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安威川敏樹のネターランド王国

お前はチョーマイヨミか!?

ネターランド王国憲法

第1条 本国の国名を「ネターランド王国(英名:Kingdom of the Neterlands)」と言う。
第2条 本国の国王は「禁句゛(=きんぐ)、戒名:安威川敏樹」とする。
第3条 本国は国王が行政・立法・司法の三権を司る、絶対王制国家である。
第4条 本国の公用語は日本語とする。それ以外の言語は国王が理解できないため使用禁止。
第5条 本国唯一の立法機関は「日記」なる国会で、国王が一方的に発言する。
第6条 本国の国民は国会での「コメント」で発言することができる。
第7条 「コメント」で、国王に不利益な発言をすると言論弾圧を行うこともある。
第8条 「コメント」で誹謗・中傷などがあった場合は、国王の独断で強制国外退去に踏み切る場合がある。
第9条 本国の国歌は「ネタおろし」とする(歌詞はid:aigawa2007の「ユーザー名」に記載)。
第10条 本国と国交のある国は「貿易国」に登録される。
第11条 本国の文章や写真を国王に無断で転載してはならない。
第12条 その他、上記以外のややこしいことが起きれば、国王が独断で決めることができる。

矢吹丈が現代のボクサーだったら

ボクシング漫画と聞いて真っ先に思い浮かぶのは「あしたのジョー」だろう。

今から45年も前に始まったにもかかわらず、未だに根強い人気を誇るボクシング漫画の金字塔だ。

 

この漫画の人気の秘密は、主人公の矢吹丈ジョー)の生き様や「打たれても打たれても立ち上がる」ファイティング・スタイルもあるだろうが、もう一つはリアリティさにもあると思われる。

球漫画でいう「魔球」のような実現不可能の技がほとんど登場せずに、それでいて迫力満点の試合が展開されるのだ。

原作者が「巨人の星」と同じ梶原一騎(「あしたのジョー」でのクレジットは高森朝雄)とは思えないが、これは梶原自身が野球に比べてボクシングにかなり詳しかったことと、作画を担当したちばてつやが梶原とは正反対の感性の持ち主だったからだろう。

 

とはいえ、漫画ゆえに誇張された部分が多いのも否めない。

ジョーがあれだけ倒されても驚異的な根性で立ち上がり、最後には劇的な逆転KO勝ちを収めるのだから、現実離れしているように思われる。

 

だが、漫画では大袈裟とはいえ、当時のボクシングでは似たようなことも多くあったのだ。

ビデオで昔のボクシングを見ていると、今のボクシングを見慣れた我々ではゾッとするような場面に何度も遭遇する。

たとえば、片方の選手が一方的に打たれまくって、どう考えても試合続行は不可能と思われるシーンでも、レフェリーは試合を止めようとしない。

あるいは何度もダウンを食らった選手が立ち上がり、さらにダウンしても試合が続行される。

現在だったら、そうなる前にレフェリーが試合を止めるだろう。

だが当時は、たとえ生命の危険があっても10カウントの声を聞くまでは試合を続行しろ、という風潮が蔓延っていたのである。

 

現在ではタレントをしている元プロボクサーの赤井英和も、元気な今の姿が信じられないような試合を経験したことがあるのだ。

現役最後となった試合でKO負けした赤井はそのまま意識不明となり、文字通り生死の境を彷徨ったのである。

 

現在のボクシングでは安全性を考慮し、レフェリーが危険だと判断すれば即試合を止めるようになっている。

そのため、10カウントを数える前や、セコンドがタオルを投げ込む前にレフェリーが試合を止めるTKOが多くなった。

世界タイトルマッチも、かつては15ラウンドだったのが、現在では12ラウンドになっている。

 

そこで、ジョーが現代のプロボクサーだったら、どんな戦績だったのかを検証してみた。

ジョーの戦いぶりから感じて、おそらくKO決着となる前に、現在のレフェリーなら試合を止めてどちらかのTKOなるだろう、と。

ただし、絵の上では誇張された部分が多いので判定が難しく、また人によってジャッジが異なると思うが、ここはあくまでレフェリーが私こと禁句¨国王による判断とさせていただく。

また、原作とアニメでは試合展開等が多少違うので、原作のみで検証した。

 

あしたのジョー」が連載され始めたのは、少年マガジン1968年1月1日号でのこと。

学生闘争も終盤を迎えた頃、この2年後に高度成長期を象徴する大阪万博が開幕し、それと時を同じくして赤軍派によるよど号ハイジャック事件が起きた。

そして、赤軍派のリーダーである田宮高麿が言い放った言葉はあまりにも有名である。

「最後に確認しよう。我々は”あしたのジョー”である」

革命を夢見て北朝鮮に亡命した当時の若者たちは「あしたのジョー」の愛読者だった、そんな時代だ。

 

ボクシング界ではちょうどこの頃、WBA世界ボクシング協会)からWBC(世界ボクシング評議会)が分離し、二団体時代に移行しつつあった。

ちなみに「あしたのジョー」(原作)では特にどちらの団体とは明記されていないが、WBAルールの3ノックダウン制(1ラウンドに同じ選手が3回ダウンすれば自動的にKO負けとなるルール)を採用している(WBCはフリー・ノックダウン制)。

また、採点法方式は現在の10点法ではなく5点法だ。

さらに、階級も現在ほど細分化されておらず、チャンピオンになるには狭き門だった。

そのあたりを踏まえて、以下を読んでいただきたい。

では、ジョーのプロ通算戦績はどんなものだったのだろうか。

 

26戦19勝(17KO)6敗(3KO)1分

最高位:世界バンタム級4位

 

意外に現実的な、というか、物足りない戦績である。

ただし19勝17KOだと、あとの2試合は判定勝ちと思われるかも知れないが、実際にはこの2試合は不明であり、本当は19勝19KOの可能性が非常に高い。

ジョーのファイティング・スタイルから考えて、判定勝ちというのは想像しにくいのだ。

それに、途中で日本チャンピオンおよび日本ランカー相手に3連敗を喫するが、これは力石徹を死なせてしまった後遺症で相手の顔面を全力で打てなくなったので、その点は考慮せねばならないだろう。

 

それはともかく、普通、日本のボクシング界では某三兄弟のような例外を除いて、世界チャンピオンにならなければ食えないのはもちろん、ネームバリューなどないにも等しいのだが、ジョーの場合は違った。

世界チャンピオン未経験者にもかかわらずゴールデンタイムでのテレビマッチが組まれ、ノンタイトル戦なのに後楽園球場で試合をしたこともあるぐらいだ。

現在では考えられないことだが、当時のボクシング人気は今との比ではなかったのである。

それでも、ジョーの場合は当時でもかなり特殊だったといえよう。

 

では本題に移り、ジョーの戦績を見てみる。

階級は全てバンタム級(1試合だけジュニア・フェザー級の選手との試合あり)。

青字は原作での試合結果赤字は禁句¨国王によるレフェリングだ。

 

①6回戦 村瀬武夫

○1ラウンドKO勝ち

デビュー戦でいきなりジョーの代名詞となるノーガード戦法、そしてクロスカウンターをお見舞いして、1ラウンド2分47秒KO勝ちだ。

この点に関して、国王によるレフェリングでも全く同じ裁定をするだろう。

国王判定:○1ラウンドKO勝ち

 

②6回戦 沢井精二

○2ラウンドKO勝ち

クロスカウンターによるKO勝ち。

それ以外は不明なので、国王判定も同じ。

国王判定:○2ラウンドKO勝ち

 

③6回戦 遠山充造

○?ラウンドKO勝ち

クロスカウンターによるKO勝ち。

それ以外は不明なので、国王判定も同じ。

国王判定:○?ラウンドKO勝ち

 

④6回戦 沼川洋

○?ラウンド?(おそらくKO)勝ち

沼川はノーガードに怯える。

それ以外は不明なので、国王判定も同じ。

国王判定:○?ラウンド?(おそらくKO)勝ち

 

⑤6回戦 野口講一

○?ラウンド?(おそらくKO)勝ち

試合展開は全く不明。

国王判定:○?ラウンド?(おそらくKO)勝ち

 

⑥6回戦 ウルフ金串

○4ラウンドTKO勝ち

ようやく巡ってきた大物との対戦。

「精密機械」と謳われたウルフは世界チャンピオン候補だった。

だがこの試合でのジョーは珍しく序盤から積極的に攻撃を仕掛け、2ラウンドに2度のダウンを奪う。

ウルフの出血も酷く、国王レフェリーならこの時点で試合を止め、ジョーの勝ちを宣告するだろう。

しかし原作では試合続行し、3ラウンドには逆にウルフが2度のダウンを奪い、特に2度目はダブル・クロスカウンター(普通のパンチの8倍の威力だそうである。どんな計算かはわからないが)が決まり、ジョーは大の字。

2ラウンドで試合を終わらせてなければ、この時点で国王ならレフェリーストップだ。

だが試合は続行され、4ラウンドにジョーがトリプル・クロスカウンター(通常のパンチの12倍!)でウルフにTKO勝ち(漫画では「矢吹丈……3回KO勝ち」とレフェリーが言っているが、実際には4回TKO勝ちである)。

なお、この試合でウルフは顎を砕かれ引退を余儀なくされて、ヤクザの用心棒に身を持ち崩した。

世界王者候補のあまりに哀れな末路だが、レフェリーが2ラウンドか3ラウンドに試合を止めていれば、この大器を壊すことはなかっただろう。

国王判定:○2ラウンドTKO勝ち

 

⑦8回戦 力石徹

●8ラウンドKO負け

あしたのジョー」前半のハイライトであり、最も有名な試合である。

自殺行為とも言える過酷な減量を克服して、終生のライバル・ジョーに挑む力石。

得意のアッパー攻撃を繰り返す力石は、3ラウンドに2度のダウンを奪う。

だがこの時点ではジョーがカウント4で立ち上がるなどまだ余裕があり、国王レフェリーでも試合続行だろう。

しかし、4ラウンドで奪われたダウンはジョーにとって致命傷であり、国王レフェリーならこの時点でTKO負けを宣告する。

原作ではその後、最終8ラウンドで力石がアッパーを決めてKO勝ちするが、試合終了後に力石の容体が急変、ジョーのテンプル攻撃の影響により死亡してしまう。

やはりこの試合も、レフェリーが早めに試合を止めていれば力石の死は避けられたはずだ。

もっとも、力石の過酷な減量が死因になったのも事実だが。

国王判定:●4ラウンドTKO負け

 

 ⑧8回戦 殿谷浩介

○1ラウンドKO勝ち

強烈なボディブローにより1ラウンド2分36秒でKO勝ちするも、力石を死なせたトラウマにより顔面を全力で打てず。

国王判定:○1ラウンドKO勝ち

 

⑨8回戦 不明

○?ラウンドKO勝ち

顔面を全力で打てず。

国王判定:○?ラウンドKO勝ち

 

⑩8回戦 不明

○?ラウンドKO勝ち

顔面を全力で打てず。

国王判定:○?ラウンドKO勝ち

 

⑪8回戦 不明

○?ラウンドKO勝ち

顔面を全力で打てず。

国王判定:○?ラウンドKO勝ち

 

⑫8回戦 不明

○?ラウンドKO勝ち

顔面を全力で打てず。

国王判定:○?ラウンドKO勝ち

 

⑬10回戦 タイガー尾崎(日本チャンピオン)

●2ラウンドTKO負け

1ラウンドでいきなり強烈なボディブローでダウンを奪うも、その後はタイガーに顔面を打てない弱点を見透かされて、2ラウンドで2度のダウンを奪われる。

国王レフェリーならこの時点で試合をストップするが、原作では試合続行。

しかしこのラウンドで、セコンドの丹下段平がタオルを投げ入れてTKO負けとなるので、結果的には一緒か。

国王判定:●2ラウンドTKO負け

 

⑭10回戦 原島龍(日本1位)

●3ラウンドTKO負け

顔面を打てないジョーが、力石の亡霊を振り払うかのように、原島の顔面を全力で痛打!

しかしトラウマは消えておらず、原島をダウンさせたにもかかわらずジョーが吐いてしまい、そのままダウン。

原島は立ち上がったため、ジョーのTKO負けとなってしまった。

国王判定:●3ラウンドTKO負け

 

⑮10回戦 南郷浩二(日本2位)

●1ラウンド反則負け

目立たないエピソードだが、実は最も判定が難しい試合だった。

1ラウンドでジョーがいきなり南郷の顔面を襲い、ダウンを奪う。

しかし、ニュートラル・コーナーに下がったジョーは、またもや吐いてしまうのだ。

それを発見したレフェリーはカウントをやめ、ジョーの体調を覗う。

ジョーは「カウントをやめなければKO勝ちだった」と抗議するが、こればかりは体調を気遣うレフェリーを尊重しなければならないだろう。

結局、試合は再開されるも、ジョーの嘔吐は止まらず、しかも南郷のパンチを食らってダウンしてしまった。

国王レフェリーなら、この時点でジョーのTKO負けだ。

原作では、この後にジョーがエルボー、バッティング、キックと反則のオンパレードで反則負けとなってしまう。

普通ならこんな試合をすれば試合出場停止処分を食らうところだが、その裁定が出る前にジョーはドサ回りのボクシング巡業に旅立ってしまう。

国王判定:●1ラウンドTKO負け

 

⑯4回戦(エキジビジョン・マッチ) カーロス・リベラ(世界6位)

●3ラウンド失格負け

ベネズエラの「無冠の帝王」ことカーロス・リベラ

その実力を恐れて世界チャンピオンがカーロスとの対戦を避けるため、無冠の帝王と呼ばれるようになったという。

日本でもその実力を発揮し、ジョーを2ラウンドTKOで葬った日本チャンピオンのタイガー尾崎を、1ラウンド16秒でTKO勝ちした。

ジョーとの試合は4ラウンド、8オンスのグラブ着用(バンタム級では6オンス)、判定決着なしというエキジビジョン・マッチとなった。

1ラウンドで、8オンスのグラブにもかかわらずジョーはいきなり2回もダウンを奪われる。

エキジビジョンでもあるし、国王レフェリーならこの時点で試合を止める。

しかし原作では試合続行、3ラウンドでダブル・ノックダウンという壮絶な試合となり、この際にジョーは場外に転落した。

ジョーがリングに戻る時、セコンドの丹下が思わず手を貸したため、ジョーの失格負けとなった。

しかし、ジョーは本物の実力者であるカーロスとの対戦で、力石の亡霊が完全に吹っ切れ、全力で顔面を打てるようになった。

国王判定:●1ラウンドTKO負け

 

⑰10回戦 カーロス・リベラ(世界6位)

△?ラウンド無効試合(?)

現在は取り壊された後楽園球場に3万7千人の観衆を集めた一戦は、予想に反して序盤は静かな立ち上がりとなったが、3ラウンドにジョーが2度のダウンを奪われる。

ランキングの差から言って、国王レフェリーならこの時点で試合を止めている。

原作ではもちろん試合続行で、ジョーも反撃して壮絶な打ち合いとなる。

カーロスの得意技は反則のエルボーだったが、あまりのスピードにレフェリーには見えず、反則は取られなかった。

しかし、闘いはますますエスカレートし、レフェリーの制止を振りほどいて両者とも反則のオンパレード。

原作の中で結果は明記されていないが、おそらくノー・コンテスト(無効試合)だろう。

国王判定:●3ラウンドTKO負け

 

⑱10回戦 ウスマン・ソムキャット(東洋5位)※「東洋」とは、現在の「東洋太平洋

○1ラウンドKO勝ち

ムエタイから転向したソムキャットに1ラウンド1分6秒で圧勝。

国王判定:○1ラウンドKO勝ち

 

⑲10回戦 金敏腕(韓国チャンピオン)

○4ラウンドKO勝ち

4ラウンド1分36秒でKO。

国王判定:○4ラウンドKO勝ち

 

⑳?回戦 エディ・ベイセラ(ジュニア・フェザー級

○6ラウンドTKO勝ち

1階級上の相手にも怯まず、6ラウンド2分40秒で相手セコンドがタオルを投げ入れる。

国王判定:○6ラウンドTKO勝ち

 

㉑10回戦 ターニー・アロンゾ(東洋3位)

○2ラウンドKO勝ち

2ラウンド2分54秒、このラウンドで3回のダウンを奪ってKO。

国王判定:○2ラウンドKO勝ち

 

㉒?回戦 不明

○?ラウンドTKO勝ち

対戦相手も、何ラウンドかも不明だが、相手セコンドがタオルを投げ入れた。

国王判定:○?ラウンドTKO勝ち

 

㉓東洋タイトルマッチ12回戦 金竜飛(東洋チャンピオン)

○6ラウンドKO勝ち(東洋タイトル奪取)

朝鮮戦争で本当の地獄を見て育った冷酷なチャンピオン、金竜飛

そんな生き地獄を体験した金に対し、ジョーはコンプレックスを拭えなかった。

成長期のジョーは減量苦に喘ぎ、試合当日の計量にもパスせず(現在は試合前日に計量が行われるが、当時は試合当日の計量だった)、ジョーはサウナに行ったり下剤を飲んだりして、かろうじて計量をパスした。

そんなジョーを金は、本物の地獄を見た者にとって減量苦など屁でもない、と蔑んだのである。

なぜなら金は、幼少の頃に空腹に耐えかねて兵隊を殺して食料を奪うが、その兵隊こそが金の父親だったからだ。

それ以来、金の胃は食物を受け付けなくなり「空腹」という感情を持たずに育っていく。

試合は2ラウンドで金がラッシュして、2度のダウンを奪う。

さらに金は攻めてジョーは棒立ち、何とかゴングに救われた。

しかし、国王レフェリーなら棒立ちになった時点でジョーのTKO負けを宣告するだろう。

2度目のダウンの時でも良かったが、1ラウンドに2度もダウンを食らってその後に棒立ちでは、試合を止めて当然だ。

しかもジョーは、過酷な減量により衰弱しきっている。

だが、例によって原作では試合続行、6ラウンドでジョーがKO勝ちした。

ジョーの勝因には、力石の存在があった。

金はたしかに本物の地獄を体験したが、それは自分の意思とは関係ない運命によるものだ。

だが力石は、ジョーと対戦するために自ら地獄の道を選び、金のように「食えなかった」のではなく、自分の意思で「食わなかった」のである。

さらに、それ以上に辛い「(水を)飲まなかった」のだった。

そんな同志を持つジョーにとって、自らの不幸を自慢する金に負けることは許されなかったのだ。

ちなみに、ジョーにとって東洋バンタム級タイトルは、生涯で巻いた唯一のチャンピオンベルトである。

国王判定:●2ラウンドTKO負け

 

㉔東洋タイトルマッチ12回戦 ピナン・スワラク(東洋3位)

○2ラウンドTKO勝ち(東洋タイトル防衛)

2ラウンドにダウンを奪われるも、ダウンを奪い返し、さらに猛攻により相手セコンドがタオルを投げ入れたためにTKO勝ち。

国王判定:○2ラウンドTKO勝ち

 

㉕東洋タイトルマッチ12回戦 ハリマオ

○4ラウンドKO勝ち(東洋タイトル防衛)

白木ジムの白木葉子が、ジョーに野性味を取り戻させるためにマッチメイクしたハリマオとの対戦。

ハリマオはマレーシアの野生児、というより、文明社会を全く知らない類人猿と言ってもよい。

その戦法はボクシングとはかけ離れていて、ロープワークを使った空中殺法は、むしろルチャ・リブレ(メキシコのプロレスのこと)のようなものだった。

2ラウンドでハリマオが、空中前転しながらパンチを見舞うという人間業とは思えぬ攻撃でジョーからダウンを奪い、さらに3ラウンドでも同じ戦法でダウンを奪った。

この時点で、国王レフェリーならジョーのTKO負けと判定しただろう。

もちろん原作では試合続行し、ジョーがハリマオの動きを逆手に取ったパンチでダウンを奪うと形勢が逆転、野生に戻ったハリマオがバッティング、キック、噛み付きなどの反則でジョーを攻めたてるものの、技量で上回るジョーがKO勝ちした。

しかし、実際にはその前にレフェリーがジョーの反則勝ちを宣したもののジョーが納得せず、無理やりKO勝ちに持っていってしまった。

だが、ルールに則ればレフェリーがジョーの反則勝ちを宣した時点で、試合終了するべきではなかったか?

それでも、実際にレフェリーはジョーのKO勝ちを宣告している。

国王判定:●3ラウンドTKO負け

 

㉖世界タイトルマッチ15回戦 ホセ・メンドーサ(世界チャンピオン)

○15ラウンド判定負け(世界タイトル奪取ならず)

完全無欠の王者、ホセ・メンドーサ

ジョーのライバルだった「無冠の帝王」カーロス・リベラを1ラウンド1分33秒でKOしたばかりか、カーロスをパンチ・ドランカーの廃人同様にしてしまった。

一方、世界4位まで登り詰めていたジョーもパンチ・ドランカーの症状に悩まされていて、圧倒的不利の状況だった。

試合は1ラウンドでジョーがラッシュをかけたものの、2ラウンドでは形勢逆転、ホセが一方的に攻める場面に。

テレビ解説者の採点では2ラウンドは5-3でホセがリード、本当なら5-2にしたいぐらいだと言っていた。

ダウンもしていないのに3ポイント差は、常識では考えられない採点である。

そして3ラウンドではジョーがダウンを見舞われ、何とか立ち上がったものの、やはり人間サンドバックの棒立ち状態となった。

当然、国王レフェリーならこの時点で試合を止めている。

だが原作では、試合が続くにつれて、いくら倒されても何度も立ってくるジョーにホセは恐れおののき、真の恐怖を味わうことになる。

最終的にはホセが判定で勝ったものの、ダウン総数は15ラウンドでなんと6回(ジョーのダウン回数は7回)。

6回もダウンして、判定勝ちしたボクサーは皆無ではないか?

試合終了後、精根尽き果てたホセは白髪になってしまった。

そして敗れたジョーは、真っ白な灰になって燃え尽きた……。

国王判定:●3ラウンドTKO負け

 

よって、矢吹丈の戦績は26戦17勝(15〈17?〉KO)9敗(8KO)ということになった。

やはり、当時の原作と比べると、負け数が多くなっているのがわかる。

しかも、TKO負けがやたらと多い。

これはジョーのファイティング・スタイルが原因で、早い回にノーガード戦法などを採ったりするからアッサリ倒されてしまい、現代のボクシングに照らし合わせたらTKOとなってしまう。

ジョーは「倒されても倒されても立ち上がる」スタイルだが、現在では「倒された時点でTKOになる確率が高い」ので、ジョーにとっては不利な時代と言えるだろう。

 

もはや現在のボクシング界に「矢吹丈」が出現するのは不可能だろうか。