第96回全国高等学校野球選手権大会は大阪桐蔭(大阪)が優勝した。
つまり今年の夏、高校野球で最も強いチームは大阪桐蔭、ということになる。
では、一番弱い高校はどこだったのだろう?
それを調べるには、地方大会の初戦で敗れたチーム同士で、負け進んで行く逆トーナメントをするしかないが、もちろんそんな大会を開催する主催者がいるわけがない。
そこで、地方大会初戦で敗れた高校に勝った高校が次の試合で敗れて、その高校に勝った高校がまた次の試合で敗れて……、という形で「一番弱い高校」を選定するしかない。
もっとも、だからと言ってそんな方法で一番弱い高校を指定できるわけではないが、そこはご容赦いただきたい。
なお、昨年夏の最も弱かった高校はこちら。
地方大会から調べていくと大変だが、甲子園の決勝戦から逆算していけば、容易に探り当てることができる。
甲子園大会
決勝戦 ○大阪桐蔭(大阪)4-3三重(三重)●
準決勝 ○三重(三重)5-0日本文理(新潟)●
三回戦 ○聖光学院(福島)2-1近江(滋賀)●
二回戦 ○近江(滋賀)8-0鳴門(徳島)●
鳴門は二回戦からの登場なので、甲子園では鳴門に敗れた高校はない。
つまり、今夏の甲子園で最も弱かった高校は鳴門ということになる。
だが、前述したように、本当に最も弱いというわけではないので、関係者の皆様はお気を悪くなさらないように。
さて、鳴門は徳島代表の高校なので、日本一弱い高校は徳島県にある。
徳島といえば、かつては池田が「やまびこ打線」で一世を風靡したように、野球王国として知られている。
そんな県に最弱高校があるなんて、ちょっと意外だ。
ちなみに徳島県といえば、未だに私立高校が甲子園出場したことのない唯一の県である。
では、今夏の徳島大会を見てみよう。
徳島大会
決勝戦 ○鳴門6-5鳴門渦潮●
準決勝 ○鳴門渦潮5-3生光学園●
準々決勝 ○生光学園7-1新野●
二回戦 ○新野3-1城北●
一回戦 ○城北13-3脇町●(6回コールド)
というわけで、今夏の日本一弱い高校は脇町と決定した。
くどいようだが、本当に日本一弱いというわけではないので、そこはお許しいただきたい。
では、脇町とはどんな高校なのか?
調べてみると、美馬市にある徳島県立の高校で、開校は1879年(明治12年)という歴史のある学校。
2010年度より5年間、スーパーサイエンス・ハイスクールの指定を受けている。
つまり、秀才校というわけだ。
卒業生には「奇跡のアラフォー」と言われた日本テレビ元キャスターの丸岡いずみがいる。
そしてなによりも、中馬庚(ちゅうまん・かなえ)が校長を務めたことがある学校、ということだ。
この名前を見て、コアな野球ファンならピンと来るに違いない。
そう、中馬庚とは、ベースボール(baseball)を野球と訳した人物なのだ。
中馬庚がいなければ、野球というスポーツは日本でなんと呼ばれていたかわからない。
いわば、日本野球にとって最大の功労者である。
そんな人物が校長を務めていた学校が、日本一野球の弱い学校になったとは、偶然とはいえ申し訳ない調査をしてしまった気分だ。
その反面、意外なところで中馬庚の名前を見つけることができたので、面白くも感じている。