先日の日記でも書いたとおり、4月29日に今季初の公式記録員を務めたが、それに先だち去年の経験を活かして新兵器を用意していた。
その新兵器を紹介する前に、去年用意した新兵器(今年から見れば旧兵器)お見せしよう。
去年はスコアシートを共同通信社にファックスで送っていたため、字が薄いと読みにくい。
そのため鉛筆(シャーペン)の使用は禁止されていて、ボールペンでスコアを付けていた。
ボールペンだと書き間違えしたときは、修正液を使用しなければならない。
修正液は乾くのに時間がかかり、しかも細かいところを消すのには骨が折れる。
そこで用意したのがパイロット社のフリクション・ボールだ。
このボールペンは、書いたところをペンに付いているラバーで擦るとアラ不思議、見事に消えてしまうのである。
摩擦熱で消えてしまう特殊インクを使っているらしいが、フリクション・ボールのおかげで修正液を使わずに済んだ。
黒は普通のプレーで使用し、赤は安打、青は四死球、緑は三振の時に使用した。
去年は試合が終わってからスコアシートを共同通信社にファックスしていたが、今年からは半イニングごとに共同通信社に送る形になった。
我々公式記録員や球団スタッフにとっては大きな負担になったが、送信方法はファックスではなく、スコアシートをスキャンしてメールで送るという方法が採られた。
そのため、黒字に関してはボールペンでなくても鉛筆(シャーペン)でも許可された。
いかにフリクション・ボールが優れ物でも、シャーペンの字を消しゴムで消す方が遥かに楽だ。
フリクション・ボールの字を消すには強い力が必要だが、消しゴムなら簡単に消せる。
そこで、今年用意した新兵器が「字消し板」である。
「字消し板」なんて単語、知らない人がほとんどかも知れない。
「字消し板」とは製図の時に使われる道具で、消しゴムで消したいところだけ消すことができる、ステンレス製の薄い板のことだ。
字消し板には様々な形の穴が開いていて、消したいところだけ穴を覗かせることができる。
僕が製図していた頃も、よく字消し板を使用していた。
しかし、最近ではCAD(パソコンによる製図ソフト)設計が主流になり、プロッタ(CADで製図した図面を、シャーペンなどを使ってプリントアウトする機械)に代わって一般のプリンタが使用されるようになると、字消し板の存在価値は少なくなってしまった。
字消し板は普通の文房具屋には売っていなくて、企業向けの事務用品取扱店に行かなければ置いていない。
そこで、以前によく利用していた事務用品店に行って、
「字消し板はありますか?」
と尋ねたところ、
「字消し板?久しぶりに聞く名前やね」
と店のオバちゃんに言われてしまった。
幸い在庫が残っていたので買うことができたが、やはり需要はかなり減っているようである。
ドラフターでトレーシング・ペーパーに図面を引いていた頃は、字消し板は必需品だったが、時代と共に姿を消しつつあるようだ。
もう一つの新兵器は、懐中電灯。
ナイトゲームの際には、放送室は電灯を点けてはならない。
投手が眩しくて影響を受けるからだ。
そのため、放送室は暗いので、スコアシートが非常に見にくい。
僕は目が悪くて夜目が効かないので、去年はスコアシートが見にくくて大変苦労した。
そこで、今年は懐中電灯を用意した。
と言っても、大きい懐中電灯は不要なので、ペンライトのように小さい物を探した。
そこで見つけたのが、LED使用の懐中電灯。
前述したフリクション・ボールとの対比で大きさがわかるだろう。
小さいがLED使用で、非常に明るい。
しかも0.5Wと、消費電力は少ない。
ナイトゲームの時には大いに威力を発揮するだろう。
ただ、明るすぎるので、目に直接光を当てると悪影響があり、この点は気を付けたい。
ともあれ、これらの「三種の神器」があれば、公式記録員にとっては鬼に金棒だ。