先日、CS放送のTBSチャンネル2で、かつてのドラマ「スクール☆ウォーズ」およびその続編の「スクールウォーズ2」が一挙再放送された。
この「スクールウォーズ」シリーズは1980~90年代にかけて放送された高校ラグビードラマである。
特に第一シリーズは、ラグビー元日本代表の平尾誠二や大八木淳史が通学していた伏見工業をモデルとしていて、大人気を博した。
まあ、制作が大映テレビということで、ツッコみどころ満載だったのだが……。
なにしろ、第一シリーズで死んだはずの梅宮辰夫が第二シリーズでは生き返って、全くの別人としていけしゃあしゃあと再登場したのだから。
その他にも、和田アキ子、名古屋章や、ライバル校だった相模一高の監督ですら、全然別人として登場している。
今回の一挙放送では、第一シリーズと第二シリーズが連続で放映されたため、同じ俳優が全く違う役柄で出演していることに、戸惑った視聴者も多いのではないだろうか。
しかし、今回の趣旨は大映テレビでありがちな矛盾点をあげつらうことではない。
このドラマもそうだが、昔のラグビーをビデオで見ていると、現在では使われなくなったラグビー用語が実に多い。
ラグビーでは毎年のようにルールが変わるので、僕も付いて行けない。
たとえば「スクールウォーズ」時代、即ち1990年代の最初までは、トライの点数は4点だった(現在は5点)。
そんな大きい変更ならわかるが、細かいルール変更の繰り返しで現在のルールが把握できない人も多いのではないか。
かく言う僕も、野球のルールについては人後に落ちないつもりだが、ラグビーのルールについてはよくわからない。
本当は、ラグビーよりも野球のルールの方が遥かに難しいのだが。
ただし、野球ではルール変更がほとんどなく、ラグビーでは頻繁に行われる。
ルールが変われば戦術も変わる。
ルールや戦術が変われば、用語も変わる。
さらにラグビーでは、反則の名称が各国で統一されていないため、日本でも反則名がコロコロ変わったりする。
そこで今回は、死語となったラグビー用語を列挙したい。
●ピックアップ
スクラムやラックの中で、手でボールを掻いて出すとハンド、手でボールを拾い上げるとピックアップ、という反則になるらしい。
要するに、スクラムやラックの中で手を使うと反則であり、ハンドもピックアップも同じ反則なのでは?と思ってしまう。
実際にはスクラムの中で手を使う奴はいないので、主にラックでの反則となるが、最近ではピックアップという反則は聞かれず、ほとんどがハンドである。
レフェリーが書いた昔のルール書では、ピックアップとハンドでは違うらしいが、その違いがよくわからない。
●10mサークル・オフサイド
キックの際に発生するオフサイドで、もう既にないルール。
以前はサークル(円)という概念があったが、それはもうなくなって現在では10mオフサイドという反則になっている。
●スティッファーム・タックル
首に入るタックルで、プロレスでいうラリアット。
現在では首から上へのタックルはハイ・タックルと呼ばれているが、スティッファーム・タックルという反則名は残っているのだろうか?
いずれにしても危険なタックルとして、現在では重大な反則(場合によってはシンビン=10分間の一時的退場)とされている。
●ライイング・ニア・ザ・ボール
現在でいうとノット・ロール・アウェイだろうか、それともまだ残っているのだろうか。
タックルされたプレーヤーはボールを放なければならないし(放さなければノット・リリース・ザ・ボールという反則)、タックルした選手(タックラー)はタックルされたプレーヤーを放さなければならない(放さなければホールディングという反則)。
そしてタックラーもタックルされたプレーヤーも、立ち上がらなければ反則となる。
●ニーリング
スクラムで故意に膝をつくプレーのこと。
最近では、スクラムを故意に崩すコラプシングと一緒にされているのか、あまり聞かない反則名である。
●リフティング
ラインアウトで、味方を持ち上げる反則。
かつてはラインアウトで 味方を支えるだけでリフティングの反則を取られたが、現在では味方が跳び上がる前ならサポーティングとして認められている。
そのせいか、リフティングという反則はあまり見られなくなったが、現在でも反則としてちゃんと残っている。
●タックル・オフサイド
この反則は2000年に生まれた用語で、馴染みのない方も多いかも知れない。
タックルが成立した際に、他のプレーヤーが前や横から入る反則だが、タックルが成立した時点ではオフサイド・ラインは発生しないため、「オフサイド」という文言はふさわしくないのでは?という意見が出て、タックル・オフサイドという名称は僅か数年で廃止された。
現在ではオフ・ザ・ゲートと改称されている。
●25ヤード・ライン
現在の22mラインのことで、かつてラグビーではヤードポンド法を使用していた。
後にメートル法が採用され、ゴールラインから25ヤード(約22.9m)の所にあったラインを廃止し、それに近い22mの所にラインを引いた。
22mという中途半端な数字になったのは、そういう事情からである。
なお10mラインは元々10ヤード・ラインだったが、こちらは10ヤード(約9m)も10mもさほど変わらなかったからか、「10」というキリのいい数字がそのまま適用された。
●国内特別ルール
1980年代後半に適用されていた、日本国内でしか通用しないルール。
キックやスクラムに頼りがちだった国内の試合を是正するための措置である。
たとえば、通常ルールならフェアキャッチした際にはフリーキックが与えられるだけだが、国内特別ルールではフリーキックの他にキックした地点でのスクラムが選択できる、というもの。
他にも色々あったが、現在では日本でも国際ルールが適用されている。
●インジャリー・タイム
「インジャリー」とは怪我という意味で、サッカーではアディショナル・タイムと呼ばれているが、要するにロスタイムのこと。
ロスタイムは和製英語のため、一時期はインジャリー・タイムという言葉が多く用いられたが、時計が止まる原因は怪我とは限らないせいか、最近ではあまり言われなくなった。
さらに現在では、国際試合や日本のトップリーグでタイム・キーパー制が導入されたため、ロスタイムという概念がなくなりつつある。
●IN,OUT
選手の入れ替えの際、かつて日本では「IN,OUT」と表示されていたが、最近では海外に倣って「ON,OFF」が一般的になった。
サッカーでは現在でも「IN,OUT」表記のようである。
●コンバート
他のポジションに挑戦することではなく、コンバージョン・ゴールのこと。
かつては単に「ゴール」というと、トライとコンバージョン・ゴールを含めたことを意味していた時代もあった。
●セブンエイス
FW(フォワード)7人制のことで、背番号8番の選手がSE(セブンエイス=seven eighth)と呼ばれていた。
即ち№8(ナンバーエイト)を置かず、SEはTB(スリークォーター・バックス)ラインとFB(フルバック)の間に位置していた。
現在ではスクラムは8人で組まなければならないため、セブンエイス・システムはなくなった。
●左センター、右センター
かつてCTB(センター)は左CTB(12番)と右CTB(13番)に分けられていたが、現在ではインサイドCTB(12番)とアウトサイドCTB(13番)で分けているチームがほとんどだ。
ただし、場内アナウンスのポジション分けでは現在でも「左センター、右センター」と呼んでいる。
同じことがFL(フランカー)でも言え、現在では左右ではなくブラインドサイドFL(6番)とオープンサイドFL(7番)で分けているチームが多い。
●フルバックのライン参加
かつてオープン攻撃と言えば、両CTBと両WTB(ウィング)という、いわゆるTBラインの4人で行っていたが、そこに最後尾のFB(フルバック)がラインに入って人数を余らせる作戦。
しかし現在ではディフェンスが発達したため、それだけでは突破はなかなか図れず、今ではFBどころかFWまでもがライン参加する時代である。
●魔法の水
昔は試合中に選手が倒れると、ただちにマネージャーがヤカンを持って駆け付けて、倒れた選手にヤカンの水をぶっかけていた。
現在の若いファンは「なんて野蛮な治療法なんだ!」と憤慨するだろうが、水をぶっかけられた選手はアラ不思議、一瞬のうちに飛び起きて、何事もなかったように戦列に復帰するのである。
よほどの重傷でない限り、この処置で選手が復活してしまうため、魔法の水と呼ばれていた。
もちろんヤカンの中身は特別な水ではなく、普通の水道水である。
それにしても当時は、魔法の水以外の治療法はなかったのだろうか。
●けなす
悪口を言うことではなく、ボールをタッチに蹴り出すこと。
おそらく「蹴り出す」が「蹴出す」になって、「けなす」と訛ったものと思われるが、昔のアナウンサーは普通に「タッチにけなしました」などと言っていた。
●回転トライ
これは死語というより死プレイ。
かつて、トライした選手はボールをグラウンディングしたあと、前転して起き上がるという無駄なことをしていた。
むしろそのプレーが当たり前だったため、当時は「回転トライ」とは敢えて言わず、かえって今の方が使う言葉かも知れない。
現在、たまにトライを挙げた後に一回転する選手がいると「回転トライを久しぶりに見ました」などと言うアナウンサーもいる。
↓ドラマ「われら青春!」のオープニングでの、無意味な回転トライの練習(0分45秒頃)
http://www.dailymotion.com/video/x2nakl_yyyyy_music
とまあ、色々挙げてみたが、まだまだ死語がありそうである。