11月27日に行われた大阪府知事、大阪市長W選挙は、知事が松井一郎氏、市長が橋下徹氏という、いずれも維新の会のメンバーが当選した。
維新の会が掲げる「大阪都構想」が現実味を帯びてきたわけだ。
正直言って大阪都構想なるものが本当に府民のためになるものかわからないが、実現させるならじっくりと話し合い、検討して、府民に充分な説明を行って是か非かの結論を出してもらいたいものだ。
とはいえせっかくなので、大阪都になった場合に生まれる区とその名称を考えてみた。
構想では政令指定都市である大阪市と堺市を解体し、例えば大阪市なら8〜9個ぐらいに分け、30万人規模の区にするらしい。
現在の大阪市には24の区があり、東京都の23区よりも多い。
大阪市の面積は222km2と政令指定都市にしては極めて狭く、東京23区部の1/3程度なのだから、小さな区がひしめき合っているわけだ。
堺市はさらに狭く150km2で、大阪市と堺市を合わせても横浜市よりも狭い。
そこで人口267万人・24区の大阪市を8区、同じく84万人・7区の堺市を3区に分けてみる。
大阪市と堺市の位置関係は以下の通り。
以下が新しい区の新名称だ。
( )内には現在の区名と、合併した際の人口を記している。
白地図には該当する区をグレーで塗りつぶした。
(1)千林区(大阪市東淀川区、旭区、鶴見区。37.9万人)
大阪市の北東部に位置する、鶴見区と旭区、そして淀川を超えて東淀川区にまたがる。
のっけから恐縮だが、この区の名称が一番悩んだ。
花博が行われた鶴見区、東淀川区には鉄道の要所である淡路駅があるが、花博区というのもおかしいし、淡路区にすると「淡路島に大阪の飛び地があるのか!?」などと誤解されかねない。
そこで旭区にある千林商店街に目を付けた。
千林商店街と言えば安売りで有名で、いかにも大阪らしい商店街と言える。
ダイエー発祥の地も千林商店街だ。
商売の街・大阪をアピールするためにも千林区という区名にした。
難点は、千林の範囲があまりにも狭すぎることであるが。
(2)淀川区(大阪市淀川区、西淀川区。27.0万人)
淀川の北側、淀川区と西淀川区を合わせた区。
平凡だが、これはもう淀川区としか呼びようがない。
元の2つの区名に「淀川」が入っているのだから。
特徴のない区のように思えるが、現在の淀川区にはなんと言っても大阪の玄関口、新大阪駅がある。
夢の超特急・新幹線の駅があるのだからそれだけで自慢になるが、だからと言って「新大阪区」にするわけにはいかない。
新幹線だけでなく地下鉄御堂筋線も走り、道路では新御堂筋も通っているのだから、交通の要所でもある。
なお、西淀川区部分には多くの工場が建ち並んでいる。
(3)城東区(大阪市城東区、東成区、生野区。38.4万人)
大阪市の東部、城東区、東成区、生野区を合わせた区。
城東の「城」とはもちろん、大阪城のことである。
3つの区の中から既存の区名を選んだが、自治体の合併の際に必ず揉めるのが「ウチの地名を残せ!」ということである。
そのため新名称にはいつも気を遣うものだが、城東なら由緒ある大阪城の東を意味するので、さほど揉めることもないのではないか。
城東という地名は全国にあって、個性がないのが玉にキズだが。
今回、僕が考えた区の中で最も人口が多く、大部分が閑静な住宅街となっている。
生野区には「駅のホームに立っただけで焼肉の匂いがする」鶴橋駅の一部もかかっていて、コリアタウンで有名だ。
(4)梅田区(大阪市都島区、北区、福島区。28.5万人)
大阪市のやや北部、都島区、北区、福島区を合わせた区。
北区にはなんと言っても西日本最大のターミナル、JRの大阪駅がある。
ここにはJR以外にも阪急、阪神、地下鉄(3線)が通っているが、いずれも「大阪駅」とは名乗らず「梅田駅」になっているというのが、いかにも大阪らしいところ。
大阪人が大阪駅周辺で呑みに行くときでも「大阪(駅)へ呑みに行こか」とは言わず「梅田へ呑みに行こか」と言う。
これほど梅田という地名が定着しているのだから、区名にしてもバチは当たるまい。
梅田一帯を「キタ」と呼び、大阪を代表する繁華街となっている。
なお、梅田の南側には東京・銀座と並ぶ高級歓楽街である北新地がある。
(5)難波区(大阪市中央区、西区、浪速区、西成区。35.0万人)
大阪市のほぼ真ん中、中央区、西区、浪速区、西成区で構成された区。
梅田がキタなら難波は「ミナミ」。
難波や心斎橋を中心とする通称ミナミは、梅田のキタと並ぶ大阪の二大繁華街だ。
すました感じのキタに対して、庶民的な街のミナミ。
梅田区に対抗するには、やはり難波区と名乗るべきだろう。
中央区と浪速区にまたがる難波にはJR、南海、近鉄、阪神、地下鉄(3線)が集中し、鉄道の要所である。
大阪の大動脈である地下鉄御堂筋線、特に梅田〜難波間はいつも大混雑だ。
難波と心斎橋の間には阪神ファンが飛び込む道頓堀川が流れており、グリコやかに道楽の看板があって、キタよりも大阪らしいということで観光客にも大人気である。
また、中央区の北部はビジネス街であり、ミナミとは全く違う貌になっていて、その東側には大阪城がある。
さらに浪速区には通天閣がそびえ立ち、西区には京セラドーム大阪があって、もし難波区が実現すれば浪華情緒てんこ盛りの区となるだろう。
(6)港区(大阪市此花区、港区、大正区、住之江区。34.5万人)
大阪市の西部、海に面した此花区、港区、大正区、住之江区による区。
これもまた、港区としか呼びようがない。
区の大部分が港になっているのだから。
この新しい区の海に面した部分は大阪港となっており、南部の住之江区に当たる部分は特に大阪南港と呼ぶ。
上田正樹の名曲「悲しい色やね」の舞台になったところだが、大阪港は日本有数の国際貿易港で、神戸港と共に関西の海上交通と貿易を担っている。
ちょっとお堅い感じもするが、此花区にはユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)があり、レジャーも充分楽しめる区だ。
(7)天王寺区(大阪市天王寺区、阿倍野区、住吉区。33.3万人)
大阪市南部の天王寺区、阿倍野区、住吉区にまたがる区。
由緒正しい区名が3つも並んで、新しい区名で揉めることは容易に想像できる。
四天王寺が由来の天王寺区、近鉄百貨店などがあり繁華街を形成する阿倍野区、「住吉さん」で知られる住吉大社がある住吉区。
いずれかに決めるのには断腸の思いだが、知名度からいって天王寺区にする以外ないだろう。
現在の天王寺区にはJRの天王寺駅があり、大阪の南の玄関口となっている。
国道25号線を隔てた南側に近鉄南大阪線のターミナル駅があるが、天王寺駅と乗り換え可能にもかかわらず「大阪阿部野橋駅」と名乗っている。
実は国道25号線を境に、現在の天王寺区と阿倍野区が分かれているのだ(ただし、阿倍野区と大阪阿部野橋駅とでは「べ」の漢字が違う)。
天王寺駅と大阪阿部野橋駅界隈は、デパートはもちろん商業施設が立ち並び、キタとミナミに次ぐ大阪第三の繁華街だ。
特に最近では、大阪初進出の「渋谷109」が入った「あべのキューズタウン」がオープンし、大いに話題を読んだ。
天王寺区の北側には前述のように四天王寺があり、住吉区には住吉大社があるという、歴史情緒も楽しめる。
さらに阿倍野区から住吉区にかけて大阪唯一の路面電車である阪堺電気軌道が走っており、大阪らしい貌を覗き見ることができるので、ぜひ乗ってみたい。
(8)長居区(大阪市東住吉区、平野区。32.9万人)
大阪市南東部の東住吉区と平野区を合わせた区。
片方は「東住吉区」なんて個性のない名前だから「平野区」でもいいかと思ったが、東住吉区には長居公園がある。
長居公園は広大な敷地面積を誇る、大阪市を代表する公園だが、その中にはサッカーワールドカップの会場となった長居スタジアムがある。
いわば「長居」の名前が世界中に響き渡ったのだから、これを区名にしない手はないだろうと考え「長居区」とした。
平野区は大阪市の区の中で最も人口が多く、閑静な住宅街になっている。
(9)堺区(堺市堺区、西区。28.2万人)
大阪市の南端を流れる大和川を超えると、そこは堺市となる。
その大阪市と接した堺区と、その南側にある西区を合わせたのが新しい堺区だ。
いずれも海に面しており、大阪を代表する工業地域である「堺泉北臨海工業地域」があり、その工場群の風景は圧巻である。
また現在の堺区は南海本線の堺駅、南海高野線の堺東駅、JR阪和線の堺市駅という3つの中心駅を抱えており、堺市を代表する商業地域だ。
堺は中世の頃は世界に冠たる自由都市であり、現在でも異国情緒を味わえるザビエル公園がある。
さらに現在の堺区には世界最大の陵墓である仁徳天皇陵があり、歴史散策にも持って来いだ。
自由都市の頃から堺商人を多く抱え、全国の○○商人というのはほとんどが元は堺商人である。
また昔から鍛冶屋が多く、刀、包丁、鉄砲などの鉄製品加工が盛んで、それが現在でも受け継がれて自転車生産の本場でもある。
そのため世界的な自転車レースである「ツアー・オブ・ジャパン」も堺市で行われている。
商業と工業の中心であり、古くからの国際都市でもあり、歴史的な価値も充分過ぎるほどの堺、いくら堺市を解体しても「堺」の名を消せばバチが当たるだろう、と考え、新しい区名も「堺区」とした。
(10)百舌鳥区(堺市北区、東区、美原区。28.2万人)
堺市の北東部に位置する北区、東区、美原区で構成される区。
「百舌鳥(もず)区」の名前の由来は、北区にある日本有数の古墳群「百舌鳥古墳群」から来ている。
仁徳天皇陵も百舌鳥古墳群のひとつであり、同じ大阪府内にある古市古墳群(藤井寺市および羽曳野市)と共に世界遺産登録を目指しているので、知名度アップのためにも区名にすればよいと考えた。
もし百舌鳥区が実現すると、日本で唯一の「漢字三文字、かな二文字」の自治体となる。
北区の北端は大和川を隔てて大阪市に接しており、地下鉄御堂筋線の北花田駅近くには阪急百貨店とイオンが入った大型商業施設「ダイヤモンドシティ・プラウ」がある。
同じく北区には中百舌鳥駅があり、南海高野線、泉北高速鉄道、地下鉄御堂筋線(終点)が入る鉄道の要所だ。
また道路でも大阪中央環状線と、天王寺に続くときはま線(大阪市内であびこ筋になる)が交差しており、自動車交通でも重要な区となる。
見どころとしては北区に、堺市民の憩いの場である大泉緑地公園がある。
東区と美原区は閑静な住宅街で、大部分が和泉国となっている堺市の他の地域とは異なり、かつては河内国だった。
なお、美原区は最近まで南河内郡美原町だったのが、平成の大合併で堺市に吸収され、堺市が政令指定都市に昇格した際に美原区となった。
(11)泉北区(堺市中区、南区。27.8万人)
堺市南部に位置する中区と南区を合わせた区。
「泉北区」の名前の由来は、大阪府北部にある千里ニュータウンと並ぶ大計画都市「泉北ニュータウン」にちなんでいる。
泉北ニュータウンは南区にあるが、その団地群は壮観だ。
泉北ニュータウンの中心駅は泉ヶ丘駅で、高島屋などの百貨店があって商業の中心地である。
中区と南区には南海高野線と直通運転をしている泉北高速鉄道が走っており、難波まですぐ行くことができるのでベッドタウンとして発達した。
しかし、同じ南区でも泉北ニュータウンからさらに南へ行くと、平地部分には田畑が広がり、政令指定都市とはとても思えない片田舎風景も味わえる。
と、大阪都になった場合の区分けを考えてみたが、いかがだろうか。
全11区、人口351万人、総面積372km2の都市となる。
もちろん、もっといい区分けがあるかも知れないので、思い付いた時にはまた修正を加えたい。