下鉄の天王寺駅とも乗り換え可能な、南大阪の玄関口だ。
なぜ乗換駅なのに駅名が違うのかといえば、大阪阿部野橋駅は阿倍野区に、天王寺駅は天王寺区に属しているからである。
ただし、大阪阿部野橋と、阿倍野区では「べ」の漢字が違う。
この大阪阿部野橋駅には駅ビルとして近鉄百貨店本店が入居しているが、それを全面改修し、百貨店としての売り場面積日本一、会社のテナントやホテルとしてビルの高さ日本一(300m)にする計画なのだそうだ。
これは、大阪近鉄バファローズやあやめ池遊園地などのリストラが終了し、今後は攻めの事業を展開するという。
ちょっと待て、そんな金があるのなら、なんでバファローズを手放したんや!!
なぜ日本一のビルを建てるかといえば、そのくらいの話題性を作らないと活性化しないからだという。
まるで南港にWTCをブッ建てた役人の発想ですな。
これを「平成の通天閣」と位置づけるのだという。
ただ高いものを建てて通天閣でございとは、歴史と情緒に満ちた通天閣にあまりにも失礼ではないか。
通天閣は、東京タワーの僅か3分の1の高さでありながら、あれだけの存在感を示しているのだ(通天閣は103m、東京タワーは333m)。
ちなみに、アベノ界隈には最近、高層マンションビルが乱立しており、その売りは「大阪や生駒山が一望できるマンション」だ。
ところが、近鉄不動産がやたら高層マンションを建てて景観が楽しめなくなったために、「話しが違う」と入居者が訴えを起こすことも頻発した。
アベノにこんなものをブッ建てられたら、またもや高層マンション入居者の反発を招くだろう。
今回、なぜ近鉄がこんな構想を発表したのかといえば、アベノ・天王寺界隈が、キタ(梅田)やミナミ(難波・心斎橋)に客を奪われ、衰退しているからだという。
その流れをアベノ・天王寺に引き寄せたいのだそうだ。
この思いは当然だろう。
地下鉄御堂筋線の梅田駅から天王寺方面行きの電車に乗ってみるといい。
梅田から難波までは大変な混雑だが、難波に着くと多くの乗客が降りてしまい、車内はたちまち空いてしまう。
ちなみに僕は長らく近鉄南大阪線の支線である長野線沿線に住んでおり、大阪市内に行くときは必ずアベノに一端足を着ける。
ところが、アベノ・天王寺で用が事足りることはほとんどない。
特に他人と会うときは、アベノ・天王寺ではなく、大抵はキタやミナミだ。
じゃあ、アベノ・天王寺はそれほど魅力のないスポットなのか?
そんなことはないと思う。
まずアクセス面で見てみると、近鉄南大阪線の他に、地下鉄御堂筋線と谷町線が通じている。
そしてなによりも、JR環状線がある。
しかも環状線の天王寺駅は、キタの大阪駅(梅田)に対する、南の玄関口だ。
これは難波にもない、素晴らしいメリットだ。
JRで言えば、関西空港や和歌山と結ぶ阪和線(紀勢線)や、奈良と結ぶ大和路線(関西本線)にも通じている。
これだけの利点がありながら、ミナミの後塵を拝してきたアベノ・天王寺の怠慢を責めたい。
よく、「本当の大阪らしさはキタではなく、ミナミにある」と言われるが、そのミナミ以上に大阪らしいのがアベノ・天王寺地区ではないか。
アベノの路地に入ると、なんともいえない飲食店がある。
これぞ大阪!と言えるだけの不思議な情緒があるのだ。
アベノ・天王寺には近鉄百貨店やアポロビルといった商業施設があって、近年にはJR天王寺駅に「天王寺MiO」というデパートができたり、「HOOP」というファッションビルもできた。
しかし、ミナミへの人の流れを止めることはできなかった。
つまり、そんなものではアベノ・天王寺に人を惹き付ける魅力がなかったのだ。
アベノ・天王寺地区を活性化させるのは大歓迎である。
でもそれが、「日本一高いビルを建てる」というのでは、それは少し違うのではないか。