警察署というのは普通、所轄自治体の名前が付く。
先日、ここで書いた河内長野市なら河内長野署、富田林市なら富田林署など。
これが大阪市のような政令指定都市なら、区の名前が警察署になる場合が多い。
天王寺区なら天王寺署、浪速区なら浪速署といった具合だ。
例外は、複数の警察署を持つ北区と中央区だけである。
ところが、大阪市のお隣り、堺市の警察署ではこの根本原則が通用しない。
例えば、堺北署は北区が管轄ではなく、堺区の管轄だ。
ではその北区を管轄している警察署といえば、なんと堺東署である。
東区の管轄警察署は、美原区にある黒山署で、東区には警察署がない。
堺南署が管轄しているのは中区と西区で、南区は管轄外。
その南区管轄は泉北署で、「南」なのに「北」の名前が入っている。
ハッキリ言って、ムチャクチャである。
なぜこんな腸捻転現象が起きたのだろうか。
まず、これらの警察署は、政令都市以前に発足した警察署だということだ。
堺市は他の市に比べて市域が広く、人口も多いので複数の警察署が必要だった。
そこで、堺市の心臓部である、現在の堺区が堺市の北部にあるということで、堺北署を設置した。
その堺北署から見て、東にある警察署を堺東署、南を堺南署としたのである。
堺西署が無いのは、堺北署より西に行くと海になってしまうからだ。
現在の南区はなにも無い田園風景が拡がっていたが、ここに泉北ニュータウンという大規模な住宅地が出来たため、泉北署を設置した。
美原区にある黒山署は、終戦直後はこの付近に警察署が無く、そこで黒山村に警察署を設置して「黒山署」という名前になった。
黒山村はやがて他村と合併して美原町となり、さらに平成の大合併で堺市に吸収されたのである。
これらの警察署が設置された当時、堺市が政令指定都市になった時の区分けなど想定していなかった。
だが、堺市はさっきも述べたように市域が広いので、市民が市役所に行くのに不便を強いられた。
そこで、区域ごとに市役所の支所を造り、その管轄地域を決めた。
それがそのまま去年の政令指定都市移行によって、支所が区役所に、その管轄地域が区になったのである。
つまり、堺市の警察署設置と、政令指定都市移行による区域の配置は、全く関係なく行われた。
だからこのような腸捻転現象が起きたのである。
といっても、こんなことは堺市民以外、どーでもいい出来事ではあるが……。