10月3日(木)、東大阪市花園ラグビー場でラグビー・ワールドカップのフィジー×ジョージアが行われた。
本当に花園で、W杯の試合が行われるとは、感慨深いものがある。
もっとも、花園でW杯の試合が行われるのはこの日が初めてではなく、既に2試合が行われた。
ただ、筆者にとって初のワールドカップ生体験となったのである。
2002年の日韓共催サッカー・ワールドカップも生観戦はしていない。
普段は準急までしか停まらない近鉄奈良線の東花園駅も、この日は快速急行が臨時停車。
筆者は大阪難波駅から快速急行に乗車したがすぐ満員になり(普段は大阪難波でほとんどの人が降りるのでガラガラになる)、さらに鶴橋駅で大勢の客が乗り込んできて、試合開始時間までまだ2時間以上もあるのに、電車はギュウギュウ詰めになった。
快速急行のため、鶴橋駅を過ぎると間の駅は全てすっ飛ばして、あっという間に東花園駅に到着。
時間が合わなければ、各駅停車でトロトロ行かなければならないときと比べれば大違いだ。
当然のことだが、電車の中は外国人が多い。
周りでは英語が飛び交っていた。
試合開始2時間前で、東花園駅はこの状態
東花園駅の改札口を抜けて、駅と直結しているスーパーに立ち寄った。
スタジアム内で売られているビールはベラボーに高いと聞いていたので、ここで買って行こうと思ったわけだ。
と言っても、缶ビールの持ち込みは禁止なので、試合開始前にビールを呑んでいこうという魂胆である。
ちなみに、スタジアム内のハイネケン350mlが700円、500mlが1000円だったのに対し、スーパーではキリン一番搾り500mlが280円(税込)だった。
それにしても、スーパーは超満員。
間違いなくワールドカップ特需である。
ビールを買って外に出ると、雨が降ってきた。
屋根のある値段の高いメイン・スタンドじゃないし、スタジアム内で傘をさすのは禁止なので、慌ててスーパーに戻ってフリーサイズのレインコートをゲット。
これが後に生きることになる。
駅からスタジアムに通じる道「スクラムロード」では、大勢のボランティアが客を出迎えていた。
特に外国人客とはハイタッチを行う。
テレビ・クルーも取材に来ていて、日本代表のジャージを着た女性アナウンサーが外国人客にインタビューしていた。
外国人客にインタビューするテレビ・クルー
花園ラグビー場前の広場に着いた。
試合開始1時間半前なのに、既に人でいっぱい。
やはり日本代表のジャージを着た人が多かった。
かくいう筆者も日本代表のジャージを着ていたが、W杯2大会前の古いタイプ。
ちょっと恥ずかしかったが、同じタイプのジャージを着ていた人もチラホラいたので、ちょっとホッとする。
しかし、犬まで日本代表のジャージを着ていたのには驚いた。
犬のラグビー日本代表!?
パス・ゲームのコーナーに挑戦する外国人客
オフィシャル・グッズ売り場は長蛇の列
北の方にあると聞いていたファンゾーンに行こうと思ったが見付からず、あっても遠そうだったので面倒くさくなって、人の少ない裏側(第3グラウンドの方)へ歩いて行ったら偶然、よく一緒にラグビー観戦をするご夫妻を発見した。
お二人は木の下で仲良くおにぎりを食されていたが、考えてみればこんなに素晴らしい穴場はない。
普段だったら一緒にご観戦、というところだが、今回は全席指定なのでそういうわけにはいかず、少しお話してお別れ。
そのあとは、スクラムロード沿いの店へ行って、500円の生ビールを購入した。
場内のビールは高いためそうは呑めないので、今のうちに腹に入れておかねばならない。
試合開始30分前、いよいよ花園ラグビー場内に入る。
簡単な手荷物検査を受け、デジカメを持っていたので係員から空撮りを要求された。
どういう意味があるのかは不明だが、それもパスして前のゲートでチケットを見せ、場内に入る。
ここからは、写真は「大人の事情」によりお見せできない。
スタンド下を、グルっと見学。
いつもとは、出店している店が全然違う。
スポンサーであるハイネケンの独占状態だ。
ただ、ソフトドリンクはサントリーの物が販売されていた(ペプシ・コーラもあり)。
とりあえず、ビールは高いので敬遠し、600円のハイボールをゲット(結局、呑むんかい)。
花園の改修前は、メイン・スタンド側に食堂があったが、現在はなし。
W杯終了後には、復活してくれないだろうか。
また、売店に人が殺到してなかなか物が買えない、という問題が今大会で浮上しているが、それ以上に深刻なのがトイレ。
特に女性トイレには長蛇の列ができていた。
花園は今回の大改修でトイレを増やしたはずだが、全く追い付いていない。
女性にもラグビーを楽しんでもらうためには、トイレの増設は緊急課題だろう。
ハイボールをゲットした後、指定のスタンドへ。
今回、筆者が獲得したチケットは最安の2019円の席。
もちろん、2019年に掛けた値段だが、W杯にしては激安である。
場所は、南側(大型スクリーンのない方)のゴール裏だが、コーナーにある4000円の席よりも見やすそうだ。
席が高い位置にあったので、臨場感には欠けるが、全体を見渡せる。
ただ、入場前は止んでいた雨が激しく降ってきた。
これほど激しい雨になるとは思わなかったが、念のためレインコートを買っておいてよかった。
何しろ野球と違い、ラグビーは台風でも来ない限り、激しい雨でも試合が行われるのだから。
レインコートを着ていても濡れてしまうほどの雨だったが、それでも無いよりは遥かにマシだ。
ただし、雨でハイボールが薄まって「メッチャ薄い水割り」になってしまう。
スタンドで売り子が売り歩いていたのは350mlのハイネケンのみだったが、これを買えばビールの水割りだ!?
いよいよ、両チームの選手が入場してきた。
両国のアンセムが流れた後、フィジーのウォー・クライ「シンビ」が始まった。
これだけは、もっと臨場感のあるスタンドで見たかった。
この両チーム、優勝こそ難しいとはいえ、この対戦は非常に面白いのである。
パワーでガンガン押してくるフォワードのジョージアに対して、フィジーは7人制では世界最強で「フィジアン・マジック」と呼ばれる変幻自在のバックスのチーム。
全く好対照の対戦だ。
実績ではフィジーが上だが、この雨はジョージアにとって有利となる。
ハンドリング・エラーが多発しそうだし、芝生がぬかるんでいるとフィジアン・マジックに影響が出そうだ。
しかも、フィジーはウルグアイに不覚を取ったが、ジョージアはそのウルグアイに完勝している。
そして、遂にキック・オフ。
おとなしい立ち上がりで、両チームともなかなか点が取れない。
前半終了時点で7-3とフィジーがリードだが、意外なロースコア・ゲームとなった。
ところが、後半に入るとフィジアン・マジックが炸裂!
雨をものともせず、見事なステップがジョージアのディフェンス陣を翻弄し、フィジーが次から次へとトライを奪う。
しかも、後半になるとフィジーの選手はみんな南側のスタンドに走り込んで来るので、トライ・シーンをバッチリ見ることができる。
前半でのフィジーのトライ・ラッシュだと、遠くでのトライとなるので、フィジアン・マジックを間近で堪能することはできなかったところだ。
結局、終わってみれば45-10でフィジーの大勝、ウルグアイ戦での鬱憤を晴らした。
印象的だったのは、試合終了後のフィジー。
今回のW杯では、外国チームによる日本流の「お辞儀」が話題になっているが、フィジーの選手たちは四方それぞれのスタンド前までわざわざ行って、お辞儀をしていたのだ。
試合とは関係ないところで、一つ気になったことがあった。
北側のゴール裏スタンドには大型スクリーンが設置されていると前述したが、今回のW杯では仮設なのか南側のコーナー・スタンドにもスコアボードが設置されている。
筆者が座っていた席からは表は見えないのだが、何かトラブルがあったらしく、作業員がスコアボード裏側の基盤を修理していた。
スコアボードはキチンと表示されていたのだろうか?
スコアボードの裏側で修理作業。こんな高い所、筆者には絶対に無理
試合終了後、スタジアムの外に出るのがまた一苦労だった。
人の波が押し寄せて、なかなか出ることができない。
何しろ、入場するときはみんなバラバラの時間に来るのだが、退場ではほぼ一斉になる。
ようやくメイン・ゲートを出ることができた。
まだ広場には大勢の人が残っており、グッズ売り場も試合前と同じく長蛇の列だ。
しかし、雨がまだ降っているので、もう帰ることにする。
ところが、本当に大変なのはここからだった。
東花園駅に通じるスクラムロードは、行きと違って帰りは歩行者天国になっていた。
にもかかわらず、駅に近付くにつれて、人の波が動かなくなる。
今大会では、もう一つの最寄り駅である近鉄けいはんな線の吉田駅へ行く無料のシャトルバスが発着しているのだが、それでも東花園駅に人が押し寄せていた。
結局、花園ラグビー場前の広場を出てから電車に乗るまで、35分ぐらいかかった。
後から聞いた情報によると、吉田駅に行くシャトルバスにも長蛇の列ができて、なかなか乗れなかったそうだ。
すっかり疲れ果ててしまったが、それでも楽しかった。
今度はいつ、日本で行われるのかも判らないワールドカップを生体験できたのである。
色々な国の人が花園にやって来て、W杯を存分に楽しんでいた。
何しろ、日本とは関係のない他国同士の平日のデー・ゲームにも、2万人以上が詰め掛けたのだ。
こんな体験は滅多にできるものじゃないし、一種のお祭り気分を味わえる。
10年前にラグビー・ワールドカップの日本招致が決定したが、その時は「本当に開催できるのか?」と懐疑的だった。
失敗して世界に恥をかくぐらいだったら、開催しない方がいいのではないか、と。
でも、今は言える。
ワールドカップ、日本に来てよかった。
【追記】
今大会のチケット売り上げが、目標だった180万枚に達した、という発表があった。
ちなみに1987年、ラグビー王国のニュージーランドとオーストラリアの共催で行われた第1回ラグビー・ワールドカップの総入場者数は約60万人である。
オーストラリア×日本は、地元オーストラリアで行われたにもかかわらず、観衆は僅か8,785人。
アイルランド×トンガ(於:オーストラリア)などは、観衆3,000人だった。
その頃から考えると、ラグビーW杯も隔世の感がある。