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ネターランド王国憲法

第1条 本国の国名を「ネターランド王国(英名:Kingdom of the Neterlands)」と言う。
第2条 本国の国王は「禁句゛(=きんぐ)、戒名:安威川敏樹」とする。
第3条 本国は国王が行政・立法・司法の三権を司る、絶対王制国家である。
第4条 本国の公用語は日本語とする。それ以外の言語は国王が理解できないため使用禁止。
第5条 本国唯一の立法機関は「日記」なる国会で、国王が一方的に発言する。
第6条 本国の国民は国会での「コメント」で発言することができる。
第7条 「コメント」で、国王に不利益な発言をすると言論弾圧を行うこともある。
第8条 「コメント」で誹謗・中傷などがあった場合は、国王の独断で強制国外退去に踏み切る場合がある。
第9条 本国の国歌は「ネタおろし」とする(歌詞はid:aigawa2007の「ユーザー名」に記載)。
第10条 本国と国交のある国は「貿易国」に登録される。
第11条 その他、上記以外のややこしいことが起きれば、国王が独断で決めることができる。

ノックの文化

野球

8月28日~9月6日まで大阪府および兵庫県で行われていた第27回WBSC U-18ベースボールワールドカップは、アメリカ合衆国の3連覇で幕を閉じた。

18歳以下の野球国際大会、要するに高校野球世界一を決める大会は、残念ながら日本の初優勝ならず、準優勝に甘んじたのである。

 

日本はファースト・ラウンドおよびスーパー・ラウンドを8戦全勝の首位で通過したが、阪神甲子園球場で行われた決勝戦では2位通過のアメリカに1-2で敗れた。

ファースト・ラウンドで日本はアメリカに3-0で勝っており、通算成績でもアメリカに8勝1敗で並んだものの、優勝を逃したのが野球の難しさである。

 

特に決勝戦で、エラーが2失点に繋がり、逆に攻撃面では走塁ミスでチャンスを潰したのが痛かった。

それまでは堅守と好走で勝ってきただけに、決勝戦での一番大事な大舞台で痛恨のミスを犯してしまったのは、国際試合の厳しさと言えよう。

 

実は筆者も、決勝戦を前にかなり危惧していた。

というのも、決勝戦に至るまでの日本の試合ぶりが完璧すぎたからである。

一番競った試合はアメリカ戦とカナダ戦の3点差で、それ以外の1試合が9点差、なんと5試合がコールド勝ちだった。

特に決勝戦前々日には既に決勝進出を決めており、本来なら強敵となるはずのキューバ戦が消化試合になって、しかもキューバは全くモチベーションが下がった状態だったので、9-0と圧勝してしまった。

 

その後に行われたアメリカ×カナダも消化試合だったが、アメリカはカナダに逆転を許すなど苦戦したので、翌日の決勝戦へのシミュレーションにもなったはずである。

しかもアメリカはスーパー・ラウンドで、負ければ決勝戦進出が危うくなる韓国戦では、8回終了まで2点ビハインドの絶体絶命に追い込まれながら、9回表に逆転3ランを放ち奇跡的な逆転劇で勝ち上がってきた。

案の定、決勝戦では日本は負けられない状況でミスを犯し、逆に厳しい試合を勝ち抜いたアメリカは接戦をしのぎ切ったのである。

 

とはいえ、日本はよくやったと思う。

危惧されていた木製バットへの対応も、ほぼ不足なくこなしていた。

日本よりもパワーに勝るアメリカやカナダ、オーストラリア、韓国なども、木製バット相手ならさほど脅威にはならない。

日本の打者はバットを折ることがほとんどなかったが、他国の選手はよく折っていた。

投手陣は完璧と言えて、金属バット相手の甲子園大会の方がよほど怖かっただろう。

 

決勝戦は守備のミスで敗れたものの、それ以外の試合では素晴らしかった。

夏の甲子園終了後、僅か1週間ほどで結成された急造チームだったが、それでも連係プレーを完璧にこなしたのである。

チームの編成上、どうしても守り慣れないポジションに就くことが多かった選手もいたが、それでも短期間で見事に順応していた。

 

他国ではなかなかこうはいかない。

日本が大差で勝ち進んだ理由に、相手のミスに助けられた面が多かったことが挙げられる。

決勝のアメリカ戦は別にして、それまでの試合では肝心な場面で相手がエラーしてくれたのである。

ファースト・ラウンドで勝ったアメリカ戦でも、相手のエラーから奪った得点を日本のディフェンスが守り切った。

 

筆者は決勝戦の前日、甲子園で行われた日本×キューバ、アメリカ×カナダを観に行った。

前述のようにこの2試合は消化試合だったが、カードとしては興味深い。

 

午後1時から試合開始予定で、筆者がスタンドに入ったのは正午過ぎだったが、その時にはキューバがフリー・バッティングを行っていた。

日本の高校野球ではあまりお目にかかれない光景である。

高校野球で試合前に行うのはシート・ノックのみだ。

昔は甲子園の決勝に限り、試合前にフリー・バッティングが行われていたが、現在ではそれもない。

試合前のフリー・バッティングは、まさしく国際試合ならではの光景だ。

おそらくキューバの前には、ホーム・チームの日本もフリー・バッティングを行っていたに違いない。

 

キューバのフリー・バッティングが終わると、今度は日本のシート・ノックが始まった。

高校野球ではお馴染みの光景である。

ノッカーはまるで流れ作業のようにポンポンとノックを放ち、守備陣はそつなくボールを捌いていく。

 

ノックの仕方は、だいたいどの高校も同じだ。

試合前のシート・ノックの時間は僅か7分間。

この短い時間を、実に無駄なく活用するのだ。

 

まず内外野に分かれ、内野陣は普通のファースト送球およびダブルプレイの練習、バックホームからのボール回しなどを行う。

その間に外野陣は、外野のファウル・グラウンドから、ノッカーがフライを打ち上げてのキャッチ練習を行うのだ。

半分ぐらいの時間が過ぎると、外野のノッカーは引き上げて、外野陣は内野の練習に加わる。

ここからは内外野による連係プレーの練習だ。

場合によってはノッカーがわざとファウル・ゾーンに打って、クッション・ボールの練習まで行う。

残り1分ぐらいになると外野から順々にあがっていき、内野手の最後(だいたいが一塁手)がバックホームを終えると全員で並んで、相手ベンチに向かって「ありがとうございました!」と帽子を取って一礼する。

 

普通はこんな流れだが、中にはユニークなチームもあって、例えば今春のセンバツで準優勝した東海大四などはこの逆で、最初に内外野の連係プレーを行ってから、後半で内外野に分かれて、内野専門、外野専門のノックを行う。

とはいえ、これは順序が逆なだけであって、練習内容はほぼ同じだ。

 

高校野球通には、試合前のノックが何よりも楽しみだ、という人がいる。

ある名門校の監督は、センターにゴルフのホールのような穴があったら、ノックでその穴に入れてみせるよ、と豪語した。

ノックで一番難しいのはキャッチャーフライだが、これを芸術的なまでに高く打ち上げる監督もいる。

「攻めダルマ」の異名を取り、練習のほとんどをフリー・バッティングに割いていた池田高校元監督の故・蔦文也でさえ「ワシがノックバットを握れんようになったら監督を辞めるんじゃ」と言っていた。

こんなノックの名人たちが行う試合前のパフォーマンスは、まさしくビッグ・ショーだ。

 

試合前のノックと、日々の練習でのノックは違う。

たとえば、試合前のノックで、あまり難しい打球を打って選手がエラーをすると、大事な試合前に自信喪失しかねない。

だからと言って、あまり簡単すぎる打球を打ってもダメで、選手を適当に動かすような場所に打つのだ。

 

でも、そんなノックは普段の練習では役に立たない。

出来るだけ、試合の打球に近いノックを打つ必要があるのだ。

例えば、ノックでゴロの強い打球を思った所に打つのはさほど難しいことではない。

ボールの芯か、あるいは下側を打てば、思った所に強い打球が転がる。

試合前のノックで打つのはこんな打球だ。

 

だが、実際の試合では、こんな打球はまず転がって来ない。

ボールの芯や、下側を叩いたらボールは無回転になるか、バックスピンがかかるからだ。

こういう打球は、いかに強くても捌くのは意外に簡単だ。

ゴロが加速することもなく、むしろ減速するのだから。

 

しかし実際の試合では、こんなゴロが飛んで来ることはまずない。

投手が投げた速い球を、打者がフルスイングしてボールの上を叩いて飛んで来るのだ。

この場合、打球はオーバースピンがかかっているため、ボールがバウンドするごとに加速してくる。

こんな打球を処理するのは難しいし、恐怖心さえ伴うのだ。

従って、日々の練習ではこんな打球に近いノックをしなければならない。

だが、ノックでボールの上を叩き、強い打球を思った所に打つのは、実に難しいのだ。

でも、ノックの名手と呼ばれる人は、こんな打球を打てるのである。

 

ノッカーの腕の見せ所と言われるのが、アメリカン・ノックである。

いかにもアメリカで生まれたノックのように思えるが、そうではない。

日本で考案されたノックである。

そもそも、アメリカではノックのことを「ノック(knock)」とは呼ばない。

「ファンゴ(fungo)」と呼ぶのが一般的のようだ。

なぜファンゴのことを日本でノックと呼ぶようになったのかは不明だが、knockには「強く打つ」という意味があり、それが日本で広まったのかも知れない。

 

アメリカン・ノックとは、選手が右翼ポール付近に立ち、そこからノッカーが左翼方向にフライを打ち上げて、選手がそれを捕りに行くという練習方法である。

ボールを捕れても捕れなくても、その場からさらにノッカーが左翼方向にフライを打って、選手がその打球を捕りに行く。

アメリカン・ノックはその繰り返しで、広いアメリカ大陸を駆け巡るイメージから、この名が付いた。

野球の練習としては、最もキツい部類となる。

 

キツいのは選手だけではない。

ノッカーにとっても、キャッチャーフライと共に難しいのがこのアメリカン・ノックだ。

選手が簡単に捕れる場所にフライを打っても練習にならない。

かと言って、絶対に捕れない所に打っても意味がない。

選手が全力疾走して、捕れるか捕れないか、という微妙な場所に打つのが、ノッカーの真骨頂なのだ。

打つ場所だけではなく、その選手が全力疾走でその地点に辿り着く時間まで計算しなければならない。

つまり、縦横高さの三次元のみならず、時間を加えた四次元まで視野に入れていたのだろうか。

 

選手にとっては、全力疾走しなければ、その後のノックで長い距離を走らなければならなくなり、選手にとっては却ってしんどくなる。

そのため、選手はフライを捕るために、常に全力疾走しなければならない。

 

アメリカン・ノックは、外野手よりもむしろ投手によく行われる練習方法だ。

足腰を鍛えるのに、これほど効果的な練習はない。

ただランニングをするだけでは単調なだけでつまらないだろうが、アメリカン・ノックは野球のプレーが詰まった練習だ。

とは言っても、普通のランニングよりもよほど苦しいに違いないが。

でも、日本の投手の守備がいいのは、こんな練習をしているからかも知れない。

 

話を今回のU-18W杯に戻そう。

日本のシート・ノックが終わった後、キューバのシート・ノックが始まるのを待った。

しかし、キューバのシート・ノックは行われなかった。

攻撃優先と言われるキューバは、試合前のシート・ノックを行わないのだろうか?

 

やがて試合が始まり、結果は9-0で日本の圧勝。

優勝の可能性が無くなっていたキューバは、明らかにやる気が失せていた。

かつては野球王国の名を欲しいままにしていたキューバが、経済危機による野球レベルの低下が気になる。

 

第一試合が終わると、第二試合はアメリカ×カナダ。

今回はフリー・バッティングは行わないらしい。

他の球場か、あるいは室内練習場で済ませて来たのか。

ただ、印象的だったのは、カナダが早い段階から準備を始めていたのに対して、アメリカはなかなかダッグアウトに姿を見せなかった点だ。

日本ではちょっと考えられない。

 

ただ、アメリカ、カナダ共に、キューバと違って試合前のシート・ノックは行った。

ただし、日本とは違うかなりノンビリムード。

なにしろアメリカなどは、20人中10人しか野手がいないのだ。

そのため、ポジションに就くのは各1名ずつ。

それ以外の10名、即ち投手登録の選手たちは、ブルペンで投球練習をする先発投手以外は外野でアップしている。

シート・ノックも、ただの体慣らしのように見えて、スピード感がない。

日本なら、各ポジションに2人ずつぐらい就いて、1球でも無駄にすまいとキビキビ動くものだ。

アメリカのシート・ノックと言えば、ファーストにすら補助の選手がおらず、キャッチャーの横にようやくノッカーにボールを渡す選手がいるだけである。

 

カナダのシート・ノックも似たようなもの。

日本のような流れ作業ではない。

ノッカーがいきなりピッチャー・マウンド辺りから、外野に向かってゴロを放つ。

どうやら内外野の連係プレーの練習をしたいらしいが、そんなのはホームから打てばいいだけの話だろう。

カナダのノッカーは、外野へ強いゴロを打つ技術がないのだろうか。

 

カナダのノックは続いたが、外野フェア・ゾーンのレフト側(三塁側がアメリカ)が空いていたので、アメリカ投手陣が委細構わずアップしていた。

こんな光景も、日本の高校野球ではお目にかかれない。

もちろん、シート・ノックが終わった後も、選手が整列して相手ベンチに対して帽子を脱いで「ありがとうございました!(Thank you,very much!)」などと言うこともない。

「練習をさせてもらって当然」とばかりに、三々五々ベンチに引き上げるだけだ。

 

カナダのノック風景。ノッカーがいきなりピッチャー・マウンド付近に立ち、外野へ緩いゴロのノックを行う

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試合前のノックにも、各国の野球文化が垣間見える。

特に日本ほど、ノックを重視する国はないのではないか。

それが日本の野球文化とも言える。

 

野球の国際大会で、日本は実に安定した成績を残している。

1984年のロサンゼルス・オリンピックで野球が公開競技になって日本はいきなり金メダル、1988年のソウル・オリンピックで銀メダル、その後は1992年のバルセロナ・オリンピックで正式種目になって以来、日本野球は全ての大会(7大会)でベスト4以上に進出した。

さらに、2006年から始まったワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本は第1回、第2回と2連覇、第3回はベスト4に甘んじたものの、オリンピックとWBCで計10回(約30年)、全てベスト4以上に輝いているのである。

こんな国は、日本を置いて他にはない。

 

体格とパワーに劣る日本人が、野球に関しては世界で安定した実力を誇っているのは、間違いなく日本に野球文化が根付いているからだろう。

それは「ノックの文化」と言えるかも知れない。

「ノックの文化」によって、体格的に劣る日本は、世界相手に対等に戦う実力を身に付けた。

ノックによって守備力が鍛えられるばかりか、投手力も飛躍的に伸びたのである。

アメリカン・ノックにより、投手の足腰は強靭になってスタミナが養わられ、それだけでなく投手の守備力も世界最高水準となった。

 

日本に「ノックの文化」が培われたのは、紛れもなく高校野球である。

一発勝負の高校野球において、野手のみならず投手までもが守備力が鍛えられた。

それが大学野球や社会人野球、そしてプロ野球にまで及んでいる。

 

日本およびアメリカのメジャー・リーグで活躍した長谷川滋利は、両国の野球を知り尽くした人物だ。

長谷川は日本野球の強みについてこう語る。

 

「日本では高校野球で、どんなチームでもかなり高度な守備の連係プレーを練習する。そのため、上のレベルになって混成チームでの守備は1回の練習でピタッとはまる。他の国ではそうはいかない。日本の守備は、間違いなく世界一だ」

 

しかも、打撃練習ならケージ1つを使って1人しか練習できない。

ケージ3つを使っても3人しか練習できないわけだ。

だが、守備練習の場合は9人全員が参加できる。

つまり、守備練習は効率がいい練習方法ということになる。

日本野球の安定した強さは、高校野球によって培われているのだろう。

 

よく「アメリカでは子供の頃から一つのスポーツに固執させない。日本もアメリカを見習うべきだ」

という言葉が聞かれる。

それはある意味正論だが、それでも本質を突いていない。

 

アメリカは基本的に、エリートによるスポーツ文化なのだ。

たしかにアメリカでは、スポーツのシーズン制が採られており、一つのスポーツばかりするわけではなく、色々なスポーツを体験できる。

だがそれは、一部のスポーツ・エリートに過ぎない。

 

一定のレベルに到達できない選手は、当然のことながらそのスポーツ部には入部できない。

要するに、趣味ではスポーツはできないのである。

そんな事実も知らずに(あるいは知っていて、知らんぷりをしているのかも知れないが)「アメリカでは誰もがスポーツを楽しむことができる」などと吹聴する一部のスポーツライターの脳内は、アメリカの実情がわかっていない見事なまでのお花畑と言えよう。

その点、どんな無名校でも、単に野球が好きだという選手でも、甲子園を目指すことができる日本の高校野球の方が健全と言える。

そういう部分を、日米両国を知る長谷川は指摘していた。

 

いずれにしても、国際大会を経験した選手たちは、貴重な体験だったと思う。

これを今後の野球人生に活かしてもらいたい。